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環境NGOの三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)等4社への4月の気候関連株主提案への資産運用機関の対応。みずほ系が積極的に賛同。SMBC系もグループへの提案に一部賛同(RIEF)

2022-11-21 08:47:26

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 今年4月に、国内外の環境NGOが、気候変動対策の強化を求めて、三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)等のほか、三菱商事、JERAの株主(東京電力ホールディングスと中部電力)への株主提案に対して、内外の主要な機関投資家や資産運用機関の対応調査が公表された。それによると、SMBCへの2つの提案のうち「ネットゼロ排出シナリオと⼀貫性ある貸付等」の提案には、国内の運用受託機関の賛同はゼロだったが、海外機関投資家は独アリアンツ等が賛同。「パリ協定と整合する短期・中期目標を含む事業計画策定」に対しては、SMBC系の運用会社を含む国内5社が賛同したことがわかった。

 

 (写真は、4月にSMBCの本社前で、株主提案をアピールする環境NOGの350.org Japanのメンバーたち)

 

 4社に対する株主提案は、環境NGOの気候ネットワーク、350.org Japan、FOE Japan、レインフォレストアクション・ネットワーク(RAN)がそれぞれNGOあるいは個人として共同で提起していた。株主提案に対する議決権行使結果では、賛同票は、SMBCに対する「ネットゼロ貸付」(15%)以外は、総じて30%前後の賛同率で、最も多かったのは中部電力に対する提案(39%)だった。

 

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 環境NGOらがSMBCに提案した2つの議案のうち、「パリ協定と整合する目標設定と事業計画策定」に賛同したのは、三井住友DSアセットマネジメント。同社はSMBCのグループ会社だが、前身は三井生命、住友生命、三井住友海上等の保険会社系や、さくら投信投資顧問、大和住銀投信投資顧問等が統合して現在に至っている。

 

 同社がNGO提案のSMBCへの株主提案に賛同したのは、グループ内で「反旗」を翻したわけではなく、ESG運用を重視する資産運用会社としてのポリシーに基づくとみられる。NGOが公表する国内運用受託会社の議決権行使結果の調査結果でも、13機関中、同社を含め5社が賛同している。4社への提案中、最も賛同数が多い提案だった。

 

 運用機関別の賛同状況では、国内勢では東京海上アセットマネジメント、野村アセットマネジメント、日興アセットマネジメント、三菱UFJ信託銀行等は、4社への提案すべてに反対票を投じた。一方で、みずほフィナンシャル・グループ系のアセットマネジメントOneとみずほ信託銀行は、SMBCへの「ネットゼロ貸付」以外の4社への提案すべてに賛同した。また、ニッセイアセットマネジメントと農林中金全共連アセットマネジメントは、東京電力と中部電力への提案には賛同した。

 

 これらの国内運用会社のグループ別の賛否状況からは、総じて、SMBC、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、三井住友トラスト・ホールディングスグループの各系統の運用会社には、ESG重視の方針を打ち出しているところもあるものの、4社へのESG提案の大半に反対した。これに対して、みずほ系はNGOの提案でもESG要因を高める提案には積極的に賛同する方針であることが伺える。

 

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 海外運用会社は国内勢との比較で、NGOの提案への賛同数が多い。特に独アリアンツ・グローバル・インベスターズ、英リーガル・アンド・ジェネラル・インベストメント・マネジメント、UBS Asset Managementの3機関は、4社に対するすべての提案に賛同した。アムンディ・ジャパン、マニュライフ・インベストメント・マネジメント、ピクテ・アセットマネジメントの3機関も、SMBCへの「ネットゼロ貸付」以外はすべて賛同した。

 

 対照的に、米系大手のブラックロックとバンガードグループはともに、すべての提案に反対した。また議決権行使助言会社では、ISSがSMBCの「ネットゼロ貸付」以外は賛同したのに対して、Glass Lewisは東電と中部電力への提案にだけ賛同した。

 

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 NGOらは、議案に対する賛成率の分析から、パリ協定と整合する経営戦略の策定・開示を求める提案には、投資家からの賛成が得られやすい傾向があると指摘。さらに、企業の事業戦略(ビジネスモデル)の根本にも影響するネットゼロに向けた移行を求める提案にも、10~20%程度の支持が得られたことは注目に値する、としている。

 

 そのうえで、国内外の機関投資家の多くは、2050年ネットゼロを目指す資産運用会社の国際的枠組みである「ネット・ゼロ・アセット・マネージャーズ・イニシアティブ(NZAMI)」に署名している点を重視している。NZAMIのコミットメントの達成は投資先企業の行動に大きく依存するため、機関投資家や運用受託機関は投資先企業に対し脱炭素化に向けた取り組みの強化・加速化を促していく必要がある、と指摘している。

https://www.kikonet.org/info/press-release/2022-11-08/2022-proxy-voting-report

https://www.kikonet.org/info/press-release/2022-04-13/Shareholder-proposals-2022

https://www.kikonet.org/wp/wp-content/uploads/2022/11/Proxy-voting-result-2022.pdf