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日本の温室効果ガス多排出のJERA等の主要企業10社。掲げる「ネットゼロ目標」と対策合致せず。5段階評価で下から2番目の「低い」評価。気候NGO「Climate Integrate」分析(RIEF)

2023-05-09 15:28:08

CI001キャプチャ

 

  気候NGOのClimate Integrateは、日本で温室効果ガス(GHG)排出量の多いJERAや日本製鉄等の主要10社を対象として、これらの企業が掲げる「カーボンニュートラル」の目標や対策の妥当性を、透明性(transparency)、環境統合性(integrity)の観点から分析した結果を公表した。分析結果によると、①10社全ての環境統合性は5段階評価で下から2番目の「低い」に分類②排出量の開示が不十分であり、気候変動への取組に対する第三者評価が限定的③10社の2030年目標および2050年ネットゼロ目標は、1.5℃目標達成に必要な野心にほど遠い――等がわかった。

 

 評価の対象とした企業は、日本のGHG多排出部門の主要企業で、JERA、J-POWER (電力)、 日本製鉄、JFE (鉄鋼)、 ENEOS (石油・ガス)、太平洋セメント (セメント)、三菱ケミカル (化学)、ANA (輸送サービス)、王子 (製紙・林業)、トヨタ(輸送機器製造)の10社。

 

 10社の2020年度の温室効果ガス(GHG)排出量(スコープ1~2)は、同年度の国内の全排出量の36%(4億1414万tCO2)に相当する。分析はドイツの気候シンクタンク「NewClimate Institute」が開発した分析・評価手法を用いて、対象各社の気候目標や対策の透明性(transparency)と環境統合性(integrity)*を明らかにし、企業のオフセット計画の信頼性の精査を目的とした。

 

 評価項目は、各社の①排出量の把握と開示②排出削減目標の設定③排出削減対策④気候変動対策への貢献やオフセットを通じた責任の4項目。

 

 分析結果で共通するのは、各社が公表する排出削減コミットメントは、1.5℃目標に整合した脱炭素経路に沿うには不十分であり、目標、対策、オフセット計画が曖昧、排出量の対象範囲(スコープ)に関する詳細な情報がないこと等。掲げたネットゼロ目標と、それを実現するための対策が明確に乖離し、「宣言した目標が著しく損なわれていることがわかった」としている。主要10社の「言行不一致」の行動は、「日本の国全体のネットゼロ目標の達成を危うくする」と指摘している。

 

 また6月にも正式に決定する国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の気候情報開示基準では、自社だけでなく、サプライチェーンを含むScope~3の開示が原則となるが、日本の主要10社の開示状況は「すべてのグループ会社の排出量データを包括的に開示している企業は 一社もない。多くの連結子会社の排出量やスコープ3の下流の排出量をカバーできておらず、気候目標の基準年のサプライチェーン全体の排出量を開示していない企業も多い」との実態が浮かび上がったとしている。

 

日本の主要企業10社の温室効果ガス対策の評価分類(Climate Integrate)
日本の主要企業10社の温室効果ガス対策の評価分類(Climate Integrate)

 

 

 全体の評価結果の概要については、以下の点をあげている。

 

▼対象10社全ての環境統合性は「低い」(5段階評価で下から2番目)に属する。

▼排出量の開示が不十分であり、気候変動への取組に対する第三者評価が制限されている。

▼10社の2030年目標および2050年ネットゼロ目標は、1.5℃目標達成に必要な野心にほど遠い。

▼対象企業の対策は、地球温暖化を1.5℃に抑えるために必要な変革を起こすには不十分である。

▼供給側、需要側ともに再生可能エネルギーへの移行が遅れている。

▼オフセット計画の信憑性が問われている。

▼2030年に向けた重要な10年で、企業対策の可能性を引き出すためには、不十分な気候目標への対処が直ちに必要である。

▼対象企業の対策は、地球温暖化を1.5℃に抑えるために必要な変革を起こすには不十分である。

▼供給側、需要側ともに再生可能エネルギーへの移行が遅れている。

 

 分析を担当したCIのプログラム・ディレクター、小俵大明氏は「日本では多くの企業が、2050年のネットゼロやカーボンニュートラルを宣言しているが、今回の調査結果により、主要企業の気候目標や気候変動対策のほぼ全てが、国際機関等が示す、パリ協定の1.5℃目標や2050年の世界全体ネットゼロと整合する指標を明確に下回っていることが明らかになった。企業は、科学に基づく目標を設定し、早急に気候変動対策を進める必要がある」と述べている。

 

ネットゼロを評価する:日本企業10社の気候目標レビュー | Climate Integrate

Assessing-Net-Zero-JP.pdf (climateintegrate.org)