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G20首脳会議、「石炭火力離れ」できず。海外での石炭火力への金融支援停止では合意するも、CCUS等があれば対象外。国内の石炭火力停止も合意せず。SFWGロードマップは採択(RIEF)

2021-11-01 11:35:52

G20Italy002キャプチャ

 

  G20(20カ国)首脳会議は31日、首脳宣言を採択し閉幕した。宣言では、2021年末までに海外の石炭火力発電への金融支援を停止し、世界の温暖化ガス排出量を「今世紀半ばごろまでに」に実質ゼロにする目標で一致した。ただ、CCUS等の削減技術を併設する海外石炭火力は合意の対象外とするほか、G20各国の国内石炭火力も停止等の対象にはしなかった。新興国の「エネルギー事情」と、日本等の石炭火力擁護国の利害に配慮の形となった。

 

 IFRSが進める国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)設立等の環境情報開示の共通化等を盛り込んだ「サステナブルファイナンスワーキンググループ(SFWG)」のロードマップについては了承した。

 

 石炭火力発電の縮小については、「海外の新規の石炭火力への国際的な公的ファイナンスに終止符を打つ」ことを合意事項として盛り込んだ。しかし、CCUS等の削減技術を伴うか、既存の通常の石炭火力にCCUS等を新規設置するもの等は対象外とする。石炭とバイオ燃料の混焼についても同様に対象外とみられる。G20各国内の石炭火力の縮小や廃止にも言及しなかった。

 

ローマに集まったG20の首脳たち
ローマに集まったG20の首脳たち

 

 この結果、海外での石炭火力発電事業は、「CCUS+混焼」をベースとして今後も継続される方向が示されたことになる。経済成長に伴うエネルギー需要の高い東南アジア等での需要に配慮した形だ。またCCUS技術については日本、中国に加え、欧米諸国でも力を入れている。

 

 CCUS技術については世界中で実証実験や一部実用化が進んでいる。現状は、コスト面の高さとともに、技術的には回収したCO2の貯蔵、利用面では依然、開発途上とされる。実証プラントの中には設計通りの機能を果たせないものも報告されている。気候変動対応の迅速化が求められる中で、「開発途上のCCUS」に期待をかけて石炭火力発電を継続する判断でG20が合意したことは、31日から始まる国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)にも影響を及ぼしそうだ。https://rief-jp.org/ct4/109928

 

 一方、首脳会議で了承されたSFWGの「ロードマップ」では、20カ国が今後、金融面から気候変動やサステナビリティ課題に取り組むうえで、5分野と19の行動を示した。優先対象は、①サステナビリティ投資に適合する比較可能性と相互運用性の改善②サステナビリティ情報開示と報告の改善③パリ協定と国連の持続可能な開発目標(SDGs)支援のため国際公的金融機関(IFIs)の役割を高める――の3点。https://rief-jp.org/ct4/119067?ctid=71

 

 焦点の一つのトランジションファイナンスについては、タクソノミー、ラベリング等を活用し、信頼できる基準、経路、目標、低炭素発展戦略等の把握、開発を求めた。タクソノミーについては、比較可能性の確保を求めたが、国際共通化の議論には正面からは触れていない。

 

https://www.g20.org/wp-content/uploads/2021/10/G20-ROME-LEADERS-DECLARATION.pdf