HOME |軍政弾圧が続くミャンマー。軍政の関連企業・事業へ10億㌦以上の投融資を持つ海外金融機関は19行。総額650億㌦。MUFG、三井住友トラスト等、日本勢が目立つ。NGOが調査(RIEF) |

軍政弾圧が続くミャンマー。軍政の関連企業・事業へ10億㌦以上の投融資を持つ海外金融機関は19行。総額650億㌦。MUFG、三井住友トラスト等、日本勢が目立つ。NGOが調査(RIEF)

2021-07-29 02:53:59

Banktrack0022キャプチャ

 

 国際環境金融NGOのバンクトラック(BankTrack)は28日、軍政による市民弾圧が続くミャンマーで、軍政と関係の深い企業や事業へ、10億㌦以上を投融資している金融機関19行を特定した。日本勢では三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、三井住友トラストホールディングス、みずほフィナンシャルグループが含まれる。対象金融機関は、18の軍政関係企業に総額650億㌦(約7兆1000億円)を提供しているという。1億㌦以上の関与では三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)、農林中央金庫も含まれる。

 

 調査はBankTrackと、ミャンマーのNGO「Justice for Myanmar」が調べた。両団体は5月に実施した調査でも、主要金融機関9行が総額240億㌦を投融資していると指摘した。今回の調査でさらに多くの海外金融機関が、軍政に資金面でコミットしていることが浮き彫りになった。NGOは、各金融機関は、企業が人権侵害に加担しないと定めた「OECD多国籍企業行動指針」や、「国連ビジネスと人権に関する指導原則」等に違反している、と警告している。https://rief-jp.org/ct7/114636?ctid=64

 

Banktrack002キャプチャ

 

 日本の産業界がこぞってミャンマー進出を展開してきた経緯を受け、日本の金融機関のコミットの大きさも、さらに明確になった。今回の19金融機関の中で、もっとも軍政関係企業へのファイナンスが多かったのはフランスのクレディ・アグリコル(アムンディを含む)の121億㌦。2位に三井住友トラスト(日興アセットマネジメントを含む)85億㌦、3位にMUFG63億㌦と、日本勢が上位に並んだ。みずほは11位の21億㌦。

 

 10億㌦以上の投融資を抱える他の金融機関は、Bank of America、JPMorgan Chase、Wells Fargo、Morgan Stanley Goldman Sachsの米銀。 仏銀はクレディアグリコルのほか、 Société Générale、BPCE Group、BNP Paribas。スイス銀がUBS、Credit Suisse、独銀がDeutsche Bank、DZ Bank、 カナダがRoyal Bank of Canada、Toronto-Dominion Bank、英銀がBarclays。主要先進国の金融機関がこぞって軍政関係企業、事業に群がってきたことがわかる。

 

名指しされた19金融機関(横軸)と18企業(縦軸)

名指しされた19金融機関(横軸)と18企業(縦軸)

 

 今回のNGOの調査は、各金融機関グループの主要銀行にとどまらず、傘下の資産運用機関の投融資状況も評価したとしている。たとえば、最も投融資額の多いクレディ・アグリコルは資産運用会社アムンディ株の70%を保有、傘下に置いている。三井住友トラストも日興アセットマネジメントの分が加算された格好だ。これらの資産運用会社はミャンマーでの開発事業へ投資している。

 

 ミャンマーでは、今年2月の軍事ク―データ以後も、軍政による民主派住民等への弾圧が続いている。これまでに900人以上が殺害されたり、拷問されたりして死亡した。山岳地帯の少数民族に対する無差別空爆等の攻撃も激化している。NGOらは、軍政によるミャンマー国民への人権弾圧・侵害は拡大し、組織化されており、 人権に対する明らかな犯罪行為だ、と強調している。

 

 今回の調査で軍政関係企業として名指しされた18企業の中には、日本企業を含め海外からの進出企業が多く並んでいる。NGOらは、問題企業は18企業だけではない、としたうえで、直接軍政とつながりを持つ企業(カテゴリー1)と、商業的つながりのある企業(カテゴリー2)に分けている。前者は8社で、軍部及び軍政関連企業との取引がある企業。軍部に軍事技術を提供しているBharat Electronicsが典型だ。日本のダイワハウス工業、東京建物もこのカテゴリ―に分類されている。NGOはこれらの企業に対して、直ちに軍政との取引停止を求めている。

 

 後者の10企業はミャンマーの公共機関等と商業取引関係にあった企業で、ク―データ後に、その事業や取引自体が軍政の管理下に置かれた形になっている。日本のKDDI、住友商事等が含まれる。NGOらはこれらの企業については、現在の契約を停止し、契約先の公的機関への支払い等を直ちに停止するよう求めている。既存契約先向けの支払い等については、民政が回復するまで、必要資金をエスクロー勘定(第三者預託口座)に預けるようことを求めている。

 

 NGOが指摘する金融機関の責任は、投資先企業との関係や、それらの企業の軍政との関係、軍政による人権侵害によって異なる。軍政と直接つながりのあるカテゴリー1企業に対しては、金融機関は直ちに資本関係を断ち、保有株をダイベスト(投資引き揚げ)するよう求めている。

 

 NGOらは、もし金融機関蛾そうした行動をとらないと、OECDガイドラインに基づけば、当該の銀行や金融機関は、単純に人権侵害につながりがある取引を抱えているとみなされる段階を超え、自ら人権侵害に「コミットしている」とみなされる、と警告している。カテゴリー2の企業に対しては、金融機関は当該企業が軍政との関係を解除するようエンゲージメントするよう求めている。もし企業がそうした行動をとらない場合は、金融機関はこれらの企業にもダイベストメントをするべきとしている。

 

 7月19日時点での軍政によって殺害された人は919人、拘束・投獄されている人は5293人に達している。

https://www.banktrack.org/download/investing_in_the_military_cartel_19_international_banks_invest_over_us65_billion_in_companies_linked_to_myanmar_regime_and_atrocities/210726_final_investing_in_the_military_cartel_updated_report.pdf