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世界の主要銀行の化石燃料ファイナンス。2024年は前年までの減少傾向から2割強の伸び。総額8694億㌦(126兆円)。日本の3メガバンクは全体の1割強の「存在感」。国際NGO共同報告(RIEF)

2025-06-18 20:06:05

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    国際的な環境NGOグループは2024年中に世界の主要な銀行が、石油・天然ガスなどの化石燃料関連産業に投融資した「ブラウンファイナンス」資金量が総額8694億㌦(約126兆円)に達したとする報告書を公表した。前年の23年までは減少傾向だったが、24年は一気に23%増の1625億㌦を上乗せしたことになる。24年のファイナンス額のほぼ半分は化石燃料事業の拡大を支援するための資金供給だった。このうち日本の3メガバンクの化石燃料への資金供給額は全体の約12%の1063億㌦を占めた。金融機関による脱炭素化取り組みは遠のいてしまったようだ。

 

  NGOの調査報告書は、「Banking on Climate Chaos」と題した年次レポート。BankTruck(オランダ)、シェラクラブ(米)、Rainforest Action Network(同)、urgewald(独)等を中心とする世界の環境・気候関連NGOが協力して毎年公表している。対象は、世界の上位65行の大手銀行で、これらの金融機関が投融資対象をしている2800社以上の化石燃料関連企業向けの融資、引き受け状況をまとめている。

 

 調査の対象期間は、国際エネルギー機関(IEA)が「ネットゼロ・ロードマップ」を発表した2021年〜2024年を対象とし、年別、累計額を集計・分析している。

 

 2024年の資金提供額の約8690億㌦のうち、過半の53.7%を占める4670億㌦が融資で、債券引き受けによる資金提供は46.1%の4010億㌦。買収ファイナンスは829億㌦で、いずれも23年の資金提供額を、融資で10.6%増、債券引き受けで41.2%増、買収ファイナンスで30.1%増と、軒並み「急増」と言ってもいい増え方だ。対象とした2021年からの4年間合計のファイナンス額は1兆6000億㌦に達した。

 

 

2025年の銀行別の化石燃料ファイナンスの動向
2025年の銀行別の化石燃料ファイナンスの動向

 

  パリ協定が発効した2016年から2024年の提供額は7.9兆㌦(約1145兆円)。24年でもっとも化石ファイナンスが多かった銀行はJPモルガン・チェース(米)で535億㌦。対象銀行65行のうち4行が資金提供額を100億㌦以上増加させた。増加額の大きい上位4行はJPモルガン、シティグループ、バンク・オブ・アメリカの3米銀と英銀バークレイズ。ワースト12行のうち、日米の銀行が合わせて9行を占めた。


 
 国別でみると、米銀はJPモルガンを筆頭として、合計で2890億㌦を化石燃料産業・事業に投じた。同金額は今回の報告書の対象である世界の化石燃料ファイナンス総額の3分の1を占める。上位のJPモルガン、バンク・オブ・アメリカ、シティグループ、ウェルズ・ファーゴの4行だけで全体の21%を占めている。

 

 これらの米銀は、トランプ政権の誕生が明確になった昨年末以降、国連のネットゼロ銀行同盟(NZBA)から相次いで離脱している。同政権が推進する「drill baby drill」政策に後押しされる形で、今年はさらに化石燃料ファイナンスを積み上げる可能性がある。

 

 一方、日本のみずほフィナンシャル・グループ、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)の3グループの24年の化石燃料ファイナンス額は合計で1063億㌦。調査対象65行全体の約12%を占めた。3メガの化石燃料ファイナンスの約半分は米国に本社を置く企業への資金提供だとしている。3メガバンクもNZBAから離脱したが、米銀追随の国際戦略がその理由だったということのようだ。

 

 日本の3グループの「ブラウン・ランキング」では、みずほが4位、MUFGは6位、SMBC11位。3行合計で全体の資金提供額の12%を占めたほか、化石燃料事業を拡大している企業への資金提供額でもワースト12銀行に位置付けられ、みずほが3位、MUFG6位、SMBC11位だった。


 
 欧州勢では英バークレイズが354億㌦で米銀以外では最大の化石燃料ファイナンスの供給銀行だった。続いて、スペインのサンタンデール、フランスのBNPパリバ、ドイツのドイツ銀行、英国のHSBCなどが続き、それぞれ2024年に14~173億㌦を化石燃料産業の事業拡大を支援した。

 

 報告書の共同執筆者のRAN銀行方針リーダーのアリソン・フェイジャンス=ターナー(Allison Fajans-Turner)氏は「注意をそらし、引き伸ばし、責任を回避し、そして最後に離脱する。必要に応じて、それを繰り返す。銀行はこういった常套手段を使って、自分たちと化石燃料業界に潤沢な資金を供給して金融システムにリスクを積み上げる一方で、地球の気温上昇を1.5℃未満に抑えるための時間を無駄にしてきた。今回の『化石燃料ファイナンス報告書』の威力は、このような戦術を見抜き、資金の流れを追跡している点にある」と指摘している。

 

 RAN日本シニア・アドバイザー 川上豊幸氏は「日米の銀行が2024年の化石燃料ファイナンスの上位を独占した。3メガバンクは昨年から順位を下げたものの、それは米銀らの増加額が多かっただけで、メガバンクの資金提供額は依然として大きく、憂慮すべきだ。特に、大手米銀の24年の化石燃料産業への資金提供額は前年比30〜50%増加という異常な状況だ。IEAの報告書によれば、全ての化石燃料の拡大事業はパリ協定の1.5℃目標と整合しないとされるにも関わらず、24年には、みずほは化石燃料拡大企業への資金提供を前年比で約15%増加させ、MUFGは約3%増加させている」と懸念を深めている。

                           (藤井良広)

https://www.banktrack.org/article/banks_fossil_fuel_finance_totals_869_billion_in_2024_a_dramatic_increase_in_financing

https://japan.ran.org/?p=2470

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