東京ガス、ロシアからの天然ガス調達の代替可能性に言及。同社CFOが「政策として扱いが示されれば協力する」と言明。欧米メジャーの転換、EUの「脱ロシア」戦略と連携できるか（RIEF）
2022-03-23 23:50:36
各紙の報道によると、東京ガスの最高財務責任者（CFO）の佐藤裕史氏は23日に開いた会見で、ロシアの天然ガス開発事業「サハリンⅡ」からの燃料調達の代替の可能性について、「国や関係機関と協議し、政策として扱いが示されれば協力していく」と述べた。ロシアのウクライナ侵攻で、欧州ではロシアからの天然ガス等の調達を他の地域に転換する議論が高まっており、実現可能性に向けた作業が続いている。日本でもロシアの動き次第では、正面からの対応が求められる可能性も出ている。
日本経済新聞が報じた。東ガスは都市ガスの供給源としてのLNGの約1割を、ロシアのサハリンⅡ事業などから長期契約で調達・輸入している。佐藤氏は、代替調達の試算を進めていることも明らかにしたとしている。
ロシアのウクライナ侵攻後に、英シェルが、日本の三井物産、三菱商事も参加して開発しているサハリンⅡのガス開発事業からの撤退を表明したほか、米エクソン・モービルも石油開発のサハリンⅠからの撤退を決定した。英BPもロシアの石油大手ロスネフチの保有株を売却したほか、ロシア国内でのロスネフチとBPの合弁の開発事業もすべて終えると宣言した。https://rief-jp.org/ct5/123304?ctid=72 https://rief-jp.org/ct5/122959?ctid=72
またロシアとドイツを結ぶガスパイプラインのノルドストリームⅡは、工事は竣工しているが、事業稼働のめどがつかず、事業会社は経営破綻した。ドイツ国内では、先行して稼働しているノルドストリームⅠについても閉鎖すべきとの議論が高まっている。https://rief-jp.org/ct5/123114?ctid=72
EUは今月10、11の両日に開いた臨時首脳会議で、ロシアからの石油・天然ガス・石炭等の化石燃料の輸入を2027年までに段階的に縮小し、化石燃料エネルギーの「脱ロシア」化を実現することを打ち出した。米国はバイデン大統領が8日に、ロシア産の原油、天然ガス、石炭と関連製品の輸入を全面的に禁止する大統領に署名し、即日発効した。英国も年末までにロシアからの原油輸入禁止を実施するとしている。https://rief-jp.org/ct5/123304?ctid=72
ロシアの主要輸出産品である化石燃料エネルギーの輸入を停止することで、ロシア経済への打撃を強めることが狙いだ。こうした欧米の動きに対し、日本政府はロシアに対する経済制裁に取り組む一方で、ロシアからの石油・ガス等の輸入については、エネルギー安定確保の視点を強調している。
ロシア側は、日本が西側諸国と共同で経済制裁を導入したことを受け、日本との平和条約交渉の打ち切りを発表するなど反発している。これに対して岸田文雄首相は平和条約交渉の打ち切り宣言には「断じて受け入れられない」と抗議する一方で、サハリンⅠやⅡを念頭に置いたロシアとの経済協力には「日本が持つエネルギー権益は重要」との考えを強調している。こうした日本の姿勢には内外の環境NGOからも強い批判が示されている。https://rief-jp.org/ct10/123532?ctid=72
ロシアのウクライナ侵攻が長期化する場合、エネルギーでの日本の「あいまいな姿勢」は、西側諸国の間でも批判を受ける可能性もある。ただ、エネルギー調達先をロシアから転換する場合、当面は市場から調達する必要があり、調達コストの上昇は避けられない。東ガスの場合も、最悪の場合は数量を確保できない恐れがあり、佐藤氏は「安定供給を考えると個社として調達を見送る判断は難しい」としている。
西側諸国の調達先転換も、ある意味で「競争」状況にある。すでにドイツ等は中東からのガスや水素エネルギーの長期契約の確保に動いている。日本のエネルギー官民も、エネルギー調達先の転換や、再エネ事業の抜本的推進等を真剣に検討しないと、取り残されるリスクもある。
https://www.tokyo-gas.co.jp/news/press/20220323-03.html
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC2351Q0T20C22A3000000/?type=my#AAAUAgAAMA
Research Institute for Environmental Finance