HOME |月内にも政府のエネルギー・環境会議が結論提示へ。「原発比率15%」有力に(FGW) |

月内にも政府のエネルギー・環境会議が結論提示へ。「原発比率15%」有力に(FGW)

2012-06-19 22:32:43

GHGpolicychoice
東京電力福島第一原子力発電所事故を受けて、国のエネルギー・環境政策を抜本的に見直す作業を進めている政府(国家戦略室)のエネルギー・環境会議(通称、エネカン)は、今月末にも、新しいエネルギー基本計画が目指す2030年に向けた「原発比率」と、地球温暖化対策の温室効果削減目標を選択する。注目の原発比率(発電比率)は15%が有力だ。

エネルギー・環境会議は、これまで傘下の中央環境審議会地球環境部会、総合資源エネルギー調査会基本問題委員会とで、それぞれエネルギー比率、温暖化ガス削減比率の政策選択肢を検討してきた。両審議会の検討の結果、2030年の原発比率は、ゼロ%、15%、20~25%の三案(別途、数値を明示せず需要家の市場での選択に任せる案もある)が、またそれらを受けた温暖化ガス削減対策を組み込んだ削減比率は6案が、それぞれを選ばれている。

国家戦略室担当相以下の閣僚で構成するエネルギー・環境会議は、こうした選択肢の中から、政治的・政策的に望ましい案を選んで「革新的エネルギー・環境会議」案として今後、2030年に向けた政策の基本枠組みとする予定。

 提示された選択肢の中から、「原発比率15%」が有力なのは、今後、原発の新増設を一切せず、さらに40年廃炉のルールを確実に実施すると、2030年の日本での原発の発電能力は総電力比15%になる見通しのためだ。いわば「福島後」の我が国のBusiness As Usual(BAU)が15%なのだ。現在の野田政権は大飯原発の再稼働に踏み切るなどの姿勢から、明らかに「脱原発」ではないため、ゼロ%の選択はあり得ない。

 では「20-25%」の選択をするかというと難しい。原発一基の再稼働でさえ大議論を引き起こし、政治的対応に苦慮し続けている現政権の「能力」からすると、とても新増設路線は無理。産業界を支援したいところだが、多くの国民の不信を買ってまで「原発重視」の旗を掲げる度胸もなさそうだ。このため15%がギリギリの選択といえる。

 仮に原発比率が15%となった場合、温暖化対策による温室効果ガス削減比率の選択も容易ではない。審議会の選択肢では、2030年25%(中位の政策:90年比)と、同31%(高位政策:同)の二案が示されている。ただ、ポスト京都の国際協定では2020年の比率が焦点だ。そこで図表から、2020年のそれぞれの削減比率の試算をみると11%、15%となる。高位の政策のほうが削減率が高く、鳩山元首相が国際公約とした「25%」に近い。

ただし、高位の政策というのは、経済的合理性を超えるような費用負担も辞さないという思い切った対策を意味する。現在の野田政権の政治力からして、産業界、家計に大きな負担を強いる力はまずない。となると、2030年25%削減(2020年11%削減)の案が有力になってくる。それでも、ポスト京都の国際交渉を想定すると、この案では国際的に通用しない。ポスト京都の交渉は2014年がヤマ場となりそうだが、その時には野田政権ではない、との判断があるのかもしれない。

いずれにしても「原発比率15%」「温暖化ガス削減比率25%」(いずれも2030年時点)の目標は、当初の“革新的”というキャッチフレーズからほど遠いことだけは確かだ。(FGW)