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「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」第2回首脳会議。GX路線のアジア拡大を目指す。アジアの環境NGO等からは「日本のためだけのAZEC」と批判相次ぐ(RIEF)

2024-10-12 22:56:39

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写真は、日本の内閣広報室の公表資料による)

 

  アジアの脱炭素推進を掲げる「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」は11日、ラオスで第2回目の首脳会合を開いた。会議は「一つの目標、多様な道筋」として、アジア各国固有の状況、既存の政策、課題等の考慮を強調したうえで、再生可能エネルギー、送電網の強化等に加えて、日本が推進する、水素、アンモニア、CCUSを用いた「ゼロエミッション火力発電」等を、AZECの共通テーマとして盛り込んだ。これに対して、日本を含むアジアの環境NGOらは「日本の『誤った気候政策』をアジアに広げるもの」「日本のためだけのAZEC」等の批判が相次いでいる。

 

 ASEC首脳会議には、ミャンマーを除く東南アジア(ASEAN)9カ国と日本、オーストラリアの計11カ国が参加。首脳共同声明として、「今後10年のためのアクションプラン」を公表し、温室効果ガス(GHG)排出量を把握しやすくするため、日本とASEAN各国で算定・報告に関する共通ルールの導入などを盛り込んだ。

 

 同声明では、気候変動への対処、包摂的な経済成長の促進、エネルギー安全保障の確保を同時に実現する「トリプル・ブレークスルー」達成の重要性を強調。脱炭素への道筋について、「一つの目標、多様な道筋」の概念を打ち出し、欧米が再エネ重視の脱炭素化の道筋をのに対し、アジア各国固有の状況や、既存の目標・政策、開発上の課題を考慮したカーボンニュートラル/ネットゼロの「多様かつ現実的な道筋が存在する」と強調している。

 

AZEC首脳会議後に記念撮影した各国リーダー
AZEC首脳会議後に記念撮影した各国リーダー

 

 具体的な「多様な道筋」の代表としては、日本がGX政策で打ち出している石炭火力の水素・アンモニア混焼での「延命」、バイオエネルギー混焼、CO2の回収・利用・貯留(CCUS)の活用等による「ゼロエミッション火力発電」の促進をアジア全体での「道筋」として位置づける方針を示した。これらに加えて、再エネの最大化、省エネの実施、送電網の強化と柔軟性の確保に関する協力を加えている。

 

 日本は 政府開発援助(ODA)を通じて、これらの「道筋」を支援するとした。日本からアジアの国々に対して「オファー型協力」として、省エネ対策、再エネ発電プロジェクト、送配電網の整備等を支援し、エネルギー移行のための研修やマスタープラ ンの策定等の技術協力を実施するとしている。同協力には日本政府の指示の元、国際協力銀行(JBIC)が、AZECパートナー国ごとに、プロジェクトを推進するとしている。

 

 日本政府は、アジア各国の「道筋」に沿うとして、再エネ、省エネ、水素事業とともに、日本政府がGX政策として推進するアンモニア、E燃料、Eメタン、CCUSなどの「ゼロエミッション火力」を支援する技術をアジア各国に普及させるため、各国との間で350以上の協力プロジェ クトが進行中としている。

 

 首脳会議の議長を務めた石破首相は、「世界の成長エンジンとして、アジアの経済成長の確保は必須。同時に、気候変動対策は人類共通の喫緊の課題。このため、脱炭素化、経済成長、エネルギー安全保障を同時に実現すべく、産業構造やエネルギー構成等の各国の事情を踏まえた多様な道筋の下でネットゼロを達成するという共通の目標に向け、AZEC原則は極めて重要であり、国際的な取組を進めることにも寄与する。AZEC構想は、ASEANの戦略とも合致する」と述べた。

 

 アジア諸国では、AZECは日本が「演出」し、アジアを日本のGXに巻き込むための戦略として冷静に受け止められている。ASEAN諸国は、「GX=AZEC」戦略をアジアで展開するに際して、日本がODA資金を潤沢にバラまくことには「歓迎」することで一致しているようだ。だが、だからといって、GX資金が尽きれば、AZECの構想も、途中で行き詰まる可能性がある点には内心、懸念を持っているとみられる。

 

 GHG排出量の算定・報告のAZEC共通ルールの導入については、日本が主導してルール作りを進め、2029~34年の間に各国で排出量の算定・報告の制度をそろえていくとしている。しかし、排出量の算定ではすでにGHGプロトコルによる国際ルールが確立しており、「屋上屋を重ねる」懸念がある。

