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環境NGOのグリーンピース。設立から15日で50周年。GP Internationalの事務局長、ジェニファー・モーガンさんは歴戦のNGO。米国の核実験阻止が発端。今「気候変動の緊急事態に直面」(RIEF)。

2021-09-15 16:43:48

Greenpeace001キャプチャ

 

  環境NGOのグリーンピースが15日で、誕生から50周年を迎えた。グリーンピース・インターナショナル(Greenpeace International)を率いる事務局長のジェニファー・モーガン(Jennifer Morgan)さんは「50年の節目を華やかに祝うことはない。私たちは気候変動の緊急事態に直面している」と、危機感を強調している。

 

 グリーンピースは1971年、カナダの環境活動家らが、米国が計画していたアリューシャン列島アムチトカ島での地下核実験を阻止行動だった。同島沖合の公海に船を停泊させて監視しようと、底引き網漁船をチャーターしてバンクーバーを船出したのが、50年前の9月15日だった。

 

 同船は「グリーンピース1号」と名付けられた。船は目的地までたどり着けなかったが、世界各地で広がった反対の声を受けて、米政府は同地での核実験を中止した。

 

Greenpeacec002キャプチャ

 

 その後、組織化されたグリーンピースは、商業捕鯨の阻止、化石燃料企業への抗議、原発反対、有害廃棄物の投棄阻止、南極大陸の保護活動などをグローバルに展開してきた。日本でも東京電力福島第一原発事故後、放射性物質汚染調査に取り組み、今も独自に継続している。

 

 現在、世界に26の地域・国別グリーンピースがあり、55カ国をカバーする。メンバーとして活動する人はスタッフはグローバルに3500人以上。サポーターは330万人とされる。グリーンピース・インターナショナル(本拠、オランダ・アムステルダム)はこれらの各組織を束ねる存在だ。

 

 その軸になっているモーガンさんは2016年から事務局長のポストにある。米国出身で、これまで世界資源研究所(WRI)のグローバルディレクター、Third Generation Environmentalism (E3G)、世界自然保全基金(WWF)、米気候行動ネットワーク(CAN)、 欧州ビジネス協会等を歴任している。グローバルNGO業界のプロなのだ。

 

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 WRI時代は、国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)のWRI代表を務めて交渉に参画してきたほか、WWF時代は日本で開いたCOP3の京都議定書交渉にも加わった。また、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次レポートの評価者にも名を連ねている。

 

 しかし、歴戦のモーガンさんのコメントは、憂いに満ちている。「最初のグリーンピース号の船出以来、50年の節目を迎えたが、生物多様性の損失は加速し、気候緊急事態は深くなり、人々の間の不平等性は拡大している」と指摘する。

 

 「過去50年を通じて、多くのキャンペーンを展開し、グリーンで、平和的で、公正な未来を求める多くの勝利(成果)を勝ち得てきた。しかし、とても十分ではない。われわれは、利益や汚染の前に人々や地球を尊重するシステム転換のためのグローバル活動を続けていかねばならない」

 

初期のグリーンピースのメンバーたち。Rex Weyler氏の記事から
初期のグリーンピースのメンバーたち。Rex Weyler氏の記事から

 

 目下の最大の関心事は11月に開催予定のCOP26。コロナ禍の影響もあり、各国の対応は十分に進んでいないとされる。「この50年間に私たちが行ってきたことのすべてを今こそ結集して、真に先鋭的で根本的な変化を起こすために使わねばならない。時間はもうあまりないのだから」

 

 50年の間にはいくつかの事件も起きている。1985年、ニュージーランドのオークランドに停泊していたグリーンピースの活動船「虹の戦士(Rainbow Warrior)」号がフランス情報機関の工作員によって爆破され、ポルトガル人写真家のフェルナンド・ペレイラ氏が死亡する事件が起きた。フランスによる国家犯罪だった。

 

 日本との関係では、2008年に日本の調査捕鯨船「日新丸」の乗組員が捕獲した鯨肉を大量に自宅へ送付していた問題が浮上。関連して同送付品を摘発したグリーンピースのメンバーへの告発事件が起きている。日本の「国策化」した捕鯨利権構造を国際的なスポットライトで照らした。

 

 最近は、気候変動の激化、自然破壊の進展等で、世界中で多くの環境NGOが新たに名乗りをあげている。その一つ、英国に登場した「Extinction Rebellion(絶滅への反逆)」は非暴力ながら、都市封鎖等の共同行動で先鋭的なアピールを展開する。先日は、英WWFの本拠地を占拠する騒ぎも起こしている。https://rief-jp.org/ct7/117553

 

 かつてのグリーンピースの「先鋭性」を超える動きだ。50年を経たグリーンピースは、企業や政府への直接行動でのアピールよりも、気候訴訟等や、日本での福島放射線汚染調査のような科学的データに基づく行動等に、力を入れているようにもみえる。

 

 「グリーンピースの次の50年には何が待っているのか」とのメディアの質問に対して、モーガンさんは「目標はグリーンピースが存在しなくなること」と回答した。環境・社会課題の解決によって、政府にも企業にも、反対しなくていい社会が来ることだが、その実現の日は定かでない。

 

https://docs.google.com/document/d/1of29-vjEvrsgfezPE6tWLy0DW2xS774d6eFZuF_58oU/edit

https://www.greenpeace.org/international/press-release/49498/greenpeace-50th-anniversary-statement-media-resources/