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経産省の「低炭素促進事業基金」、国費37億円を投じて利用申請1件で事業終了。経費支出は支出見込み額の15倍。経産省の杜撰政策と、財務省のザル査定。「亡国の官僚」浮き彫り(各紙)

2023-03-24 18:34:38

Metiキャプチャ

 

 各紙の報道によると、経済産業省が設立した中小企業や先端的な研究機関向けの低炭素促進事業基金が、国費37億円強を投じて設立しながら、実際には制度の利用申請は1件だけで、それ以外の利用がないまま22年3月に終了していたことがわかった。基金の最大支出見込み額360万円に対し、人件費等の経費は約15倍の5300万円を支出。事業目標の達成率はわずか0.048%だった。報道では「使い勝手の良い他の補助事業に事業者が流れた」との経産省の説明を紹介している。同省内部で補助事業が「競合」し、同基金は「立ち枯れた」形だ。同省の政策立案力の「お粗末さ」を改めて浮き彫りにする事例だ。

 

 東京新聞が報じた。それによると、基金は、経済産業省所管の「先端低炭素設備導入促進補償制度推進事業」。太陽光発電や電気自動車などCO2排出量が少ない設備の普及を目的として、同設備を購入して貸し出すリース業者に損失が出た場合に、同業者に損失補填金を支払う事業。2020年度第3次補正予算で、国費37億5800万円を投じて基金を設置した。

 

 ところが、制度の利用申請は21年度の1社だけ。7200万円分の設備が対象となったが、制度による補填金の支出見込み額は最大360万円。また実際には対象事業の損失補填はまだ発生しておらず、支払いは起きていない。このケース以外には利用申請はなく、22年3月に新規の受け付けを終了した。
 しかし基金は21、22年度に人件費等で総額5300万円の管理費を支出した。同事業を担当した同省の役人の人件費を税金で賄うだけの基金だったといえる。基金は、今後支払う可能性がある補填金360万円だけを残して、差額の37億100万円を22年9月に国庫に返納したという。
 基金構想の当初案では、リース業者による1500億円規模の設備導入を目指したとするが、導入実績に対する事業達成率は0.048%でしかなかったことになる。
 報道によると、経産省の担当者は基金が機能しなかった理由について、同じ経産省が同時期に「事業再構築補助金」として、別の基金(国費額計1兆8000億円)を設立したことを挙げたと説明している。こちらの基金の場合、事業者が損失確定時ではなく設備導入時に補助を受けられることから「使い勝手の良い補助事業のほうを多くの事業者が選択した。省内での擦り合わせや調整ができていなかった」と認めている、としている。
 同じ経産省が似たような基金を乱立させ、国費を無駄に費やしたことになる。省内での調整も不十分なまま基金を立ち上げた経産省の政策立案力のお粗末さもさることながら、そうした重複事業に対して予算を付けた財務省の「ザル査定」にも呆れる以外にない。こうした官僚機構による税金の無駄遣いの積み重ねが、1000兆円を超す累積財政赤字のヤマとなって国民の将来を暗くしている。省あって国無し。「亡国の官僚機構」と言わざるを得ない。
 同紙によると、国のこうした基金全176のうち、補助金交付など本来事業を行わず、支出が人件費など管理費だけの「休眠基金」が21年度に27あったという。「先端低炭素設備導入促進補償制度推進事業」もその1つだ。176基金全体では21年度末で総額約13兆円の残高が積み上がっている。