全日空と日本航空、「2050年ネットゼロ」に向け、持続可能な航空燃料（SAF）の活用促進で共同歩調宣言。2030年までに使用燃料の10%をSAFに切り替え目指す（RIEF）
2021-10-12 22:40:14
全日本空輸（ANA）と日本航空（JAL）は8日、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、持続可能な航空燃料（SAF）の活用促進に関する共同レポートを発表した。その中で①2030年には最低でも使用燃料の10%をSAFへ移行②2050年にネットゼロを実現するために日本国内各空港で給油に必要なSAF量は最大約2300万KL③アジアでのSAF市場は2050年には約22兆円――等の試算を示した。
（写真は、SAF開発促進で協調路線をとるANAの平子裕志社長㊧と、JALの赤坂祐二社長㊨）
両社ともに9月22日に、SAFの導入促進を目指す世界経済フォーラムのクリーン・スカイズ・フォー・ トゥモロー・コアリション（Clean Skies for Tomorrow Coalition）に参画したことも明らかにした。世界の航空業界で使用される燃料に占めるSAFの割合を、2030年までに10％に増やすことを目指す「2030 Ambition Statement」に署名した。
共同レポートでは、2050年CO2排出実質ゼロを実現するには、2030年には最低でも使用燃料の10%をSAFへ移行する必要があるなどの試算結果を示した。SAFはバイオマスなど、収集・生産から燃焼までのライフサイクルでCO2排出量を従来の燃料より約80%削減できるため、航空輸送のCO2排出実質ゼロを実現するうえで不可欠な代替燃料と位置付けている。
両社はすでに、2050年までに航空機から排出するCO2実質ゼロの実現に向けて、省燃費機材への更新、運航上の工夫等で、使用する燃料の削減に取り組んでいる。航空輸送でのCO2削減では、航空機メーカーが電動航空機や水素航空機の開発を進めている。だが、レポートでは「現在のところ、中大型の航空機は引き続き液体ジェット燃料が必要となる見通し」として、SAFの量産と普及が必要としている。
SAFの場合、空港等での給油時に既存のジェット燃料等の給油インフラをそのまま活用できる利点も評価している。ただ、現在の世界のSAF生産量は需要の0.03%未満に留まっている。そこで2030年に最低でも使用燃料の10%をSAFへ移行するマイルストーンを打ち出すことで、需要主導での供給拡大を求めている。
SAFの需要については、2050年ネットゼロを実現するうえで、国内航空会社の国内線と国際線、および日本に就航する外国航空会社が日本の各空港で給油するために必要なSAFの量として最大約2300万KLと試算している。ただ、政府のSAF開発支援が遅れてきたため、未だに国産SAFは商用化のメドが立っていない。
このため、2030年に向けては、輸入SAFを前提にサプライチェーンの整備を急ぐことが重要、としている。輸入SAFは先行する欧米や、開発投資に力を入れている中国等からの導入が主になるとみられている。
レポートでは、2050年の全世界のSAF供給量を445Mt（5550億L）と推計。このうち、アジア圏の航空需要がおよそ40%を占め、22兆円に達すると試算している。SAF単価は100円/Lとした。これは菅前政権による「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」で2030年のSAF価格を100円台/Lとしたことを受けている。
両社は、新型コロナウイルス感染症の収束後に航空需要が回復し、経済成長を支える公共交通インフラとしての役割を再び担っていくうえで、SAFの活用は持続可能な航空輸送の実現に向けて有効なソリューション、と位置付けている。そのうえで、SAFの技術開発、量産、普及にかかるインフラ投資への政府支援とあらゆる産業セクターで横断的に取り組むことが重要とし、2社は共同で持続可能な航空輸送を未来に継承することを目指すとしている。
https://www.anahd.co.jp/group/pr/202110/20211008.html
https://www.anahd.co.jp/group/pr/pdf/20211008-1-1.pdf
https://press.jal.co.jp/ja/release/202110/006263.html
https://press.jal.co.jp/ja/items/uploads/29b739f32e77631451b59a6c03bf77b906ac9e8a.pdf
Research Institute for Environmental Finance