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日本ガイシ、電力事業テコ入れ 輸出品 中国でも生産(各紙)

2012-06-20 07:24:21

日本ガイシの加藤太郎社長
日本ガイシの加藤太郎社長


各紙の報道によると、日本ガイシは電力事業をテコ入れする。電力用碍子(がいし)は現在、欧米向けなどの輸出品を国内のみで生産しているが、2015年までに既存の中国工場でも生産を始める。コスト低減などで競争力向上につなげる狙い。一方、事業再開のメドが立った電力貯蔵用のナトリウム硫黄(NAS)電池については海外での販売を強化する。6月19日に加藤太郎社長が明らかにした。

電力用碍子は愛知県の小牧市と半田市、中国の蘇州市、唐山市の計4カ所の工場で生産している。国内2工場は日本国内向けの製品と欧米や中東、南米などへの輸出品を生産。中国の2工場で生産する製品は現地の需要に対応している。


 国内で生産する輸出品について、加藤社長は「15年までに低価格品を中心に中国に順次移管し、生産コストを引き下げる」方針を示した。輸出品は地域や国ごとに仕様が異なるため、日本の生産ノウハウも移し、多品種生産にも対応する。




 中国では同社が受注を見込んでいた内陸部から沿岸部への送電網の着工が遅れるなど内需が伸び悩んでいる。「中国の2工場の能力に余力がある」(加藤社長)ことも、中国で輸出品を生産する背景だ。




 中国での生産拡大に伴って国内の2工場は碍子の生産能力を縮小。工場の余剰人員とスペースは同社の稼ぎ頭である自動車用の排ガス浄化装置などセラミックス事業を中心に振り向け、「雇用と国内のものづくりを維持する」(加藤社長)。




 同社の碍子の売上高は12年3月期で549億円。今期は中東などの案件をもとに21億円の増収を見込む。ただ国内では電力各社が設備投資を絞っているほか、中国の需要の伸びも鈍いことから、加藤社長は「当面は同水準の売り上げが続く」とみている。このため生産機能の見直しでコスト競争力を高め、中国の現地企業など海外の競合メーカーに対抗する。




<NAS電池 海外販売に力 新事業創出へ企画室新設――加藤社長に聞く>




 日本ガイシの加藤太郎社長に現状と課題を聞いた。




 ――碍子と並ぶ電力事業の柱であるナトリウム硫黄(NAS)電池がようやく再始動する。

「昨年9月に発生した火災事故の原因を特定し、再発防止策もまとめた。早急に納入済みの電池の改造に着手し、10月以降に新規生産を再開する。料金の安い夜間電力をためたり、風力発電などの電力を安定供給したりできる大容量電池は他になく、引き続き需要はあると考えている」


 ――国内の電力会社は設備投資を絞っている。




 「当面は海外での販売に力を注ぐ。中国や欧州、中東などで現地の重電メーカーなどと組み需要を開拓する。NAS電池は案件の規模によって売り上げに幅があり、浮き沈みが激しい。成長軌道に乗せるには多数の案件を獲得するしかない」




 ――NAS電池に続く新事業の創出が課題だ。




 「新たな柱となる事業の芽を2015~20年に生み出す必要がある。そのため『新事業企画室』と呼ぶ部署を4月に新設した。技術者や研究者だけでなく、営業畑のスタッフを入れたのが特徴。新事業のタネを多角的にながめ、研究所と二人三脚で大きく育てる」