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日本生命など日本の大手機関投資家5グループによる主要な化石燃料企業向け投資総額は「406億㌦(約5.9兆円)」。投資先の新規排出量だけで日本の年間排出量の7倍以上。豪NGOが指摘(RIEF)

2025-06-11 17:01:58

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  日本生命、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)などの日本の主要機関投資家5グループが、グローバルベースで化石燃料企業に対して合計406億㌦( 5.9兆円)を投資しているとの報告書が公表された。これらの投資の80%以上は、伊藤忠商事、三井物産等の日本の商社やエクソンモービルなどのエネルギー大手等の10社に集中している。この10社が抱える化石燃料事業拡大計画だけで、温室効果ガス(GHG)は7.7G㌧(77億㌧)増え、日本の年間排出量の7倍以上が追加される計算になる。

 

 報告書は、オーストラリアの環境NGOのマーケットフォース(Market Forces)が公表した。一方で、対象となった5機関投資家は再エネ企業への投資にも432億㌦(約6.2兆円)とほぼ同規模のファイナンスをしていることも指摘している。ただ、気候変動を抑制するために求められる化石燃料ファイナンスから再エネファイナンスへの切り替えには「再エネ4対化石1」の割合が求められるが、現状は「1.07:1」にとどまっており、化石ファイナンスから転換できない、これらの企業の姿が浮き彫りになった。

 

 調査対象となった5機関投資家グループは、日生、MUFGのほか、みずほフィナンシャルグループ/第一生命保険、三井住友トラスト・ホールディングス、野村ホールディングス。このうち、みずほ/第一生命は、資産運用機関「アセットマネジメントOne」の共同出資企業として扱われている。対象企業は、石炭・石油・ガスなどの化石燃料の拡大を主導する190社の企業群を対象とする「化石燃料拡大企業指数(Fossil Fuel Expansion Index  :  FFEI企業)」を元に選択している。

 

 これらの機関投資家が投資する化石燃料関連事業の大半は、伊藤忠、三井物産のほか、三菱商事、丸紅、エクソンモービル、BHP、INPEX、シェブロン、大阪ガス、中部電力の10社に集中している。同10社の化石燃料事業の拡大計画だけで、新たに7.7G㌧のGHG排出量が大気中に排出されることについて、同報告書は「再エネの導入によって、この約3年間で達成してきた排出量削減のための努力が水の泡になってしまう」と指摘している。

 

 機関投資家は化石燃料ファイナンスの大口提供者であるだけでなく、気候変動に関する投資先企業のガバナンスへの働き掛けも注目される。5社とも株主提案には一定の支持を示す一方で、化石燃料企業の取締役の選任議案については、99%の割合で賛成票を投じる株主行動をとっている。この点で報告書は「これらの機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たしていない実態が明らかになった」としている。

 

 マーケット・フォースのエネルギーファイナンスアナリストである鈴木幸子氏は「日本の主要機関投資家5社は、化石燃料企業の中でも世界で最大規模の拡張計画を持つ企業の事業に絞って投資している。日本の主要機関投資家が化石燃料の拡大を許すことで、気候変動が悪化するとともに、今後の安定した気候の確保に必要な、クリーンエネルギーへの迅速な転換へ十分な支援が行われない状況となっている。日本の主要機関投資家は、化石燃料を拡大する企業に責任を問う必要がある」と求めている。

 

 同NGOでは今回の報告書を踏まえて日本の資産保有機関と資産運用機関に対して、提言もしている。前者に対しては、①資産運用会社に対し、より効果的なスチュワードシップを発揮するよう促す②ポートフォリオを「1.5℃経路」に整合させるようコミットする、と指摘。

 

 後者の資産運用機関に対しては、①野心的な目標の設定――1)ポートフォリオ排出量を1.5℃経路に整合させるようコミットする。2)投資先企業に対し1.5℃経路と整合する目標を設定する。とりわけFFEIで特定された化石燃料を拡大する企業に対し、同目標を設定する。3)再エネへの投資規模を拡大する。

 

 ②効果のないスチュワードシップで評判を損なうことのないようにする――1)もっとも規模の大きい化石燃料事業拡大計画を有する投資先企業へのスチュワードシップを最優先する。2)ポートフォリオにおいて排出量の多い企業とのエンゲージメントに関する情報開示を強化する。

 

 ③議決権行使の方針に基づき、実効性のある形で「有言実行」する――1)エスカレーションを実施する際のタイムラインや基準など、そのプロセスを明確にする。2)気候変動への対応を理由に、排出量の多い企業の取締役選任議案に反対し、その旨事前に表明する。3)気候関連の株主提案議案に賛成し、その旨事前に表明する。

 

https://www.marketforces.org.au/campaigns/asia/japans-five-largest-investors-delay-energy-transition-report-2025-ja/