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日本のCO2排出量の半分は、電力、鉄鋼等の130の事業所から。排出削減の「国民運動」は、政府の詭弁。「炭素集約型」事業所の集中脱炭素化こそ重要。環境NGOが指摘(RIEF)

2021-09-01 00:12:24

Chubu001キャプチャ

 

 環境NGOの気候ネットワーク(KIKO)は31日、日本国内でCO2排出量の多い事業所のランキングを作成、公表した。環境省の「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」に基づいてKIKOが分析した。それによると、日本最大のCO2排出事業所は現在、JERAに移管されている元中部電力の碧南火力発電所(排出量2545万㌧)、次でJFEスチールの西日本製鉄所福山地区(2158万㌧)。上位10事業所は、電力と鉄鋼の各3社の事業所で占められた。

 

 (写真は、日本で最もCO2を吐き出す碧南火力発電所)

 

 CO2排出量の数字はいずれも2017年。1位のJERA碧南火力は愛知県碧南市の元中部電力の発電所で、排出量値は中部電力時代のもの。2019年にJERAに移管された。1991年10月に稼働した1号機のほか、2002年までに5号機まで建設された。3~5号機は超々臨界圧石炭火力(USC)で、全体の総発電出力は410万kW。世界でも、もっともCO2排出量の多い10の発電所の一つとされる。

 

(注)1位の碧南火力発電所は、2019年にJERAに移管
(注)1位の碧南火力発電所と10位の常陸那珂火力発電所は、2019年にJERAに移管

 

 同発電所の2545万㌧のCO2排出量は、日本の一般家庭に換算すると、636万世帯分に相当する。2位から8位まで、JFEスチール、日本製鉄、神戸製鋼の高炉製鉄が続く。鉄鋼業は石炭コークスを大量に使い最もCO2排出量の大きな産業のひとつ。9位の東北電力の原町火力発電所も、10位の東京電力F&Pの常陸那珂火力発電所も、いずれも石炭火力発電所。

 

 上位10事業所の排出量の合計は約1億6151万㌧で、日本の総排出量の12.5%を占める。11位以降も、石炭火力発電所や天然ガス火力発電所、高炉製鉄の事業所が続く。KIKOでは、日本に600万以上ある事業所のうち、上位約130の発電所と工場で日本の総排出量の半分強を排出していると指摘。

 

 政府の「2050年カーボン・ニュートラル」を達成するには、これら130の事業所の「脱炭素」が最大の課題になる。これらの事業省を抱える企業別のCO2排出データについては、制度を担当する環境省は公表していない。同制度自体、抜本見直しが必要だが、市場調査では、東京電力と中部電力の石炭火力事業を統合したJERAが一位で、次いで日本製鉄、関西電力、JFEホールディングスの順。やはり排出量の多い事業所を抱える電力、鉄鋼の二大業種の企業で占められている。

 

日本のCO2排出量の過半は130の事業所からの排出で占められている
日本のCO2排出量の過半は130の事業所からの排出で占められている

 

 政府はCO2削減を、「一人ひとりが身近で小さなことを」と国民運動としての取り組みをアピールする。だが、130の事業所、これらを保有する数十社の炭素集約型企業の排出量を、集中的に削減することが経済的にも合理的であることは明白だ。にもかかわらず、神戸や横須賀等では、政府が建設を許可した新規の石炭火力発電所の建設計画が進むなど、政策目標と矛盾した取り組みが行われている。

 

 KIKOでは、「発電所や工場の話をせずに『みんな一人ひとりの責任だ』とばかり言うことは、『利益のためにたくさんのCO2を出してきた企業』『これからもたくさんのCO2を出すつもりの企業」の責任を見えにくくしてしまう」と指摘し、政府の電力・鉄鋼業界寄りの姿勢を問題視している。

https://www.kikonet.org/kiko-blog/2021-08-31/4492

https://www.kikonet.org/wp/wp-content/uploads/2021/05/pr_analysis-on-ghg-emissions-data2017_jp.pdf