米国輸出入銀行。人権・環境問題で懸念が指摘されてきたアフリカ・モザンビークのLNG事業に47億㌦(約7050億円)の融資枠を設定。日本を含む内外のNGOが一斉に反発(RIEF)
2025-03-17 17:13:59

(写真は、モザンピークのLNGプロジェクトサイトから引用)
米国輸出入銀行(Exim)は内戦が続くほか、市民弾圧等の人権問題が指摘されるアフリカのモザンビークで建設中のLNG(天然液化ガス)開発事業に、総額47億㌦(約7050億円)の融資枠融資枠を設定した。これに対し、日本の環境NGOのFoE Japanをはじめとする内外のNGOは一斉に反発、「米国の無責任な行動」に反対するという内容の共同声明を発表した。このLNG計画には三井物産やエネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)など日本の産業界や公的機関も深く関わっているため、同声明では日本の官民の関係機関に対して、「米Eximに追随しないように」と訴えている。Eximの融資決定には、トランプ米大統領の意向が影響していると見られており、日本の官民の対応が注目される。
焦点のLNG事業は、モザンビーク北部のカーボデルガード州で仏エネルギー大手のトタル・エナジーズが主導している。同事業には、三井物産やJOGMECなども主要プレイヤーとして参画している。
LNGは石油や石炭に比べて温室効果ガスの排出が少ないとされ、脱炭素の「つなぎ役」として世界的な需要が高まっている。ところが、モザンビークはイスラム過激派と政府軍との衝突による内乱が続いており、2021から同事業は止まっていた。

ただ、一昨年からモザンビーク政府や国際社会の対応によって、国内の治安は安定化に向けて動き出しているほか、米国でトランプ政権の2期目が始まり、Eximの理事会メンバーが入れ替わったことで化石燃料に対する抵抗感が薄れ、今回の融資の決定につながったとみられている。
NGOが同事業の「再開」について問題視するのは2点ある。それは、人権と環境だ。
人権面では、LNG基地の建設のため、同地域の500世帯以上の住民が強制移転させられたことで、コミュニティが崩壊したという点だ。また、内乱に伴ってモザンビーク軍による市民への抑圧のほか、虐殺行為も報じられてきた。NGOや市民団体は各国の政府や金融機関に対して、同事業に伴う人権侵害行為についての調査と対応を強く求めていた。
環境面でも、LNG開発・消費に関し、「LNGも化石燃料であることには変わりなく、大量のCO2を排出する」と指摘し、同地でのLNG活用の長期化で、脱炭素社会の実現が遅れることを懸念している。
FoE Japanによると、同事業に関係する日本勢は、三井物産やJOGMECのほか、国際協力銀行(JBIC)と日本貿易保険(NEXI)も多額の金融支援を決めているほか、金融機関も、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行の3メガバンクをはじめ、三井住友信託銀行、日本生命保険、クレディ・アグリコル銀行東京支店、ソシエテ・ジェネラル銀行東京支店、SBI新生銀行、スタンダードチャータード銀行東京支店が、総額144億㌦の協調融資に参画している。日本は官民挙げてモザンビークのLNG事業にコミットしているわけだ。
同NGOの副事務局長の深草亜悠美氏は、「(JBICなどの日本勢は)融資に対して、透明性と説明責任を持つべきだ。だが、同事業については、事業のデュ―デリジェンス(内容や評価)について明確な説明をしていない。人権侵害も報告されており、日本の輸出信用機関は独立した調査を求める声を支持し、融資を進めるべきではない」と指摘している。https://rief-jp.org/blog/150518?ctid=33
モザンビークは長らく内戦が続き、日本は1993年から95年まで国連平和維持活動を実施した。その後、着実な経済成長を遂げ、天然資源が豊富なことから2010年代から開発が本格化していた。
モザンビークでのEximの融資を決めた米国は、トランプ政権が発足して以来、国内外において急速に化石燃料の活用に舵を切っている。日本ではこの数年、確実に環境や人権などサステナビリティ意識が高まっており、モザンビークに対する日本政府や産業界の対応は今後の試金石になりそうだ。
(加藤裕則)
https://foejapan.org/issue/20250314/23216/