トランプ米政権。環境NGOや市民団体等の税制優遇措置剥奪の大統領令を、「アースデイ（地球の日）」に発出か。ハーバード大学への「攻撃」に次ぐ「反トランプ団体」弾圧の強権政治へ（RIEF）
2025-04-19 13:05:28
（写真は、米国の「アースデイ」を展開する非営利団体のサイトから）
トランプ政権が環境NGO等に対して、国が付与している税制優遇措置を、はく奪する大統領令を出すとの見方が有力になっている。トランプ政権が打ち出した「drill baby drill（掘って掘って掘りまくれ）」政策による国内の化石燃料事業拡大に対して、各地の環境NGOや住民団体等による反対運動を抑制することが狙いとみられる。22日の「地球の日（アースデイ）」に向けて準備を進めているというから、今年の「アースデイ」は環境NGO等にとって、最悪の日になりそうだ。
Bloom berg 等の報道によると、米政権の関係者の情報として、同政権は、一部の環境保護団体から税制優遇措置を剥奪する大統領令の策定を進めているという。同政権が進める国内の石油、ガス、石炭の化石燃料生産を拡大する政策に反対する団体を標的として、これらの非営利団体に対する米国税法の優遇措置や政府資金の助成金措置等を停止し、活動を抑制することを目指すとみられれる。
同政権や共和党は、これまでも、長年にわたって、米国の主要な環境団体や市民団体が、外国政府とのつながりがあり、特に中国等からの資金提供を受けている等と、主張してきた。
連邦下院の共和党議員が昨年4月に開いた「監視・調査小委員会」に提出された「内務省における過激な環境活動家団体の影響に関する調査」報告では、①極端な環境活動家団体の政策と政治への影響力は、米国でますます高まっている②バイデン政権（当時）は、左派の社会正義と環境正義を支持する活動家系NGOに依存している③NGOの連邦規則の制定プロセスへの影響力は著しく、しばしば公の監視外で活動を進行させている④内務省（DOI）はバイデン政権の極端な環境政策を推進する過激なNGOと、密接で不適切な関係を結んでいる、などと指摘し、環境NGOの政治的増大を問題視している。
米国の内国歳入法は、約30種類の税制優遇団体を認めており、そのほとんどは501（c）（3）または501（c）（4）に分類される。501（c）（3）の認定を受ける税制優遇団体は、慈善活動や、宗教、または教育活動等を目的に設立されるのが一般的。プライベート財団は一般的に501（c）（3）の非営利団体に分類される。501（c）（4）の団体は主に社会福祉団体を含み、政策提言や党派活動と関連付けられることが多い。
共和党の前述の調査では、これらの税制優遇団体に流入する外部資金の規模と、非営利団体がアメリカの政治に与える影響が劇的に拡大していると指摘。2020年に、最も政治的に活発な民主党系非営利団体のうち15団体は、国内政治に影響を与える活動に15億㌦以上を支出したとしている。その内訳は、バイデン大統領候補（当時）の選挙キャンペーンと民主党の議会候補者のキャンペーン支援で3億2000万㌦以上を支出、バイデン大統領候補自身もこれらの団体から、1億4500万㌦の支援をうけたとしている。
ただ、同調査では、共和党のトランプ大統領候補（同）が、どれだけの寄付や支援を企業や共和党系NGO等から受けたかについては言及していない。
想定される環境NGO等に向けた大統領令では、環境保護団体の活動調査の実施や、慈善団体として扱われる非米団体への資金調達を制限する規定等も盛り込むとみられる。税制優遇措置規定の修正の取り組みの影響は、環境団体だけでなく、他の社会問題に取り組む非営利団体や慈善団体、財団にも及ぶ可能性がある。
トランプ氏はすでに、ハーバード大学に対して「反ユダヤ主義」と批判し、同大学に対する公的な資金支援の停止のほか、免税資格の剥奪を主張している。トランプ氏自身、18日に、同大学だけでなく、他の団体の政治的活動等を理由として、現在付与されている免税資格を剥奪する可能性に言及し、「非常に豊かで、非常に強力でありながら、その後悪質な行動を取る団体」について「近日中に声明を発表する」と述べている。
この際、同氏は、非営利団体監視団体「ワシントン責任と倫理のための市民（Citizens for Responsibility and Ethics in Washington）」を名指しで批判し、「彼らが持つ唯一の慈善活動はドナルド・トランプを攻撃することだ」と批判した。
非営利団体の免税資格の剥奪は国税庁（IRS）が判断するが、同庁は党派的な考慮を排除して連邦税法を執行する義務がある。非営利団体が政治活動やロビイングに深く関与した場合、または本来の活動の使命と無関係な過剰な収入を得た場合、またはIRSへの年次報告を提出しなかった場合、免税資格を失う可能性がある。
Research Institute for Environmental Finance