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内外の環境NGOが、東アフリカ石油パイプライン(EACOP)計画に参画している三井住友銀行に対して、事業からの撤退を求める3万3000強の署名を踏まえ、請願書提出(RIEF)

2022-11-07 18:22:21

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 東アフリカのウガンダとタンザニアを結ぶ全長1410kmに及ぶ石油パイプラインの建設計画(EACOP)に日本から参画している三井住友銀行に対して、環境NGOが、同事業への参加を止めるよう請願書を提出した。請願には内外の団体約3万3000件の賛同の署名も付与されている。NGOらは、同事業は、パイプライン敷設のために多くの住民を強制疎開させ、周辺の自然破壊も増大させる等の大きな課題を抱えている、としている。

 

 EACOP事業は、石油を産出するウガンダから、積出港があるタンザニアまで総延長1410kmを結ぶ石油パイプラインを建設する計画だ。仏エネルギー大手のTotalが中心となり、エネルギー確保を目指す中国の中国海洋石油集団有限公司(CNOOC)、タンザニアの石油開発公社等が共同で開発を進めている。https://rief-jp.org/ct1/126044

 

 しかし、パイプラインは両国の多くの人々が飲料水として頼るビクトリア湖に沿って建設するため、汚染懸念が指摘されている。事業からのCO2排出量も年間3300万㌧の増大につながるとされ、パイプライン敷設に伴う住民の強制疎開、自然破壊も問題視されている。さらに、産出される石油の多くは、海外に輸出され地元経済での利用は限られる。

 

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 三井住友銀行は、同事業を主導するTotalの財務アドバイザーであり、30億㌦におよぶプロジェクトファイナンスの共同幹事行でもある。しかし、NGOらによれば、すでに同事業に対しては、世界の数十に上る金融機関・保険会社等が「EACOPを支援しない」とダイベストメント(投資撤退)方針を表明しているとしている。これに対して三井住友フィナンシャルグループ(SMB)は今年の株主総会で、グループCEOの太田純氏が「財務アドバイザーとして、EACOPにおかしなことがあれば正していく」と発言したという。

 

 NGOらは三井住友銀行への請願書で、「世界が気候危機に突入しようとする中、このパイプラインによって輸送される原油が実際に消費された場合、期待する経済利益をはるかにしのぐ、甚大な影響が気候にもたらされることになるだろう。地球にはもう、この種の大規模石油インフラを新設するための炭素予算など残されていない」と指摘している。

 

 また、EACOPで輸送される原油のほとんどは輸出されるため、地元住民に直接恩恵をもたらすことはないとされる。NGOらは「(地元に)富をもたらすどころか、アフリカにおける原油採取は、往々にして、資源の豊富さとは対照的に、もはや解決し得ない極度の貧困に陥ってしまう」として、「資源の呪い」現象に陥るリスクをあげている。

 

 請願書では、こうした懸念を示し、三井住友銀行とともに、同事業に融資を目指しているスタンダードチャータード銀行、スタンビック銀行の3行に対して事業からの撤退を求めている。また、日本の3メガバンクのうち、三菱UFJ銀行も、EACOPを支援するシンジケートに加わる可能性を否定していないという。一方で、みずほ銀行は、「環境・社会課題が円満に解決しない限り、EACOPへの支援はしない」と表明し、同事業から距離を置いているとされる。

 

 環境NGO 350.org Japanの広報・政策提言担当の伊与田昌慶氏は「日本を含む先進国政府が排出削減対策と途上国支援の野心を引き上げることが、開幕したCOP27の焦点だ。日本政府が進めるアンモニア・水素混焼、次世代原子力、CCUS(炭素回収利用貯留)事業等は、2030年までの大幅な脱炭素に間に合わない『まやかしの解決策(false solution)』。政府の対応と並んで重要なのが、民間の企業・金融機関の行動だ。EACOPで排出削減が議論される裏で、日本の金融機関がアフリカの化石燃料開発を後押しすることがあってはならない」と強調している。

 

【プレスリリース】COP27エジプト会議に向けて世界の市民が「脱化石」を求める:アフリカの化石燃料事業の支援中止を求め、三井住友銀行に3万3417筆の署名を提出 | 国際環境NGO 350 Japan