HOME8.温暖化・気候変動 |ジョン・ケリー米気候特使、米国のパリ協定の改定NDCを「まもなく公表」と明言。EU等と同等の「野心的」な削減目標を示唆。改定目標値を示せない日本の出遅れ、際立つ局面に(RIEF) |

ジョン・ケリー米気候特使、米国のパリ協定の改定NDCを「まもなく公表」と明言。EU等と同等の「野心的」な削減目標を示唆。改定目標値を示せない日本の出遅れ、際立つ局面に(RIEF)

2021-03-25 00:44:09

Kerry0011キャプチャ

 

 米気候特使のジョン・ケリー氏は23日、国連の気候行動に関する閣僚会議(オンライン)で演説し、「バイデン米大統領は2050年までに温室効果ガス排出量のネットゼロを実現すると同時に、『野心的』な国別温暖化対策貢献(NDC)を開発している。まもなく公表する」と述べた。米国は4月22日に「気候リーダーズサミット」を主催するが、公表はその前になるとみられる。ケリー氏は「野心的」との表現で、EUや英国に匹敵する積極的な目標改定を示唆した。

 

 改定NDCはネットゼロに向けた2030年の中間目標でもある。ケリー氏は、ネットゼロに向けて米国全体の中間戦略も改定し、2022年度予算から、気候ファイナンスの水準を大幅に引き上げる対策を展開する考えを示した。米国内だけではなく、気候変動の影響を被る島嶼部等の気候脆弱国の適応策、レジリエンス強化のための金融的支援にも力を入れると強調した。

 

 日本政府も最近、改定NDCの提出を「サミット」で明言すると報道された。だが、改定目標の中身は当面、示せないようだ。国内での産業界との調整や、エネルギー基本計画の改定等の作業が十分に進んでいないためと説明される。米欧、それにカナダが改定NDCで出そろうとなると、先進国では日本だけが「(いずれ)改定NDCを出します」と語るだけの立場となる。「野心的」でないのはもちろんだが、先進国としての資格にも疑問が出る可能性もある。

 

 日本を念頭に置いたかどうかはわからないが、ケリー氏は「もう口先で、本質的な危機だとか壊滅的な危機だと言うのは止めよう。われわれが知っていることを始めよう。経済学者らの声に耳を傾ければいい。彼らはただ(危機を)待つだけよりも、危機に早急に対処することが、コストをはるかに引き下げると指摘している」と述べ、早期対応の必要性と合理性を訴えた。

 

 一方で、「われわれすべてが全く同じ方法で、同じ政策で、同じペースで、対応しなければならないのか、というとそうではない。各国の異なった環境に沿って努力を連続させるべきだ」とも述べた。日本に理解を示したのかと思ったが、「我々はすべての人々が、(同じではなくとも)十分に対応することを期待する。その十分な対応とは科学に基づくもので、かつ地球が我々に発する警告に応えるものでなければならない」と指摘、安易な先送り・追随型の国にクギを指した。

 

 また、11月の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)に向け、「我々全体が為さねばならないミッションは、パリ協定の目標である『1.5℃』目標を、手の届くレベルになるように、あらゆる可能なことに取り組むことだ」とも述べ、改定NDCとそれを実現する具体的な政策措置の明示を求めた。

 

 まず主要経済国がとるべき政策として、ネットゼロ目標をできるだけ早く達成するよう推進すること、 可能ならば2050年より前に実現することとし、ネットゼロを実現するための政策手段を具体的に示すことをあげた。第二には、今後の10年を温室効果ガス削減のための重要な期間と位置づけ、そのための必要な行動をとる必要があるとした。

 

 さらには、こうした行動は、より短期の行動でその実現性が確認されなければならないとして、石炭関連事業からの移行を含む行動を求めた。「われわれは今年を、嘆いたり、人を非難する年にするべきではない。よりクリーンな未来に道を示し、そこに全ての我々が、全ての人々が、たどり着くための協働の旅に向けて手を携えるための年でなければならない」と訴えた。

https://www.state.gov/remarks-at-the-ministerial-on-climate-action/