HOME10.電力・エネルギー |EU欧州議会、サステナブルファイナンスのタクソノミーに、天然ガスと原発を「トランジション」として含める補完委任法案(CDA)への反対票、過半数に届かず。事実上の成立(RIEF) |

EU欧州議会、サステナブルファイナンスのタクソノミーに、天然ガスと原発を「トランジション」として含める補完委任法案(CDA)への反対票、過半数に届かず。事実上の成立(RIEF)

2022-07-06 21:10:00

EP001キャプチャ

 

  EU欧州議会は6日開いた本会議で、欧州委員会が提案していたサステナブルファイナンスの事業分類リストであるタクソノミーに、化石燃料の天然ガスと原子力発電を盛り込む補完委任法案(CDA)に対する反対提案を審議したが、過半数に達せず、CDA案は承認された。今後、欧州理事会のと調整プロセスがあるが、理事会で反対するには3分の2の加盟国の同意が必要で事実上、不可能。このため天然ガスと原発をサステナブルファイナンスの対象にすることが事実上、確定したことになる。

 

 欧州理事会の承認を得て、同案は正式に成立し、2023年1月1日から実施に移される。ただ、同案に対しては、加盟国レベルで脱原発を主張するオーストラリアやルクセンブルクが、CDA案を提案した欧州委員会を欧州司法裁判所に提訴する方針を示している。また環境NGO等も同様にCDA案はEU法に違反しているとして提訴の構えを示している。

 

 6日の本会議投票では、欧州議会705人の総数に対して、反対決議への賛同票は278票にとどまり、法案を阻止する過半数の353票に75票とどかなかった。反対決議への反対(CDAへの賛成票)は328票、棄権33票だった。

 

 CDA案への賛同が反対を上回った背景には、ロシアのウクライナ侵攻によって西側が発動した経済制裁の影響で、ロシアからの天然ガス輸入阻止を政策として選択せざるを得ず、気候変動を最優先してきたこれまでのEUのサステナブルファイナンス政策自体の見直しを迫られた形となった。ガス火力の事実上の承認だけではなく、石炭火力の一時的稼働等も現実的な議論となっている。https://rief-jp.org/ct5/126405

 

 欧州委のCDA案では、天然ガスも原発もグリーン事業そのものとしてではなく、「トランジション(移行)」と位置づけている。天然ガスは化石燃料だが、石炭に比べてCO2排出量が少ない。タクソノミーの対象とする条件となる技術クライテリア(TSC)では、エネルギー全体の基本的排出量の100gCO2e/kWh未満に加え、2030年末までに建設許可を得たガス火力事業について270gCO2e/kWh未満あるいは年間のGHG排出量が20年間で平均550kgCO2e/kWhを超えない、との「移行」基準を設定した。https://rief-jp.org/blog/122179?ctid=33

 

 天然ガス火力を既存電力設備から代替する場合は、再エネ事業の代替としては認めず、石炭火力あるいは天然ガス・石油火力の代替に限定する。新規天然ガス火力発電による発電量は、既存発電設備より15%以上上回ってはならない等の条件を付している。

 

 原発の場合は、2045年までに建設認可を受けるか、あるいは2040年までに操業期間延長のための修繕認可を受けることを前提として、①極低・低・中レベル放射性廃棄物の最終処分施設が稼働している②2050年までに高レベル放射性廃棄物の処分施設に関する詳細な計画を定めることを技術基準として設定している。

https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20220701IPR34365/taxonomy-meps-do-not-object-to-inclusion-of-gas-and-nuclear-activities