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米個人向け保険大手のステートファーム保険。気候変動による森林火災多発の影響で、カリフォルニア州での住宅保険引き受けを停止。昨年も2社の保険会社が撤退。保険機能成り立たず(RIEF)

2023-06-08 20:38:18

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 米個人向け保険大手のステートファーム保険(State Farm)はカリフォルニア州での新築住宅保険の引き受けを行わないと発表した。主な理由として、同州で毎年のように発生する森林火災の影響による住宅火災が増え、保険引き受けが難しいこと等をあげている。同州および米国北西部地域での森林火災は、気候変動の影響で毎年激化し、周辺の住宅への延焼も増大している。気候変動の影響で保険ビジネス自体が成り立たなくなってきた一例といえる。

 

 同社は、イリノイ州ブルーミントンに本拠を置き、全米で主に個人向けの保険サービスを展開している。市場シェアでは一、二を争う大手保険。カリフォルニア州は個人向け保険での有力市場だが、昨年だけで7490件に上る森林火災が発生し、876件の建物が火災等で焼失・破壊されている。2018年11月に北カリフォルニアで発生した「キャンプファイヤー」火災では、1万1000軒以上の住宅が火災に見舞われ、保険損害額では世界最大の支払いとなった。https://rief-jp.org/ct8/107009?ctid=

 

 気候変動で激化する森林火災等の影響で保険収支が悪化し、個人向け住宅保険の市場から撤退したのは、同社が初めてではない。昨年にはAmerican International Group Inc(AIG)が住宅保険市場から撤退したほか、AllStateも新規の住宅保有、コンドミニアム向け、商業保険等の保険サービス提供を停止した。同州以外でも、フロリダ州では気候変動の影響による海面上昇や洪水の多発で、 住宅向けの保険料は二倍、三倍に引き上げられているという。

 

 ステートファームは今回の決定について、「インフレ率を上回る建設コストの上昇、(気候変動による)カタストロフィー(壊滅的な)保険エクスポ-ジャーの急増、再保険市場の困難さ」を要因にあげている。気候変動の進展による森林火災が増大し、それによって焼失した住宅の再建コストがインフレ率を上回って上昇、保険会社が保険金支払いのために確保する再保険コストも上昇しているとした。

 

 こうした保険環境の悪化を指摘し、同社は「われわれはカリフォルニア州当局が森林火災対策に懸命に取り組んでいることを理解する。しかし、わが社の財務基盤を改善するために今回の行動をとらざるを得ない」と説明している。ただ、既存の保険契約者の保険内容には影響はない。また個人向け自動車保険は引き続き、新規を含めて継続していくとしている。

 

 気候変動の進展は続くことから、森林火災や干害、洪水等の影響は、より多くの地域で自然災害の激化、顕在化として広がっている。その結果、保険会社も、保険に加入する個人契約者もコスト増に直面しているわけだ。https://rief-jp.org/ct12/73903?ctid=

 

 米非営利の消費者団体「Public Citizen」政策担当者のCarly Fabian氏は「ステーフォファームのように、気候変動による自然災害によって市場から退出する企業は、同社が最初でも、最後でもない。同社のような保険会社は、一方で化石燃料事業への主要な投資家でもあり、現在、起きている気候変動の要因にコミットしている面もある。保険監督当局は、保険会社が短期的、近視眼的に、化石燃料事業で利益を得るために、自らの顧客を傷つけ、保険市場を破壊するような行為を止めさせるべきだ」と指摘している。

 

 さらに「保険市場に及ぼす気候インパクトの増大を踏まえると、今回の同社の撤退は、一種の警告であり、予測されたことでもある。さらに同社の決定は、米国全体の規制当局者に対する警告のサインとみなすべきだ」と付け加えた。

https://newsroom.statefarm.com/state-farm-general-insurance-company-california-new-business-update/