HOME |ドイツ高等行政裁判所、昨年稼働した超々臨界圧石炭火力発電所の差し止め訴訟で「違法な開発計画に基づく建設」と認定。州政府の開発許可の誤りを指摘。稼働停止が焦点に(RIEF) |

ドイツ高等行政裁判所、昨年稼働した超々臨界圧石炭火力発電所の差し止め訴訟で「違法な開発計画に基づく建設」と認定。州政府の開発許可の誤りを指摘。稼働停止が焦点に(RIEF)

2021-08-30 22:54:14

 

  ドイツで昨年、新規稼働した石炭火力発電所の建設の不当性を、地域の自治体や住民、環境NGOらが訴えていた裁判で、ドイツ行政裁判所は原告の訴えを認め、同発電所を「違法な開発計画に基づく建設」と認定した。ドイツは温室効果ガス(GHG)排出削減目標を強化しており、新規石炭火力発電の稼働はこうした方針に反するうえ、都市部での建設で住民の健康への影響等をあげた。日本も2030年にCO2排出量46%削減を掲げる一方で、横須賀、神戸等では新規の石炭火力建設問題が起きており、政策の整合性が問われている。

 

 焦点となっていたのは、ノルトライン=ヴェストファーレン州ダッテルンに建設されたUniper運営のダッテルン(Datteln)4号機。同発電所は超々臨界圧火力発電所で、2009年に州政府によって建設計画が承認された。だが、地元住民らから火力発電所の追加稼働による住民への健康被害を懸念する訴えが提起されていた。訴訟は2017年に一旦停止され、2020年に発電所が実際に稼働に至る展開となっていた。

 

 ダッテルン4号機が稼働した際、スウェーデンの環境活動家のグレタ・ツゥンベリーさんは「今日は、欧州にとって恥ずべき日だ。われわれ(欧州)は、気候災害を避けるための道をリードするシグナルを示してきた。だが、我々が世界に送るそのシグナルが、これなのか?」とツィッターで強く批判した。

 

 こうした経緯の中で、独高等行政裁判所は26日、ダッテルン4号機の開発計画に基づく立地選択は、法的要求事項に適合していないと指摘、開発計画自体の違法性を認めた。ドイツは2038年に全石炭火力発電を廃止することを決めており、ダッテルン4号機の稼働期間も38年までとされていた。

 

Dateln4キャプチャ

 

 しかし、すでにドイツでは、2030年に温室効果ガス(GHG)排出削減目標を2030年までに65%削減に強化するとともに、ネットゼロ達成目標も2045年までに前倒しする方針を打ち出している。同目標を達成するには、国内の石炭火力の廃止時期は38年よりも30年までに前倒しする必要性が出ている。http://rief-jp.org/ct8/113888

 

 ダッテルン4号機はこうした「国策」と一致しないうえに、ノルトライン=ヴェストファーレン州はドイツの中で最も人口の多い州で、発電所の近くに子供病院があるほか、周辺都市、住民への発電所の健康影響が原告の懸念となっていた。4月末に連邦憲法裁判所は、ドイツの気候保護法には、2031年以降の温室効果ガス排出量削減のための措置が十分に盛り込まれていない、として憲法(基本法)違反との判断を示し、2022年末までに同法を改正を政府に命じている。http://rief-jp.org/ct8/113783?ctid=71

 

 今回の高等行政裁判所の判断はこうした政策環境の変化を踏まえたものといえる。訴訟にはダッテルン市に隣接するヴァルトロップ市当局も原告団に加わった。原告団の主張は住民・子どもたちへの健康被害の悪化への懸念が主に提起された。

 

 独環境団体BUND議長のOlaf Bandt氏は「州政府はダッテルン4号機の建設を再三擁護してきた。しかし、同発電所の稼働継続は、気候保護法の新たな目標とは全く整合しない。裁判所の判断は、間違った政治決定の修正だ」と評価している。

 

 ただ、判決を受けて、同発電所が稼働停止になるかどうかは現時点では不明だ。運用機関のUniperは、「判決を重視するが、我々の判断とは一致しない。また法的に最終決定したものではない。したがって上告の可能性を検討している」と述べ、判決をそのまま受け入れることに抵抗する姿勢を示している。

https://www.ovg.nrw.de/behoerde/presse/pressemitteilungen/51_210826/index.php