企業、市民団体等による「気候変動イニシアティブ(JCI)」。「1.5℃目標と整合する野心的な2035年目標設定」を日本政府に求める声明公表。GHGs削減66%以上、化石燃料からの早期脱却も。日本の代表的企業等153社も実名で賛同(RIEF)
2024-07-08 17:38:34
気候変動対策の促進を求める企業や市民団体等で構成する「気候変動イニシアティブ(JCI)」は8日、「1.5℃目標と整合する野心的な2035年目標を日本政府に求める」とする声明を公表した。今年11月に開かれる国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)に向け、日本の「国が定める気候貢献(NDC)」の2035年温室効果ガス(GHG)削減目標を「66%以上」とし、それを実現するため第7次エネルギー基本計画では、エネルギー効率改善と再エネ導入加速で、化石燃料からの早期脱却を実現することを求めている。
JCIの声明には、216団体(企業153、自治体5、大学・研究機関6、団体・NGO等52)が賛同している。賛同企業には、リコー、ソニーグループ、キリンホールディングス、パナソニックホールディングス、花王、積水化学工業、NTTデータグループなどの東証プライム上場企業71社を含め、IT、機械、鉄鋼、電子・電気機器、製薬、通信、運輸、食品、小売、住宅・建築、土木、金融など広範な分野で、日本を代表する多数の企業が含まれている。
JCIは、日本の大手企業等を含めて、216の非政府アクター・団体が、自らの名称を明らかにした上で、「2035年」という年限を明示して石炭火力の廃止を求めたことは初めてとしている。2035年の電源構成に占める再エネ割合を「65-80%」と高い水準に設定することについては、その可能性を分析した数値も示しており、政府が進める第7次エネルギー計画の議論にも影響を与えそうだ。
岸田政権が進めるグリーン・トランスフォーメーション(GX)政策は、既存の電力各社が抱える石炭・ガスの両火力発電をアンモニア・水素混焼で延命させることを基本柱としている。これに対して、JCIが求める「化石燃料からの早期脱却」「再エネ比率65-80%」等の要求は、事実上、「化石燃料依存の継続」を基本とするGX政策を「否定」する内容といえる。
化石燃料をベースとするエネルギー・電力業界、エネルギー多消費型の鉄鋼、セメント、自動車、化学等の重厚長大産業に対して、今回の声明に署名した電機、IT・通信、食品、小売、住宅、金融等は第三次産業が中心で、サービス・生活回り主導の企業が多い。「化石燃料依存産業」と「再エネシフト産業」の意見の違いが明確になったといえる。
JCIは声明の中で、「特筆すべきは、日本を代表する大手な企業を含め、216もの非政府アクターが、初めて自ら名称を明らかにして、2035年という年限を明示して石炭火力の廃止を求めたことだ。日本の気候政策の転換を求める国内のステークホルダーの声はティッピング・ポイント(転換点)を迎えつつあるといっても決して過言ではない」としている。
JCI共同代表の末吉竹二郎、加藤茂夫の両氏は、岸田首相はじめとする各省庁の大臣に向けて「国内の真摯な声を受け止め、先進国として誇れる野心的なNDCを」と題した書簡と声明を送付した。両氏は書簡で「政府に対し、日本を代表するといっても良いJCIメンバーからの覚悟ある声に耳を傾けて、気候政策を練り直し、日本が脱炭素への国際競争において、先頭グループと肩を並べて気候危機との闘いで大きな役割を果たすともに、この国の産業や経済の未来をも切り開くことができるようになることを切に願っている」と述べている。
https://japanclimate.org/news-topics/jci-message-2035ndc-release/
https://japanclimate.org/wp/wp-content/uploads/2024/07/JCI-message-2035ndc-attachment2_JP.pdf