 

日本の脱化石燃料を目指すfossil free Japanのサイトから
日本の脱化石燃料を目指すfossil free Japanのサイトから

 

 こうした課題・懸念を抱えながら、国内のGX政策を「権威づける手段」の一つのように、AZECを盛り上げようとしている日本政府の姿勢に対して、日本だけでなく、アジアのNGO等が懸念を深めている。

 

 インドネシアのNGO、WALHI(インドネシア環境フォーラム)のインフラ問題担当キャンペーナーのドゥウィ・サウン氏は「石破首相は、再エネと省エネの可能性を最大限に引き出すことの重要性と、気候変動対策の緊急性を強調してきた。しかし、同氏は今日の声明で、地球や地域コミュニティの安全や幸福より、日本が化石燃料から得る利益を優先し続けることを示唆した」と石破首相のリーダーシップに懸念を投げかけた。

 

 アジア各国を網羅する「Center for Energy, Ecology, and Development(CEED)」事務局長のジェリー・アランセス氏は「再エネへ迅速に移行しなければ、気候の破壊的状況は悪化し、不必要な死と破壊はさらに増えるだろう。日本は、気候変動対策に注力する代わりに、化石燃料の使用を拡大させ、長引かせる、危険で汚い、高価な技術を売りつけ、貴重な時間と資源を浪費してきた。ASEAN諸国には、潜在的な再エネが豊富に眠っている。日本が、脱炭素化と公正なエネルギー移行を真っ当に支援するのであれば、この地域の再エネの可能性を引き出すべきだ」

 

 日本のFoE Japan事務局次長の深草亜悠美氏は「日本はAZECを大々的なグリーンウォッシングの手段として使っている。石破首相がGHG排出削減の重要性を語る一方で、日本政府はバイオマスやアンモニア混焼、水素やCCSといった『誤った気候変動対策』を推進し、ガスや石炭の利用をむしろ拡大させ、長引かせようとしている。日本政府は企業利益のために、AZECの受入国の地域コミュニティや市民団体の声を一切聞かず、地域コミュニティや地球を危険に晒し、被害をもたらしている」

 

 Oil Change Internationalのシニア・パートナーシップ・アウトリーチ・オフィサーのヒクマット・ソエリアタヌウィヤヤ氏は「日本はアジアを誤った方向に導こうとしている。AZECは、『汚いエネルギー』への依存を長引かせるだけでなく、気候変動の最前線に立つ人々の生活を危険に晒し、クリーンエネルギーへの進展を遅らせ、私たちを炭素集中型な未来に縛りつける恐れがある」

 

 Asian Peoples’ Movement on Debt and Development(APMDD : 債務と開発に関するアジアの民衆運動)のコーディネーターのリディ・ナクピル氏は「気候危機に対して緊急に行動しなければならないこの重要な局面で、化石燃料産業と日本などの政府は、人々と地球の長期的な生存よりも短期的な利益を優先し続けている。日本による天然ガスや石炭事業への支援は、人々や環境にさらなる悪影響をもたらし、世界が気候による大災害を防ぐために必要な、迅速で公平かつ公正な移行を遅らせる」


 Solutions for Climate Australia(CANA)のシニア・インターナショナル・キャンペーナーのエリン・ライアン氏は「洪水、熱波、干ばつなど、気候変動による影響の最前線にある国々は、再エネへの移行が緊急に必要だと認識しており、日本に助けを求めてきた。(しかしその)求めに対して、日本はAZECを利用し、化石燃料ガスの地域的役割を固定化し、再エネから目をそらすための高価で未検証の技術メニューを提供し、人々よりも日本企業の利益を優先している。これは、再エネの可能性を最大限に引き出す、という石破首相の選挙中の発言とはかけ離れている」等と指摘した。

 

https://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/ch/pageit_000001_00001.html

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100737978.pdf

https://fossilfreejapan.org/campaigns/unmasking-azec/

https://fossilfreejapan.org/ja/campaigns/asean/?utm_source=google&utm_medium=cpc&utm_campaign=traffic&utm_content=typ-search__adn-ad1__aud-2_japan%20gov%20and%20companies&gad_source=1&gclid=CjwKCAjwvKi4BhABEiwAH2gcw0ZYPXQIqU74Z0Hw_DOWUC-bFNJPzhiSNoktOBYVcMph7RnE7DOGvhoCaS4QAvD_BwE