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豪NGO。JERAがエネルギー開発事業等で地域住民等の利害関係者を軽視するのは、コーポレートガバナンスコード違反とする公開書簡を日本取引所グループや機関投資家に送付(RIEF)

2024-10-22 18:07:11

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写真は、オーストラリアのバロッサガス田開発事業=気候ネットワークの資料「STOP BAROSSA GAS PROJECT」から引用)

 

    オーストラリア拠点の環境NGOのマーケット・フォース(Market Force=MF)は22日、東京電力と中部電力が株主の電力会社JERAが、内外で展開する開発事業において、地域コミュニティの利害関係者を軽視しているとする公開書簡を、日本取引所グループ(JPX)と主要な機関投資家に送ったと発表した。JERAは新規株式公開(IPO)を目指しているとされるが、MFは、同社の活動は日本のコーポレートガバナ ンスコードが定める「ステークホルダーの権利と立場を尊重する」原則に反すると指摘。JPXや機関投資家に対して、予想される同社のIPOに先立ち、JERAに対するエンゲージメントに取り組みよう要請した。

 

 公開書簡によると、JERAはこの1年の間に、少なくとも 10の市民社会組織や地域社会のステークホルダーから要請された意見交換を拒否してきたとしている。

 

 それらの団体とJERAが関与する対象事業は次の通り。

 

▼オーストラリアのティウィ諸島のバロッサガス田開発事業。JERAは同ガス田権益の12.5%を所有。同島の先住民族コミュニティの住民たちは、事業による、環境、海洋生物、文化への潜在的な影響に関する懸念を表明し、反対している。

 

▼バングラデシュのマタバリサミットLNG発電所とJERAが共同入札者となっているマタバリ陸上LNGターミナル事業。JRAは事業者のサミット・パワー社の発行済株式22%を保有。ターミナル事業によって影響を受ける地域住民らは、新たなインフラ建設が気候変動の影響を受け易い国の一つに建設されることに懸念を表明している。

 

▼米テキサス州でのフリーポートLNG事業(JERAは権益の25.7%を取得)。同事業に懸念を抱く「テキサス環境キャンペーン(TCE)」、ベター・ブラゾリア、「環境正義のためのフリーポート・ヘイブン・プロジェクトの地域住民および市民社会組織」。2023年6月に輸出ターミナルで起きた爆発事故で、火の玉が450ft(約140m)上空まで立ち上 り、約12万立方ftのLNG(約3400kℓ)が放出された。

 

▼愛知県・武豊町のJERA武豊火力発電所(JERA100%所有)。「武豊町の環境問題を考える会」(愛知県武豊町)。武豊町にある同火力発電所は、石炭・木質バイオマスを燃料とし、2024年1月に爆発事故を起こしており、住民らは同火力の稼働再開に反対。

 

 ▼フィリピンの大手電力会社アボイティス・パワー(JERAは発行済み株式 の27%を保有)。同社の化石燃料ガス(LNG)拡張計画に懸念を表明する市民団体。

 

 書簡では、JERAがこれらのステークホルダーとのエンゲージメントを拒否していることは、同社がステーク ホルダーとの対話や説明責任を軽視する傾向があることを示唆しており、投資家にとって投資判断を下すうえで、考慮すべき重要な要素となり得る、としている。影響を受ける地域住民とのエンゲージメントを怠ることは、世界の投資家が求める持続可能で責任あるコーポレートガバナンスの原則に反する。地域社会や様々なステークホルダーの懸念を無視し続けるのであれば、JERAにはレピュテーションリスクだけでなく、財務リスクが生じる可能性もある、と指摘している。

 

 そのうえで、JPXや機関投資家が関与する「コーポレートガバナンスコード」が求めるグッド・ガバナンス原則にも反する、としている。同コードでは、持続的な成長と中長期的な価値の創出は、地域社会をはじめとする様々なステークホルダーによる貢献の結果によって左右されると強調。特に「地域社会は会社の存続・活動の基盤をなす」と明確に示している。これらの点をあげて、取締役会および経営陣は、ステークホルダーの権利を尊重し、健全な事業活 動倫理を実現する文化を醸成しなければならない、としている。

 

 この点で、ステークホ ルダーとのエンゲージメントを拒否し続けるJERAの姿勢は、JPXおよび投資家にとって憂慮すべきものだとして、JERAへの各投資家などのエンゲージメントを求めている。地域社会の住民の反発・反対を無視する対応をとることは、影響を受ける地域住民による訴訟、メディアによる否定的な報道につながる可能性がある。こうした反応は、すでにオーストラリアのバロッサガス田開発事業における市民団体等の反対の動きで表面化しているとした。またJERAのこれまでの対応は、同社の株主価値に影響を与える恐れもあるとしている。

 

 MFのアジア・エネルギーファイナンスキャンペーナーの福澤恵氏は「JERAが事業を展開する地域社会のステークホルダーとの関与を拒否したことは、同社がステークホルダーとの対話や説明責任を軽視する傾向があることを示しており、投資家にとっても重要な懸念事項になる可能性がある。 投資家が期待するコーポレートガバナンスコードの原則に則らないことは、同社に風評リスクが生じる可能性も示している」と強調している。

https://stories.marketforces.org.au/jera-neglecting-community-stakeholder-engagement-jp

https://www.marketforces.org.au/wp-content/uploads/2024/10/2024-Oct-Open-Letter-to-JPX-Japanese-02.pdf