HOME10.電力・エネルギー |豪環境NGOと国内NGOら5団体、アジアでガス火力事業に取り組む三菱商事、三井住友FG、東京電力(JERA株主)、中部電力(同)の4社に、気候対策強化の株主提案(RIEF、更新) |

豪環境NGOと国内NGOら5団体、アジアでガス火力事業に取り組む三菱商事、三井住友FG、東京電力(JERA株主)、中部電力(同)の4社に、気候対策強化の株主提案(RIEF、更新)

2022-04-12 23:40:08

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  オーストラリアのマーケット・フォース(Market Forces : MF)と、国内の気候ネットワーク(KIKO)、350.org Japan等の環境NGOは11日、三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)、三菱商事、東京電力ホールディングス、中部電力の4社に対して、気候変動対応の強化を求める株主提案を出した。各社がアジア各地で計画するLNGによるガス火力発電事業が、パリ協定が目指す「1.5℃目標」の達成に反するとし、気候対策の修正を求める。MFは昨年も三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)と住友商事に対し、気候政策の改善で株主提案をしている。

 

 (写真は、昨年の株主総会で、MUFGに対してMFらのNGOが株主提案をした際の総会当日の会場周辺での模様)

 

 株主提案をしたのは、MF、KIKO、350.org Japanのほか、レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)、FoE Japanの5団体。提案の提出先は、SMBCと三菱商事、それにJERAの株主である東京電力と中部電力。

 

  各企業(東電設計: 東京電力のグループ会社を含む)は、バングラデシュ、ベトナム、タイで合計10件(計1780万kW)のガス火力発電事業に関与している。これらの発電所からのライフサイクル排出量は、12億㌧(CO2換算)と試算される。NGOらは「この数字は、日本の2030年までの温室効果ガス排出削減目標のほぼ2倍に相当する。パリ協定と整合しないことは明らか」と指摘している。

 

 対象となった各社は、それぞれ「ネットゼロ」宣言や、環境関連方針を表明している。その一方で、今回のアジアでのガス火力事業のように、国内外で化石燃料事業への関与を継続していることから、明確な言行不一致、あるいは「グリーンウォッシュ政策」を展開しているといえる。

 

 NGOらによると、国連等は、パリ協定の1.5℃目標を達成するには、2020年から2030年の間に、世界の石油生産量を年4%、ガスは年3%ずつ減少させねばならないと指摘している。国際エネルギー機関(IEA)が示す「Net Zero by 2050(2050年ネットゼロ報告書)」では、新規の火力発電等の化石燃料事業への投資はネットゼロシナリオに整合しないとして、低炭素ソリューションに投資していく必要性を求めている。今回の日本4社のアジアでのガス火力投資はこうした国際的な知見にも反する取り組みになっている。

 

 こうしたことからNGOらは、各社に対して、ガス火力事業そのものの見直しを求めて、株主提案を実施したとみられる。

 

 ガス火力事業へ資金を供給するSMBCに対しては、国際的な主要金融機関は、投融資資産が抱えるCO2排出量を把握し、管理・削減をする「financed emission」がグローバルに求められていることから、パリ協定の目標達成に準拠する短期(5年以下)と中期(10年以下)のfinanced emissionの削減目標の開示を求める。

 

 環境NGOから気候対策の強化を求める株主提案を受けた国内企業は、2020年に、KIKOがみずほフィナンシャルグループに対して初めて提案したことをきっかけに、昨年は、MFやKIKO等がMUFGを対象に実施している。今回のSMBCを含む4社への提案で、国内の3メガバンクがすべて気候株主提案の対象になることになる。https://rief-jp.org/ct7/115691

 

 こうしたNGOの株主提案活動に対して、環境金融研究機構(RIEF)は、「ステークホルダーとしてのNGO」が他の株主に企業活動の転換についての賛同を求めるアプローチとして評価。2020年のサステナブルファイナンス大賞ではNGO/NPO賞としてKIKOを、21年にはMFを、それぞれ選定した。https://rief-jp.org/ct7/123021

 

 今回のMFの株主提案の特徴は、ガス火力事業の事業者(三菱商事)、設備建設事業者(JERA)、金融機関(SMBC)と、事業を構成する主要関係企業をまとめて株主提案の対象にする点だ。各社とも、「2050年ネットゼロ」宣言をする一方で、足元ではCO2排出量増加につながる事業を展開するという「矛盾」を抱えている。各社の株主にとって、新規のガス火力事業の展開は、各社の「座礁資産」増大につながる懸念となる点を強調するとみられる。

 

 環境NGOによる金融機関や炭素集約型企業への気候政策の転換を求める株主提案は、欧米では拡大・定着している。「Climate Action 100+」は、昨年中に提出された株主提案のうち、49件の気候変動に関連する株主提案が「歴史的成功」を収めたと評価している。エクソンモービルの取締役会で3人の気候変動への関心が高い取締役が新たに選出された決議も含まれる。

 

(この記事は、2022年4月13日午前11時58分に更新しました)

 

https://world.350.org/ja/press-release/20220413/

 https://www.marketforces.org.au/category/shareholder-action/

https://www.marketforces.org.au/campaigns/banks/