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G7気候・エネルギー・環境相会合、2035年までに電力部門の「太宗」の脱炭素化と、「対策なし(Unabated)」の国内石炭火力の廃止、で合意。日本の対応迫られる(RIEF)

2022-05-28 00:15:22

G7001キャプチャ

 

  ドイツ・ベルリンで開いていた主要7カ国(G7)の気候・エネルギー・環境担当大臣会合は27日、2035年までに電力部門の「太宗」を脱炭素化することで合意した。排出削減対策を取らない(unabated)国内石炭火力発電所を廃止する方針も共同声明に盛り込んだ。ただ廃止の期限は日本の反対で明記しなかったとされる。日本のエネルギー基本計画は電源構成に占める石炭火力の目標比率を30年で19%としているが、共同声明に沿うと、これらの太宗をCCS等でカバーする必要があるが、技術的な見通しは立っていない。

 

 共同声明では「35年に電力部門の大宗(predominantly)を脱炭素化する」と明記した。さらに「排出削減対策が講じられていない石炭火力は最終的にフェーズアウトさせる」ともした。声明のドラフト案の段階では、電力部門の35年脱炭素化とともに、石炭火力廃止にも「30年まで」の期限を設ける方針だった。

 

 しかし、日本と米国が難色を示した。その後、米国は廃止期限を「30年代」とする修正案を提案、他の国も同案に賛成した。だが、日本だけが最後まで年限に反対し続けたことで合意に至らなかったとされる。

 

 一方、排出削減対策が講じられていない化石燃料部門への国際的な新たな公的支援は22年末までに終了することでは合意した。この場合、「1.5℃目標」やパリ協定の目標達成に整合する場合は各国の判断で支援継続を可能にするとの条件が付された。

 

会議終了後に勢ぞろいしたG7の各国閣僚たち
会議終了後に勢ぞろいしたG7各国の閣僚たち

 

 ロシアのウクライナ侵攻の影響で、化石燃料等の価格が大きく上昇した影響を受けた企業や消費者への金融的支援(補助金等)がいくつかの国々で政治課題となっている点について、共同声明は「こうした措置は一時的なもので、2025年までに非効率な化石燃料補助金をゼロとする目標の維持を再確認する」とした。

 

 期限の明記は付されなかったが、対策なしの石炭火力廃止の方向性が示されたことは一歩前進ともいえる。逆にみると「(Abatedな)対策あり」の場合は継続できることにもなる。石炭火力のCO2排出削減対策としては、①石炭火力自体の性能を向上させてCO2排出量を削減する②燃料に石炭に加えてバイオ燃料や水素・アンモニア等を混焼する③排出されたCO2をCCSで回収・貯留する方法等が想定される。

 

 このうち、①についてはわが国では、中国電力と電源開発(Jパワー)が、CO2分離・回収型酸素吹石炭ガス化複合発電設備(IGCC)の開発を進めている。CO2を90%以上回収したうえでコストを下げ、発電効率を高められるかがカギだ。②では日本政府はアンモニアの混焼率を30年までに20%とすることを目指している。しかし、この程度の混焼率ではCO2排出量の削減は数%でしかなく、「対策あり」とはいえない。

 

 ③のCCSがCO2削減ではもっとも効果的だ。しかし、技術的な課題と、貯留するサイトの適地の問題がある。経産省は2050年ネットゼロの目標達成に際しても石炭火力を維持し、排出されるCO2をCCSで年間1億2000万~2億4000万㌧回収するとの目標を掲げる。その場合、回収したCO2を多くの場合、海面下の地層に貯留する考えとされる。

 

 CCSは各国で取り組みが行われている。だが、石炭・天然ガスの採掘跡地への貯留の場合は技術的な課題は比較的、少ないようだが、日本が想定する海底下への貯留の場合、地層の安定や貯留後の管理等では未解決な課題が少なくない。オーストラリアで米メジャーのシェブロンが実施してきた海底下CCS貯留事業は、貯留がうまくいかず、稼働率は過去5年間で計画の50%しか達成できていない。https://rief-jp.org/ct10/124682?ctid=72

 

 現時点で、石炭火力から排出されるCO2の「太宗」をCCSで回収させる技術に全面的に頼ろうとしているのは、G7では日本だけでもある。欧州諸国は脱石炭火力を明瞭にしている。この点で環境NGO等からは厳しい批判が示されている。

 

 350.org Japanは緊急声明で「石炭火力フェーズアウトの期限の合意は見送られた。この脱石炭の期限に唯一反対したのが日本だったと伝えられている。今回の日本政府の科学に背を向けた交渉姿勢は、G7として脱石炭の強い政治的意思を発信する機会を失わせるものだ。日本が脱炭素の国際合意の推進を阻むのではなく、脱炭素社会に向けた世界のリーダーになることを強く要望する」としている。https://world.350.org/ja/press-release/20220527-g7/

 https://www.g7germany.de/g7-en/current-information/g7-environment-climate-ministers-2014900

https://www.bmuv.de/fileadmin/Daten_BMU/Download_PDF/Europa___International/g7_climate_energy_environment_ministers_communique_bf.pdf