HOME |グローバルな環境NGOら75団体、日米欧の主要52金融機関に対し、ロシアの化石燃料企業と、ロシアで同事業を展開する西側エネルギー企業への投融資、保険付与停止を求める共同声明(RIEF) |

グローバルな環境NGOら75団体、日米欧の主要52金融機関に対し、ロシアの化石燃料企業と、ロシアで同事業を展開する西側エネルギー企業への投融資、保険付与停止を求める共同声明(RIEF)

2022-03-06 01:03:25

putinキャプチャ

  シェラクラブやグリーンピース等の国際的な環境NGO等、75団体以上は、日米欧を中心とした金融機関52機関を名指しし、ロシアの石油・ガス・石炭関連企業と、ロシアでのエネルギー事業に深く関与する西側企業を含む約80社に対する投融資、保険の付与を停止するよう求める緊急声明を送付した。NGOらはこれら金融機関が「ロシアに加担している」との意味で「Putin 100」のラベルを付与する考えだ。関与の深い西側企業には、仏トタルエナジー、独ユニパー、日本の三井物産、三菱商事らが投融資からの「除外リスト」に含まれている。

 名指しされた金融機関の中には、日本の三菱UFJフィナンシャル・グループ等の3メガバンクと、東京日動ホールディングスの4機関が含まれる。主要な金融機関には、米ブラックロック、ゴールドマンサックス、JPモルガンチェース、シティ、独ドイツ銀行、英ロイズ保険、ミュンヘン再保険、仏クレディ・アグリコル等が並ぶ。環境NGOらは、要請対象の金融機関数をさらに増やして100機関とし、「Putin 100」のラベルを貼る。

 緊急声明は、南アフリカのアパルトヘイト運動に尽力し、昨年末に亡くなったデズモンド・ツツ元大司教が生前に述べた有名な言葉を引用している。「不正義に直面した際、中立を装うことは、侵略者の側を選ぶのと同じだ」というものだ。金融機関に対して、「これらのロシア企業への支援を維持することは、ロシアのウクライナに対する侵略を直接的に支援する罪を犯すことと同じだ」とした。

 ロシアの化石燃料産業に照準を合わせているのは、ウクライナ侵攻を展開しているプーチン政権の資金源が石油・ガス・石炭等の化石燃料産業にあるとの分析による。NGOらによると、化石燃料産業はロシアの輸出の60%を占め、財政収入の約40%にも及んでいる。石油・ガス等の輸出収入によりロシアの外貨準備は4700億㌦に積みあがっているとしている。

 投融資の引き揚げや保険付与の停止対象とする「除外リスト」には、独NGOのUrgwaldがリスト化したGlobal Coal Exit Listに掲載されるロシアのRussina Coal JSC等の石炭関連企業41社、ルクオイル、ガスプロム、ノバテク等の石油・ガス開発大手16社、西側企業では、ロシアでの石炭事業に関与するフィンランドのFortum Oyjら3社、ロシアでの石油・ガス事業に関与するBP、エクソン・モービル、シェル等の20社をあげている。

 ロシアでの石油・ガス開発事業者のリストには、日本の三井物産と、三菱商事も含まれている。またBP、シェル、エクソンの3社はすでにロシアでの天然ガス事業からの撤退を公表していることから、その旨の注意書きが付されている。

 ロシアのウクライナ侵攻を受けてのこれまでの金融機関の対応としては、ノルウェーのソブリンウェルスファンドがロシア企業を投融資対象から除外する方針を打ち出した。また同じノルウェーの大手年金等のストアブランド(Storebrand)グループや、英国の投資顧問のアバディーン(Abrdn)等が「戦争は人権侵害」として、ESG上の理由から対ロ投資の引き揚げを宣言している。https://rief-jp.org/ct6/122948?ctid=66

https://rief-jp.org/ct6/122933?ctid=66

 ただ、こうした宣言をした金融機関は限られている。Morningstarによると、ESGを掲げる金融機関の投資ファンドの14%はロシア企業を投資対象に組み込んでいると指摘している。

 エネルギー会社では、BP、シェル、エクソンが天然ガス開発事業からの撤退を打ち出した一方で、仏トタルは新規の投資は見送るとしたものの、ロシアの北極圏で大規模に展開する石油・ガス開発事業の継続に固執するなど、足並みにはバラつきがある。日本企業が関与するサハリン開発でも、シェル、エクソンが迅速に撤退を打ち出した一方で、合弁事業を組んできた日本の商社や日本政府は判断を保留する状態に陥っている。https://rief-jp.org/ct10/122944?ctid=72 https://rief-jp.org/ct5/122959?ctid=72

 ツツ大司教の指摘によれば、明確な判断をしない場合も、「迫害側(ロシア)」に利する立場をとっていると見なされる。

  ウクライナの気候活動家のSvitlana Romanko氏は「ウクライナで戦争が続く中、金融機関とエネルギー企業の事業継続は、ロシアの石油・ガス・石炭企業を支援することになっている。このことは、プーチンの侵略を手助けしていることにほかならない。われわれは、西側諸国の政府と企業、金融機関に対して、ロシアとのすべての化石燃料の貿易と輸出を停止し、投融資を引き揚げることを求める。世界が化石燃料に過度に依存してきたことが、世界中で紛争を生み出している。われわれはそこから脱しなければならない」と訴えている。

  「Insure our Future」のキャンペーン・コーディネーターのPeter Bosshard氏は「『Putin 100』の国際金融機関、投資家、保険会社は、長年にわたってロシアの化石燃料産業の資金源となってきた。仮に石油メジャーがロシアでの保有資産を一夜にして償却するとなると、金融機関は大きな損失を被る。従って金融機関は直ちに、ロシアだけでなく化石燃料産業全体への投融資・保険付与を引き揚げるべきだ」としている。

https://reclaimfinance.org/site/wp-content/uploads/2022/03/LetterFinancialInstitutionsStopSupportFossilFuelRussia03032022.pdf

https://reclaimfinance.org/site/en/2022/03/04/finance-sector-has-moral-imperative-to-exclude-russian-fossil-fuel-firms/