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内外の環境NGOら46団体。日本の官民の「ロシア化石燃料投融資の継続」を批判。「日本が『プーチンの戦争』を支援しているのと同じ」と。GPIFの多額のロシア企業投資も問題(RIEF)

2022-03-20 21:41:14

Thaharin2001キャプチャ

 

  内外の環境NGOら46団体は、日本の官民がロシアのウクライナ侵攻を非難しつつ、ロシアでの化石燃料投融資を止めようとしていないことは、結果的に「プーチンの戦争」を支持していることになると指摘、岸田文雄首相をはじめとする政府関係者、日本の商社やメガバンク等の責任者に対し、ロシア事業から撤退するよう求める公開書簡を提出した。欧米では、ロシアでの天然ガス事業からの撤退等の動きが広がるが、日本政府は「エネルギーの安定供給」を理由に、間接的に「ロシア支援」につながる姿勢を崩していない。

 

 (写真は、サハリン2事業で開発した天然ガスを日本に運ぶサハリンの積出港とタンカー)

 

 ロシアのウクライナ侵攻に対応する形でこれまで、欧米のエネルギー大手のエクソン・モービル、シェル、BP等は、ロシアでのLNG事業等からの撤退を表明。ドイツとロシアをつなぐ天然ガスパイプラインのノルドストリーム2も事実上、閉鎖状態になっている。

 

 これに対して日本では、エクソンやシェルが撤退表明したサハリン1、同2のプロジェクトに参加している三菱商事や三井物産等の商社は「音無し」の構え。また経済産業省系の石油資源開発株式会社(JAPEX)も事業継続を堅持している。金融機関も3メガバンクがこれらロシア・プロジェクトに投融資しているほか、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)はロシア株に19億㌦(約2200億円)分の投資を抱える。そのうちガスプロムとタトネフチの株保有割合ではいずれも8番目の大投資家だ。

 

 こうした「ロシア・コミットメント」の高さにもかかわらず、日本のエネルギー関連企業は、西側諸国がロシアへの経済制裁の旗を振る中でも、全く動きを見せていない。これらの企業が動かないのは、政府が「ロシア権益死守」の構えをとっており、いわば「政府のお墨付き」で「ロシア支持」を続けている格好だ。

 

ウクライナより、ロシアでのエネルギー権益維持を優先(?)
ウクライナより、ロシアでのエネルギー権益維持を優先(?)

 

 実際、岸田首相自ら、ロシアのエネルギー権益維持を最重視している。首相は16日の記者会見で、「サハリン2」開発事業に関し「エネルギーの安定供給の上で重要な事業。長期的に低価格でエネルギーを調達できる日本が権益を持つプロジェクトだ」と述べた。欧米のように経済制裁の対象にしない考えを強調した。

 

 ロシアへの経済制裁自体についても、「エネルギー安全保障の観点を追求しながら可能な限り主要7カ国(G7)に同調する」とし、ロシアのエネルギー確保を優先したうえで(制裁を)検討する立場であることを明瞭にしている。EUではロシアからの天然ガス輸入の切り替えに懸命になっているが、日本の首相の「エネルギー確保と経済制裁は別物」発言は、日本がまるで西側諸国の一員ではないと宣言しているかのようにも聞こえる。

 

 日本のマスコミも、ユニクロのファーストリテイリング等のロシア事業の一時閉鎖等取り上げたものの、エネルギー関連の商社や金融機関等の「事業継続」の動きについては、ほとんど取り上げていない。

 

 公開書簡はさらに、「ロシアの政府予算の36%が石油・ガスの販売によって成り立っている。つまり、日本のような国へ化石燃料を輸出することにより、プーチン氏は戦争を行うことができている」と指摘している。日本等がロシア産の化石燃料を「安全保障の観点」で輸入し続けることは、「ロシアの戦争支持」と同じとみなされるとしている。

 

 日本のロシア・エネルギーへの依存は、官主導で進んでいる。書簡によると、2018年から2020年までの間、国際協力銀行(JBIC)、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)、日本貿易保険(NEXI)等の日本の公的金融機関は、ロシアの化石燃料プロジェクトに年間48億㌦(約5600億円)を供与している。この額はG20諸国のうちで、日本が最大額の公的資金の供与国なのだ。日本政府の「ロシアシフト」の異常さが浮き上がる。

 

 またGPIFのロシア企業株投資の多さも異例だ。ガスプロムやタトネフチへの投資額の多さに加え、ロスネフチ、ルクオイルについてもそれぞれ16番目に大きい出資者でもある。国内の年金受給者の資金を、ロシアのエネルギーに集中投資しているわけだ。ロシアという国のカントリーリスク、化石燃料事業という気候リスクを、ともに軽視した近視眼的な資産運用方針と言わざるを得ない。

 

 書簡では、こうしたGPIFの姿勢について、「世界最大の年金貯蓄額を運用しているGPIFは、ロシアの石油及びガス企業から手を引き、日本企業がロシアの石油およびガスプロジェクトから撤退するよう強く促す責任がある」と述べ、GPIFの公的機関投資家としてのスチュワードシップの欠如を批判している。

 

 NGOらは「日本が投融資を行なってきたロシアの化石燃料プロジェクトは、環境破壊と人権侵害を引き起こしてきた。私たちは、日本政府及び企業に対し、ロシアの石炭、石油、ガス関連のプロジェクト及び投融資から撤退し、また、日本以外の政府に対してもロシアの化石燃料の購入や出資を控えることを要求する」と求めている。

 

共同公開書簡に賛同した各国のNGOら

Asian Peoples Movement on Debt & Development, Asia
Climate Action Network Australia, Australia
Friends of the Earth Australia , Australia
Equitable Cambodia, Cambodia
Fundacion Chile Sustentable, Chile
Blue Dalian, China
Scholar Tree Alliance, China
China Environmental Paper Network , China
Re-set: Platform for Social-Ecological Transformation, Czech Republic
Reclaim Finance, France
Urgewald, Germany
AbibiNsroma Foundation , Ghana
Centre for Financial Accountability, India
Environics Trust, India
国際環境NGO 350.org Japan(日本)
国際環境NGO FoE Japan(日本)
認定NPO法人 気候ネットワーク(日本)
武器取引反対ネットワーク(日本)
一般社団法人 Protect Our Winters Japan(日本)
350 Pilipinas, Philippines
Center for Energy, Ecology, and Development, Philippines
Solutions For Our Climate, South Korea
Centre for Environmental Justice, Sri Lanka
Campax, Switzerland
Coal Action Network, United Kingdom
Biofuelwatch, United Kingdom / United States
1000 Grandmothers for Future Generations, United States
350.org, United States
Atmos Financial, United States
Center for International Environmental Law, United States
Connecticut Citizen Action Group, United States
Friends of the Earth U.S., United States
Mighty Earth, United States
New Mexico Climate Justice , United States
Oil & Gas Action Network, United States
Oil Change International, United States
Rainforest Action Network, United States
Texas Campaign for the Environment, United States
350.org Asia, International
AnsvarligFremtid, International
BankTrack, International
Big Shift Global, International
EKOenergy Ecolabel, International
GreenFaith, International
Recourse, International
The Sunrise Project, Internationa

https://world.350.org/ja/press-release/20220316-ja/