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マーク・カーニー氏提唱の「ネットゼロのためのグラスゴー金融連合(GFANZ)」は「金融機関のグリーンウォッシュの隠れ蓑」。90以上の環境団体が公開書簡で批判。基準強化を要請(RIEF)

2021-10-08 13:35:52

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   前英イングランド銀行総裁で、現在、国連の気候大使を務めるマーク・カーニー氏が金融機関の気候対策イニシアティブとして推進する「Glasgow Financial Alliance for Net Zero (GFANZ)」が、金融機関の活動を隠蔽する「グリーンウォッシュ」の役割になっているとの批判が、世界の環境NGO90団体以上から提起された。NGOらは、カーニー氏宛ての公開書簡を主要なメディアに広告として掲載した。

 

 (写真は、英FT向けの広告)

 

 GFANZは、カーニー氏の提唱で、COP26に向けて、金融界が業態別にネットゼロを主導するイニシアティブとして立ち上がっている。「ネットゼロ・アセットマネジャー・イニシアティブ(NZAM)」、「ネットゼロ・アセットオーナー・アライアンス(NZAOA)」、「ネットゼロ・保険アライアンス(NZIA)」、「ネットゼロ銀行アライアンス(NZBA)」の4団体。格付機関や指標会社、監査法人等による「ネットゼロ・ファイナンシャルプロバイダー・アライアンス(NFSPA)」もある。https://rief-jp.org/ct6/113488?ctid=69

 

 GFANZはこれらの業態団体を統括する位置づけだ。カーニー氏が議長の座にある。いずれもグローバル経済を2050年までにネットゼロに移行させるための金融機関の活動推進をうたっている。

 

 しかし、グリーンピース、シェラクラブ、マーケットフォース等の主要な環境NGOは公開書簡で、「(GFANZによる)金融システムのグリーン化を促すフレームワークづくりは評価するが、銀行等のネットゼロ宣言の多くは『グリーンウォッシュ』に利用されていることを見逃すことはできない」と指摘している。

 

 現在、4団体合わせて約250の金融機関がGFANZに署名している。書簡は「その大多数は、化石燃料投資を削減する詳細な計画を公表しておらず、中間削減目標では、(投融資の削減ではなく)投融資先企業によるオフセットでの埋め合わせや、技術的に確立されていないカーボン除去技術等への依存を認めている」と、金融機関としての目標設定と、投融資先評価の甘さとの乖離を指摘している。

 

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 NGOらは、こうした指摘の理由として、「実際に、GFANZに署名した金融機関が、その後、化石燃料インフラを拡大する企業向けに新たに投融資を供給している」と強調。そうした「ウォッシング行動」が顕著な金融機関として、米Citi、独コメルツバンク、同ドイチェバンク、仏クレディアグリコルとともに、日本の三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)を名指しした。

 

 書簡は、パリ協定の目標と整合する気温上昇にとどめるには、これ以上、新規の石炭、石油、ガス事業の拡大はできないと指摘した国際エネルギー機関(IEA)の報告に言及し、同報告に基づくグローバルな連帯こそが求められていると訴えている。

 

 カーニー氏に対しては、「ネットゼロアライアンスの『野心』を高め、署名審査の基準を明確に引き上げない限り、GFNZAは空っぽの『グリーンPR』の一つに過ぎないものとなる。その一方で、グローバルな『投融資された排出量(financed emissions)』は増大し続けるだろう」と警告を送っている。

 

 書簡はGFANZの改革案として、署名金融機関に対し、最小で不確実、あるいは偽の約束で前向きな市場の称賛を与えることを防ぐため、GFAZへの参加資格を厳格化するほか、署名金融機関には、IEAの提言に沿って新規の化石燃料事業へのファイナンスの禁止、2030年までに自らの「financed emissions」の半減計画の公表、すべての金融活動での生物多様性の保護と回復にコミットすること等を求めている。

 

 各NGOを代表する形で書簡を提出したStand.earthの気候ファイナンスディレクター、Richard Brooks氏は「現在のGFNZAは参加基準があまりに緩いので、金融機関等に気候行動をとらせるよりも、化石燃料関連企業へのファイナンスを『隠し続ける』手段になっている」と批判している。

 

 GFANZには日本の金融機関も複数参加している。NABAに前述のMUFGのほか、野村ホールディングスが、NZAOAには第一生命が、NZAMにはアセットマネジメント・ワン、日生アセットマネジメント、三井住友トラスト・アセットマネジメントが、それぞれ署名している。

https://www.stand.earth/carney

https://www.gfanzero.com/

https://www.un.org/en/climatechange/biggest-financial-players-back-net-zero