シェルへの「気候責任」訴訟で勝利したオランダの市民団体等、金融機関を含む主要企業に「2030年までにScope3含むGHG45%削減」を求める公開書簡。回答不十分だと新たに訴訟へ（RIEF）
2022-01-14 11:03:13
エネルギー産業の気候変動責任を明確にした昨年5月のオランダでのロイヤル・ダッチ・シェル訴訟の原告団であるオランダの環境NGOや市民団体が、シェル以外の金融機関を含む他の企業29社に対して「気候変動責任」を問う公開書簡を送付した。NGOらは書簡で各機関に対して、2030年までにScope3を含めた温室効果ガス（GHG）排出量を現状より45%削減する公約を求め、公約を拒否する機関は訴訟の対象にするとしている。
（写真は、公開書簡をアピールするMilieudefensieの担当者ら）
書簡を送付したのはオランダの市民団体MilieudefensieとNGOのFriends of the Earthオランダ支部。両機関や個人の市民等は、石油メジャーのシェルの気候対策の不十分さとそれに基づく人権侵害を訴訟で争ってきた。それに対してオランダ・ハーグ地裁は昨年5月、シェルに対してグローバルベースでの温室効果ガス排出量を2030年までに45%（2019年比）削減することを命じる判決を下した。シェルは控訴している。https://rief-jp.org/ct4/114551?ctid=72
今回、Milieudefensie等はシェル以外の企業、金融機関のうち、「2050年ネットゼロ」を明確にした経営方針を打ち出していない大手企業を選んで書簡を送付した。書簡で要求する公約は、裁判所がシェルに対する判決で認めたのと同様の「2030年までの45%削減」へのコミットメント。
書簡に対する回答は4月15日までに返信することを求めている。回答内容については、ドイツのシンクタンクのNew Climate Instituteが評価してランク付けし、公表するとしている。NGOらは回答結果を踏まえて、回答内容が不十分な企業・金融機関のうち代表的な機関を対象に、新たな訴訟を提起するとしている。
書簡の送付先に金融機関を含めた点について、Milieudefensieの政策担当者のPeer de Rijk氏は、「金融機関は低炭素経済へのトランジション（移行）におけるキープレイヤーとみている。他の国からも気候変動責任を負う企業・金融機関に対する訴訟提起の支援や情報提供を求める要請が多数届いている」としている。
オランダでは昨年10月、年金基金のABPがNGOのFussielvrij の圧力もあって、保有資産に占める石油、ガス、石炭等の化石燃料関連企業向けの株等を引き揚げる（Divest）に踏み切ると宣言している。ABPがダイベスト対象とする資産額は150億ユーロで、同機関の全保有資産の約3%に相当する。Milieudefensieらは、金融機関が投融資活動で気候変動責任を主導的に発揮することを求め、引き続き主要金融機関等に圧力を加えていく方針としている。
書簡を送付された同国の金融機関は、ABN Amro、ABP、ING Group、NN Group、Rabobank、Stichting Pensioenfonds Zorg en Welzijn （PFZW）の各機関。
De Rijk 氏は「我々は、回答が不十分な企業すべてを訴訟の対象にするわけにはいかない。代表的なところに絞る。しかし、われわれが期待していることは、訴訟で争うことではなく、対象企業が自らの決断で気候変動責任を果たすことであり、われわれはその決断を後押しすることが目的だ」と述べている。
日本でも炭素集約型企業等の「気候変動責任」を問う市民訴訟が提起される可能性もある。
書簡送付先の全企業は次の通り。
ABN AMRO • ABP • Aegon • Ahold Delhaize • AkzoNobel • Atradius • BAM Group • Boskalis Westminster • BP • Dow • DSM • ExxonMobil • FrieslandCampina • ING • KLM • LyondellBasell • NN Group • PfZW • Rabobank • RWE • Schiphol • Shell* • Stellantis • Tata Steel • Unilever • Uniper • Vion • Vitol • Vopak • Yara
https://milieudefensie.nl/actueel/foe-letter-to-ceos-13-january-2022-1.pdf
Research Institute for Environmental Finance