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ドイツの今年上半期発電量、過半(55.8%)は再エネ電力。初の50%超え。新型コロナウイルスの影響で電力需要全体は減少するも再エネ発電は増加。「脱石炭」「脱原発」も順調(RIEF)

2020-07-12 22:36:38

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  今年上半期(1~6月)のドイツの発電に占める再生可能エネルギー電力の割合が初めて過半を超える55.8%を記録した。月ごとでみると、2月には再エネ比率は61.8%にまで上昇している。再エネのうち風力発電が30.6%と最も多かった。石炭火力発電は石炭・褐炭両方合計でも19.7%と、2割に届かなかった。ドイツでは石炭火力電力にはCO2排出分の課金をしており、コスト高と消費者の選択で縮小の道を辿っている。

 

 (上図は、各上半期での全発電量に占める再エネ電力の推移)

 

 ドイツのシンクタンク、フラウンホーファー研究機構( Fraunhofer Institute)が公表した。それによると、今年上半期のドイツ全体の電力消費量は234.2TWhで前年同期比4.7%減。新型コロナウイルス感染拡大の影響で減少した。電力供給の再エネ比率は19年上半期は47%だった。一気に55.8%と過半超えとなったのは、電力需要全体の低迷も大きいが、太陽光と風力を合わせた電力量は102.9TWhと前年同期比11.5%増と着実に伸びている。これに対して、石炭火力発電は13.7%減、褐炭火力も6%減と、そろって縮小した。

 

2020年上半期の発電量の割合
2020年上半期の発電量の割合

 

 発電源別でみると、風力発電が全体の3割を占める30.6%ともっとも多かった。次いで褐炭火力発電(13.7%)、ウラニウム(原子力発電)(12.3%)、天然ガス(11.5%)太陽光(11.4%)、バイオマス発電(9.7%)と続く。このうち原発は2022年までに全廃の予定なので、原発の12.3%分を再エネ、ガス等で肩代わりすることになる。原発発電量は前年同期比12.9%減、褐炭火力も同36.6%減、石炭火力同46%減とそれぞれ順調に削減している。

 

 上半期の風力発電は冬季間の強い風で発電量が増え、特に2月は発電全体の45%を風力だけでまかなえた。太陽光発電は4~6月と好天が続いたことから、前年同期比11.2%増と好調だった。水力発電は逆に同9%減など。

 

 褐炭、石炭火力発電のウエイトがそれぞれ下がった要因には、EU-ETS(欧州域内排出権取引制度)でのカーボン価格が上昇したことが大きい。CO2排出量の多い石炭火力等は発電に伴い、CO2排出量に見合うカーボンクレジットの購入が必要となるが、上半期のクレジット(EUA)価格は、トン当たり21.9ユーロと高く、加えて再エネ普及で電力価格がMWh当たり22.94ユーロと下落したことから、発電メリットが低下した。

 

上半期の月別電力量の推移
ドイツの上半期の月別電力消費量の推移

 

 化石燃料のうち天然ガス火力は、天然ガス価格が50%下がったことから、石炭とは逆にコスト低下となり、かつCO2排出量は石炭の約半分と低いこともあり、前年同期比13.9%増だった。天然ガス発電は一般向けの電力供給だけでなく、鉱業や製造業事業者の自家発電でも増加した。

 

 ドイツは脱原発、脱石炭に向けて、再エネを主とし、天然ガスを従として、着実にエネルギー転換を進めている。日本政府(経産省)は、非効率な旧式石炭火力発電からの脱却を打ち出したものの、超々臨界圧石炭火力(USC)を途上国向け輸出を含め、「高効率石炭火力」と位置付けて、「石炭継続」路線を打ち出している。だが、USCでもCO2排出量は天然ガス火力の倍で、再エネ比率も2019年で18%台。2030年目標が22~23%と、すべてにおいてドイツに後れを取っている。

https://www.ise.fraunhofer.de/en/press-media/press-releases/2020/net-energy-production-first-half-of-2020.html