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フィッチ・グループ、グリーンボンド等のESG債や発行体の独自格付業務を開始。ICMAやCBI等の異なるラベル債の横比較が可能に。発行体寄りではなく、投資家目線を強調(RIEF)

2021-09-16 12:27:29

Fitch002キャプチャ

 

  格付会社のフィッチ・グループは15日、グリーンボンド等のESG債やローンをESG評価で格付する「Sustainable Fitch(サステナブル・フィッチ)」を創設すると発表した。現在、市場で発行されるグリーンボンドやサステナビリティ・リンク・ボンド等は国際資本市場協会(ICMA)の基準等に準拠しているものが多いが、基本的に発行体寄りとの指摘がある。フィッチでは投資家目線での評価を目指すとしている。

 

 フィッチがESG債等について投資家目線での格付評価を付与するサービスを始めるのは、現行のICMAやCBI等のESG債ラベルが、発行体目線で投資家にとって真のESG性を評価しづらいとの投資家の不満が基本にある。金融当局も「グリーンウォッシュ懸念」を深めている。

 

 日本のグリーンボンドやトランジションボンド等のように、環境省や経産省がICMAの基準をコピーする形で政策支援(補助金給付)をする事例も出ている。しかし、ESG投資を強化したい投資家にとって、ESG関連のラベルや政府補助金が付与されていても、ESG性の比較が容易ではないほか、グリーン・トランジションウォッシュに加担させられるリスクもあるとされる。

 

Fitcキャプチャ

 

 フィッチが評価の対象とする金融商品は、日本を含めグローバル市場で発行されるすべての資産クラス。発行体及び債券の両方のレベルでの包括的なESG格付プロダクトを提供する。そのESG格付は、ESG発行体格付(ER1~5)、ESG債券格付(IR1~5)、ESGラベル又はリンク債・KPI債などの付加的なESGフレームワーク格付(FR 1~5)の3分野を示す。

 

 現在市場で発行・流通するESGラベルを付された債券(グリーン、ソーシャル、サステナビリティ、KPIリンク及びトランジション)を全面的にカバーするほか、債券及び発行体レベルのレポート及び格付、あらゆる債務商品(債券及びローン、ESGラベル及び伝統的な商品)を対象とする。評価分析に際しては、発行体による政策や広範なコミットメントではなく、行動、結果、影響及び活動を重視する、としている。

 

 当面、グリーンボンド等のESGラベルの付された市場から始め、将来は投資可能な債券全体を対象とするという。サステナブル・フィッチによる評価により、複数の基準に準拠しているESG債券等のESG性の比較も容易になる。

 

 同社が付与するESG格付はフィッチが信用格付で提供する手法やデータを踏まえて行う。発行体自体や、発行される債券、ESGフレームワークの各レベルにおけるESG パフォーマンスを客観的、網羅的に評価することで、発行体や債券等の詳細な比較を可能にできるとしている。



 フィッチは2019年にESG関連度スコア手法を導入しており、今回の評価も同手法を土台とする。同手法はESGの各要素が信用格付の決定に及ぼす影響をみるもので、現在、フィッチが評価する10500件以上の発行体及び案件に対して付されている。

 

 サステナブル・フィッチを担当するマネージング・ダイレクターのAndrew Steel氏は「投資家は、ESGのファンダメンタルズを評価するために、ラベリングや対象の先を見据えた透明性が高く相互に比較可能なESG格付を求めている」と述べている。

https://www.fitchratings.com/research/ja/banks/fitch-group-announces-creation-of-sustainable-fitch-launches-esg-ratings-product-15-09-2021