HOME13 原発 |EUのタクソノミー攻防。オーストリアのエネルギ―・気候相「原発をタクソノミーに参入する決定が為されると、司法の場で争う」と明言。脱原発派と原発推進派の対立先鋭化(RIEF) |

EUのタクソノミー攻防。オーストリアのエネルギ―・気候相「原発をタクソノミーに参入する決定が為されると、司法の場で争う」と明言。脱原発派と原発推進派の対立先鋭化(RIEF)

2021-11-19 00:31:03

Austriaキャプチャ

 

  EUのサステナブルファイナンスのタクソノミーに、原発を含めるかどうかを巡って加盟国間での攻防が激化する中で、脱原発の立場のオーストリアは、欧州委員会が原発参入を決めた場合、欧州司法裁判所へ提訴する準備をとっていることを明らかにした。EUタクソノミーの気候関連分野の最終決定は年末に予定されており、脱原発支持国と原発支持国に分かれて対立の先鋭化が増している。

 

 原発をタクソノミーに含める場合、司法の場で争うことを明言したのは、オーストリアのエネルギー・気候相のLeonore Gewessler氏(写真)。EUのメディアのインタビューに答えた。

 

 EUのサステナブルファイナンスのタクソノミーについては、フレームワークの法的規則(TR)はすでに成立している。同規則に基づいて個別の事業を分類するリストについて、欧州委員会が委任法(Deliegated Act : DA)として定める作業が年末の期限を迎えようとしている。

 

 原案を作成した同委のサステナブルファイナンス・プラットフォーム(PSF)は、最後まで論点となっている天然ガスと原発の扱いで、ガスは100g/kWh以下にとどめ、原発は当初から除外とのスタンスを示していた。

 

 これに対して、 欧州委の調整段階の案では、ガスは冬場の暖房に欠かせないコージェネレーション熱電併給(CHP)事業の場合は、270gCO2/kWhと、2020年のEU域内での平均化石燃料電源の炭素集約度226 gCO2/kWhよりも緩い内容に修正している。

 

 一方の原発については、原案では除外されているが、フランス等の原発推進国が「操業中のCO2を排出しないクリーンエネルギー」として、タクソノミーへの参入を強く働きかけている。これに対して、ドイツやオーストリア等は脱原発を国の政策として掲げており、原発をタクソノミーに盛り込む案は、到底、受け入れられない立場だ。

 

 しかし、原発推進派は、原発製造のフランスを筆頭に、原発利用国がフィンランド、ポーランド、チェコ等10カ国が推進連合を結成。ドイツ、オーストリア等の脱原発5カ国の2倍の勢力で圧力を強めている。欧州のメディア等で再三、報じられる「リーク案」では、原発参入が再三示されている。実際、加盟国の数の綱引きでは、原発推進グループが脱原発グループを上回っており、脱原発グループの方に危機感が強い。https://rief-jp.org/ct13/120024

 

 形勢不利な環境にある脱原発派を代表する形で、オーストリアのGewesslerエネルギー気候相は今回、「EUのタクソノミーに原発を含める法的根拠は全くない。もし、タクソノミーに原発を含めるとの決定をするようならば、われわれは司法の場で決着をつける準備をすでに進めている」と述べた。EU全体にかかわる課題を審議する欧州司法裁判所の判断を仰ぐ考えだ。

 

 同氏はさらに、「(原発をタクソノミーに含めると)EUタクソノミーの信用度自体がリスクにさらされる。タクソノミー規則(TR)が法的に定めるDo No Significant Harm(NDSH)原則と整合しなくなる」と指摘した。そのうえで「(われわれは)タクソノミーを、欧州グリーンディール(EGD)の野心と整合し、首尾一貫としたものにするとともに、金融市場での信頼を維持する大きな責任を負っている」と強調した。

 

 同氏が強調した「大きな責任」は、「原子力エネルギーが引き起こす甚大なダメージが、歴史的に明瞭である点への対応」だ。同氏は旧ソ連のチェルノブイリ発電所事故と日本の東京電力福島第一原発事故を例に挙げ、「原発そのものが危険なのだ」と潜在的な事故リスクの大きさを指摘した。それに加えて、使用済み核燃料の最終処分場の問題を提起した。「われわれは、最終処分場についてのグローバルなソリューションを依然、見出していない状態にあるのだ」

 

 さらに同氏は、原発は経済的にも発電コストは高く、EU全体の気候目標を達成する上での貢献度は極めて限定的であるとも指摘した。その事例として、原発大国のフランスが、次世代原発としてフラマンビルで開発を進めている欧州加圧水型炉(EPR)がコスト高に加えて技術的な課題を抱えている点を指摘した。同原発は2007年に建設を始めた。だが14年が経過していながら、いまだに工事は完了せず、現在の完了予定は2023年としている。同氏は、その間に建設費は5倍に上昇した、と指摘した。

 

 また同氏は、脱原発5カ国に加えて、スペインも同じ立場である点を明らかにした。欧州司法裁判所に提訴する場合、「ドイツとスペインからも支援が期待できる」と明かした。そのうえで「気候活動家は、だれも原発を支持していない」と指摘。脱原発は、環境・市民団体の広範な支持を得られていることも強調した。

https://www.euractiv.com/section/energy-environment/news/austria-ready-to-sue-eu-over-nuclears-inclusion-in-green-finance-taxonomy/