HOME4.市場・運用 |G7各国の主要株指数の構成企業の平均気温上昇度は「2.95℃」。日本の日経225企業は「3.0℃」と最悪水準。もっとも「2.0℃目標」に近いのはドイツのDAX60。「SBTi」等が分析(RIEF) |

G7各国の主要株指数の構成企業の平均気温上昇度は「2.95℃」。日本の日経225企業は「3.0℃」と最悪水準。もっとも「2.0℃目標」に近いのはドイツのDAX60。「SBTi」等が分析(RIEF)

2021-06-11 00:45:08

SBT001キャプチャ

 

 主要7カ国(G7)株式市場の主要株式インデックス構成企業の気候対応度は、パリ協定の「1.5℃目標」には整合せず、構成銘柄全体の活動に伴う温度上昇は、平均2.95℃となってしまうことがわかった。パリ協定に沿った科学的な目標設定を評価する非営利団体の「サイエンスド・ベース・イニシアティブ(SBTi)」が分析した。G7のうち日本(日経225)、英国(FTSE100)、米国(S&P500)等の4銘柄は「3℃かそれ以上」の最悪水準と評価された。

 

 (上図は、SBTiによる各国株式インデックスの「気候感度」の分析結果)

 

 分析はSBTiと、企業の気候情報開示をレポートするCDP、それに国連のグローバルコンパクトの協力で実施した。主要国の株式インデックスに組み込まれている企業が取り組んでいる気候変動対策をスコアリングし、インデックス全体の気温上昇度合いとして評価した。

 

 その結果、パリ協定の「1.5℃目標」「2.0℃目標」に適合するG7株式インデックスは一カ国もなかった。もっと近かったのは、ドイツのDAX30。温度上昇は「2.2℃」。もう少しで「2.0℃目標」を達成できるレベルだ。さすがに目標を設定するとしっかり取り組むドイツ人気質が反映したともいえる。

 

 次いで、フランス(CAC30)とイタリア(FTSEMIB)が、ともに「2.7℃」。ドイツを含め、気候対応に熱心なEU諸国の企業が相対的に前向きに取り組んでいることがわかる。最悪は英国とカナダ(SPTSX60)の「3.1℃」。日本は米国とともに「3.0℃」。英国はEUから離脱したが、英国企業の気候「気質」はEU企業と異なることが浮き彫りになった格好だ。

 

 米株式市場の影響を色濃く受ける日本の株式市場だが、その日経225の温度上昇が米S&P500と同じ「3.0℃」だったので、安心というわけではない。各企業の温暖対策がパリ協定の水準を1℃も上回っているということは、これから協定の目標適合のために経営強化をしなければならないわけで、各企業の「本気度」が問われる。

 

 ドイツのDAX30企業の場合、すでに構成銘柄企業の71%の温室効果ガス排出量がSBTsに合致している。これに対して、「最悪」のカナダのSPTSX60の構成企業のSBTs適合率は1%以下という。日経225の場合のSBTsは12%で、英FTSE100の7%よりは上回ったが、1割台の低水準だ。

 

 SBTiの議長でグローバルコンパクトのプログラム責任者であるLila Karbassi氏は「G7各国企業は、グローバル経済全体にポジティブな変化をもたらす『ドミノ効果』を引き起こす潜在力を持っていることでもある。今回の分析は、パリ協定の目標に向けて、市場と投資家が企業の背中を押す必要があることを示している。G7サミットでも、企業に対して科学に基づくパリ協定の削減目標達成を推進するべきだ」と強調している。

 

 今回の分析は投資家の投資戦略にも再考を促しそうだ。パッシブ運用の機関投資家等にとって、7カ国の主要株インデックス構成企業の平均19%しか、パリ協定の目標と一致した気候対策をとっていないことが判明したわけで、従来のパッシブ運用では投資ポートフォリオのカーボンフットプリントの改善は十分にできないことになるためだ。米国では投資資金の40%がパッシブ運用、欧州では20%とされる。

 

 SBTiの評議委員会メンバーでCDPのディレクターでもあるAlberto Carrillo Pineda氏は「気候サイエンスを企業が無視するのは、タバコが健康に悪いと分かっていながら吸うようなものだ。気候・環境影響は、今日、最大の健康と経済、社会にとってのチャレンジだ。世界の大企業は直ちに行動が求められる。今回の分析では前進も見られたが、企業がパリ協定に合致する科学的な目標設定をもっと多くの企業が行い、ネットゼロに向かうためには、さらなるインセンティブが必要だ」と指摘している。

https://sciencebasedtargets.org/news/g7-stock-indexes-science-based-targets