三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が財務アドバイザーのパプアニューギニアLNGプロジェクトは「G7合意」違反として、環境NGOが「不参加表明」を求める公開書簡送付(RIEF)
2024-12-19 16:18:07
(写真は、フェアファイナンスジャパンのサイトから引用)
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が財務アドバイザーを務めるパプアニューギニアでのLNG開発事業が、G7合意等に違反するとして、内外の環境NGOが同プロジェクトへの参加を検討中の金融機関に対して公開書簡を送付した。事業主体は仏トタル・エナジー、米エクソンモービルのほか日本のENEOSも参加する。2022年のG7エルマウ宣言では「パリ協定の目標と整合しない化石燃料エネルギー部門への公的直接支援は2022年末までに終了する」としており、同事業は同合意に反するうえ、影響を受ける先住民族の「FPIC(自由で事前の十分な情報を得た上での同意)」がないことに懸念を示している。すでに同事業の成否を勘案し、11の金融機関が不参加を表明している。
公開書簡を出したのは、オーストラリアのNGO、マーケットフォース(Market Forces)、パプアニューギニアのNGO「The Centre for Environmental Law and Community Rights (CELCOR)」、仏非営利シンクタンクの「ReclaimFinance」などの30団体。
焦点の事業は「 Papua LNG」計画。パプアニューギニア南東部ガルフ州にあるElk and Antelopeガス田の開発と、それに関連するポートモレスビー付近での液化天然ガス(LNG)生産設備の建設を目的としている。現在は事業にファイナンスをする銀行を募集している段階で、最終投資決定(FID)は2025年の予定。事業の出資構成はトタル・エナジー37.55%、エクソンモービル37.04%、Santos22.83%、ENEOSホールディングス(JX石油開発)2.58%。
公開書簡は、同事業にすでに関与しているMUFGを含め、参加候補とみられる官民金融機関31機関に送付された。書簡の内容は、「パプアLNGプロジェクトが地域社会、環境、気候に及ぼす深刻なリスクについて、貴行に警告したい。金融データベースIJGlobalによると、日本のMUFGは、同事業への融資を進めるために他の銀行に働きかけているという。われわれは、貴行が直ちにこのプロジェクトへの融資を否定し、風評リスクと財務リスクを回避するために、融資を行わないという決定を公表することを強く求める」としている。
MUFGについては「同行は同事業の最初の財務アドバイザーではない。それ以前に財務アドバイザーだった仏クレディ・アグリコルは、おそらくこの書簡で述べたリスクを理由に、2024年の融資を停止した。さらに仏ソシエテ・ジェネラルがそれより前に財務アドバイザーだった可能性もある。すでに少なくとも11行がプロジェクトから撤退を決めている。パプアニューギニアの6団体が同事業が、気候変動、生物多様性、人権分野において、リスクを抱えていることを強調している」と指摘、アドバイザーも辞退するよう求めている。
同事業は、地域社会の環境・社会・気候へのプロジェクトの影響が大きいほか、国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)、赤道原則、国際金融公社(IFC)のパフォーマンススタンダードに基づく自由意思による事前の十分な情報に基づく合意(FPIC)の権利等について、正確で詳細かつ信頼できる情報を踏まえているかという点で、関連する国際機関等が懸念を表明している点についても言及している。
また米エネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)の試算により、同プロジェクトからは年間2億2000万㌧(MTCO2e)の温室効果ガス(GHG : CO2換算)排出量が見込まれるとしている。この排出量は人口1億6900万人のバングラデシュの1年分の排出量に相当する。これらのCO2を回収貯留するコストへの対応で。IEEFAは同事業の財務リスクの高さを警告しているとしている。
公開書簡では、こうした課題を指摘したうえで、同事業に参加する金融機関に対して「今後の資金提供者は、潜在的な法的措置や非司法的な苦情に直面する可能性がある。これには、資金提供者がこの取引から得る粗利益を上回る損害賠償請求が含まれる可能性がある」と警告。同事業に参加しないことを2025年1月10日までに確認したいと申し出ている。
書簡を送付した金融機関31行のうち、日本勢は、MUFGのほか、みずほ銀行、三井住友銀行、国際協力銀行(JBIC)の4行。他の金融機関は、アルファ銀行(ロシア)、バンク・オブ・アメリカ(米国)、バークレイズ(英国)、バイエルン州立銀行(ドイツ)、スペイン銀行(スペイン)、中国建設銀行/CCBインターナショナルファイナンス(中国)、シティバンク/シティグループ(米国)、ドイツ銀行(ドイツ)、DNB(ノルウェー)、DZ銀行(ドイツ)、ゴールドマン・サックス(米国)、インテーザ・サンパ イタリア)、JPMorgan Chase(米国)、Kina Bank(パプアニューギニア)、、UBS(スイス)。公的金融機関はアジア開発銀行(ADB)、中国開発銀行、オーストラリア輸出金融公社、中国輸出入銀行、韓国輸出入銀行(KEXIM)、米国輸出入銀行、イタリア輸出信用機関(SACE)、韓国貿易保険公社(K-SURE)