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インドの鉄鋼大手のJSW Steelが、同国内で計画中の大規模製鉄所と石炭火力発電事業に反対する先住民らが、同社に融資を続ける日本の3メガバンク等に対して「人権侵害の申し立て」(RIEF)

2025-05-07 17:44:13

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写真は、インドのJSW Steelの大規模製鉄所建設計画等に反対する現地の住民ら=「Bank Track」のサイトから)

 

 インドの鉄鋼大手のJSW Steelが、同国南東部のオディシャ州で進める大規模な製鉄所と石炭火力発電所の建設事業が、先住民の同意なしに土地を接収し、地域の生計を破壊、反対する住民らを強制的に排除するなどの人権侵害を引き起こしているとして、地域住民や支援団体が、同事業に融資を計画する日本の3メガバンク等に対し、人権侵害の申し立てを実施したと発表した。同地での事業はとのプロジェクトへの反対を犯罪化するために州当局と協力し当初韓国の鉄鋼メーカーのPOSCOが計画したが、住民の反対を受けて撤退したが接収した土地をJW Steelに譲渡している。

 

 人権侵害申し立てを行ったのは、地元の住民らで組織する「アンチ・ジンダル・アンチ・ポスコ運動( Anti-Jindal & Anti-POSCO Movement )」のコミュニティメンバー。申し立て対象は、日本の三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)のほか、みずほフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)の3行と、オーストラリアのANZ銀行の4金融機関。

 

 申し立てによると、紛争が起きている土地は、先住民族の土地で、2005年にPOSCOが同地で製鉄所を建設する計画で進出しようとしたが、地元住民の強い反対により2017年に撤退した。その際、州政府は土地を地域住民に返還する代わりに、国内鉄鋼大手のJSW Steelに譲渡した。このため住民らは「アンチ・ジンダル・アンチ・ポスコ運動」を組織し、引き続き反対運動を展開するとともに、同事業に融資を計画する日豪の銀行団に対して、人権侵害への加担を止めるよう求める申し立てを行った。

 

  申し立ては、これらの銀行がインドの鉄鋼大手JSW Steelへの融資を通じて、同社の「JSW Utkal鉄鋼・石炭プロジェクト」に起因する数多くの人権侵害と関与しているとして、事業への融資を差し止めるよう求めている。各銀行とも、投融資に際して、国際人権基準に沿う行動を約束する方針を策定している。そのうちの一つは「自由で、事前かつ十分な情報に基づく同意」の原則への直接的なコミットメントを含んでいる。

 

 国際環境金融NGOのBankTrackによると、4銀行のJSW Steelに対する融資額は、ANZが2019年から同社への融資取引に1件参加し、総額5000万㌦。みずほは2019年から2023年にかけて同社との7件の取引に参加し、総額2億3020万㌦。MUFGは2021年から2023年にかけて同社との取引4件参加し、融資総額1億3000万㌦。SMBCは2022年から2023年にかけて3件の取引に参加し総額USD1億1670万㌦を融資したとしている。

 

 人権侵害の申し立ては、AZBに対しては直接、同社の担当部局に申し立てたが、日本の3行に対しては、BankTrackの支援を受けて、ビジネスと人権の苦情処理メカニズムを運営する非営利団体の「日本ビジネスと人権エンゲージメント・リメディセンター(JaCER)」を通じ、3行に提出する手続きをとったとしている。BankTrackは以前、JSW Steelの問題プロジェクトに関する銀行との協議を書簡で求めたが、「不十分な回答しか得られていない」ため、第三者の苦情処理メカニズムの運営団体を仲介する形をとったとしている。

 

 住民らの申し立てでは、各銀行に対し、プロジェクトへの融資を公に拒否するよう求めるとともに、影響を受けたすべての村民に対する独立した調査と是正措置が完了するまで、JSW Steelへの追加融資を停止するよう要請している。住民らは、JSW Steelは先住民の同意なしに土地を接収し、地域の生計を破壊し、プロジェクトへの反対を犯罪化するために州当局と協力したと主張している。

 

 銀行への申し立てを行った「アンチ・ジンダル&アンチ・ポスコ運動」の会長、デベンドラ・スワイン(Debendra Swain)氏は「銀行がJSW Steelに資金を提供すると、その資金は私たちの家や作物を破壊し、反対する人々を罰するために使われる。JSWは銀行の支援なしに私たちの土地を奪うことはできなかった。したがって、彼ら(銀行)は責任を負わなければならない」と述べている。

 

 BankTrackの銀行と鉄鋼キャンペーン責任者のジュリア・ホーヴェニエ(Julia Hovenier)氏は「ANZ、みずほ、MUFG、SMBCのような銀行が、批判者を抑圧する企業に自由に融資を続ける限り、私たちの表現の自由は脅かされる。銀行は人権へのコミットメントを果たし、JSW Steelとの関係を終了すべきだ」と指摘している。

https://www.banktrack.org/article/indian_steelaffected_communities_launch_complaint_against_australian_and_japanese_banks

https://www.oecdwatch.org/organisations/anti-jindal-anti-posco-movement/