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国連支援の責任投資原則(PRI)、次期CEOにオーストラリアのデビッド・アトキン氏。3代続けて「オージー」がCEOポストを独占的に継承(RIEF)

2021-11-03 01:50:26

atkinsonキャプチャ

 

 国連支援の責任投資原則(PRI)は1日、同団体の次期CEOにオーストラリア出身のデビッド・アトキン(David Atkin)氏を指名したと発表した。アトキン氏は、豪州の資産運用会社AMPキャピタルの副CEOの座を辞して、PRIのCEO専任となる見通し。同氏は豪州の年金業界でのキャリアが長く、前任の豪州出身のフィオナ・レイノルド氏とも似た経歴の持ち主だ。

 

 2006年のPRI発足時のCEOのJames Gifford氏もオーストラリア人。したがって、PRIは発足以来、豪州出身者がCEOのバトンを握り続けていることになる。それだけではない。PRIの責任投資責任者(PIF)のネイサン・ファビアン氏も豪州出身。経営の多様性が責任投資の一つのテーマでもある中で、PRI「経営陣」の「オージー・シフト」ぶりが、いささか気になるところでもある。

 

 4300を超える署名機関の国別分類でも、オーストラリアは6%以下でしかない。「PRIの署名機関比率を考慮すると、オーストラリア人のCEOが続くのはなぜか」との問いに対して、PRIのスポークスパーソンの Duncan Smith氏は「世界中の多くの候補者の中から総合的なリサーチをしたうえで(アトキン氏が)指名された。CEOの出身国は重要な要因ではない」と説明している。

 

「オージー」から「オージー」への今回のバトンタッチが、異例に見えるのは、アトキン氏がAMキャピタルの現在のポジションに移ってからまだ8カ月でしかない点も関係する。AMキャピタルの副CEOよりも、PRIのCEOの待遇のほうがいいのかもしれない。

 

 同氏はAMキャピタルの前は、豪州の大手産業別年金基金のCbusやESSSuper、Just Super (現在はMedia Super)等の年金機関の要職を歴任してきた、いわば「豪州の年金業界のプロ」。レイノルズ氏とも20年以上の知り合いという。

 

 前任のレイノルド氏は2022年初めまで、アドバイザーとして組織に残り、アトキン氏に引き継ぎ等をする。アトキン氏は12月10日からCEOとしての任務に就く予定で、それまでの間はアドバイザーとしてPRIで準備を重ねるとみられる。現在、豪州住まいの同氏は、来年3月に正式にロンドンに拠点を移す予定だ。

 

 レイノルズ氏は、2006年に発足したPRIを、2013年から10年近く率いてきた。この間、PRIの署名機関は1000から4倍の4300を超えるまでに増えるなど、PRIの中興の祖と評されている。PRIは国連の支援を受けて誕生したが、組織としては英国の一非営利団体に過ぎない。それが4300を超える署名団体をグローバルに集める「成功NGO」に育てたわけだ。https://rief-jp.org/ct6/114976?ctid=0

 

 アトキン氏は「PRIが、広範囲で多様な署名団体をベースとした新たな必要性に合致する『次のフェーズ』に向かう中、そのPRIをリードする役割を担うことは非常にエキサイティングだ。責任投資はもはやメインストリームになっている。歴史上初めて、世界中の多くの投資家は投資判断に際してESG要因を盛り込むことの重要性を理解するようになっている」と抱負を語っている。

 

 同氏は、2009年から15年にかけて、PRIの理事を務めていることから、PRIの内情にも詳しく、実務面での引継ぎはスムーズに行われるとみられている。豪州の年金業界を渡り歩いた一方で、国際統合報告評議会(IIRC)や米サステナブル会計基準機構(SASB)、Global Pension Transparency Benchmark (GPTB) 等のアドバイザーや要職等も務めている。

 

https://www.unpri.org/news-and-press/pri-appoints-david-atkin-ceo/8861.article