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元気候ネットワーク(KIKO)の平田仁子さん。新たに気候NGOの「クライメート・インテグレート」を設立。「統合的アプローチ」を強みに(RIEF)

2022-03-05 00:11:34

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 環境NGOの気候ネットワーク(KIKO)で長年活動し、このほど独立した平田仁子(きみこ)さんが、新しいNGOを立ち上げた。名称は「クライメート・インテグレート(Climate Integrate : CI)」。「気候を保護するために」を掲げ、政策と行動、調査分析とエンゲージメントとコミュニケ―ションを、科学と政治と社会を、それぞれつなぐ「統合的なアプローチ」で、脱炭素の取り組みを推進することを目指すという。

 

 平田さんが自身で立ち上げたCIは、現在、平田さんの趣旨に賛同するスタッフを募集中。科学的な視点での研究を踏まえた政策提言と、国内外でのエンゲージメント行動をつなぎ合わせることを目標に置いており、日本のNGO活動のある種の「脱皮」を目指す展望を見据えているようだ。

 

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 米欧の大手NGO等には、科学的な研究分析力を備え、同時に行動力も備えているところが少なくない。その結果、政府の政策立案に関与し、企業の経営戦略にコミットし、企業とともに問題解決を探る動きもとる。日本にも国際的なNGOの日本支部や、KIKOのような市民目線の独立系NGOもそれぞれ実績をあげている。だが、米欧のNGOのような「統合力」を発揮できるケースは残念ながら少ない。そこで、平田さんは、それらを超え、米欧NGOのような存在を目指しているようにもみえる。

 

 その点は、平田さん自身がこれまでの活動からもうかがえる。平田さんは、米国の環境団体での経験を経て、KIKOでの20年を超える活動では数度に及ぶ国連気候変動枠組み条約(COP)交渉や、各地の石炭火力発電所の建設計画の見直し等に取り組んできた。そうした活動の集大成の様な形で、2020年には、石炭火力向け投融資額が最も多い、みずほフィナンシャルグループに対して、NGOによる初の株主提案を主導した。

 

 その行動力について「2021年ゴールドマン環境賞を受賞(日本人3人目、女性初)」が授与され、同賞に先立つ形で、環境金融研究機構(RIEF)のサステナブルファイナンス大賞のNGO/NPO賞も受けている。これまでの活動の一つの着地点を得たうえで、新たなスタートを切ろうというのが今回の行動のようだ。単に既存の団体からスピンオフするだけではなく、平田さんはその間に、大学院での研究成果を結実させて博士号を取得。行動力と研究力を自ら統合させている。

 

 新団体を支援する理事等に加えて、これまでのNGO活動で培った海外の大物からのバックアップも受けている。それがアドバイザーに就任したドイツの独立系シンクタンクのlimate Analyticsの創業者で、国連IPCCのリードオーサーも務めたビル・ヘア氏、米Climate Leadership Initiative(CLI)の事務局長のアシーナ・ロンキロ=バレステロスさんだ。

 

 平田さんは「現在、スタッフの募集を進めています。思っていた以上に多くの応募があり、関心の高さを感じています。初期のスタッフがそろったら本格的にスタートしたい」と静かに意気込んでいる。

https://climateintegrate.org/