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ブラジルの2020年の温室効果ガス排出量、コロナ禍にもかかわらず9.5%増。アマゾンの森林等の伐採・開発による「土地用途変更」が23.7%増となり「CO2吸収力」が急減(RIEF)

2021-11-01 16:46:28

Brazile0044キャプチャ

 

  世界全体の2020年の温室効果ガスの排出量は、コロナ禍で減ったにもかかわらず、ブラジルでは前年比9.5%増となった。増加の要因はコロナ禍でも森林破壊が増大したことが最大だ。同国の経済活動はコロナの影響で減少し、GDPは4.1%減。エネルギー部門からの排出量も4.6%減だった。だが、ボルソナロ政権が推進するアマゾン開発等での「土地用途変更」でCO2排出量は逆に大幅に増加した。

 

 ブラジルの環境保護団体の連合組織である「ブラジル気候観測所(Brazilian Climate Observatory)」が発行した SEEG (Greenhouse Gas Emission Estimation System)が報告書で明らかにした。それによると、2020年の同国の温室効果ガス排出量は21億6000万㌧。19年の19億7000万㌧から9.5%増。2006年以降で最も排出量の多い年になった。

 

 20年の世界全体のGHG排出量はコロナの影響でほぼ7%減。ブラジルも他の国と同様、コロナの影響を受けて工業生産や航空便は停滞した。その結果、エネルギー部門からのCO2排出量は前年比4.5%減、産業部門からは0.5%増と鈍った。同部門の排出総量は3億9400万㌧で2011年の排出水準にまで戻った。

 

「アマゾンを牧草と穀倉地帯に変えるぞ~!」。ボルサナロ大統領
「アマゾンを牧草と穀倉地帯に変えるぞ~!」。ボルソナロ大統領

 

 しかし、アマゾン等の森林を伐採して農業・畜産等に転用する土地用途変更は前年比23.7%も増え、森林が担っていたCO2吸収力はその分減った。農業部門からの排出量も2.5%増で、増加率は2010年以来、最大。コロナの影響で牛肉消費が低迷し食肉牛の処分率が8%減となった結果、牛の飼育頭数は300万頭増え、餌の反芻によるメタン排出量が増えたためという。

 

 最大の排出増加要因となった土地の用途変更は、アマゾン地域等で続く違法・合法両面での森林伐採や焼き払い等により、森林が持つCO2吸収力が失われる結果につながった。「土地用途変更」による全体の排出量割合は46%と半分近くに迫った。いったん森林を森林から農地や牧草地に転用すると、失われたCO2吸収力はその後、継続的に影響する。

 

 廃棄物部門からの排出量は9200万㌧で前年比1.8%増。排出量の大半は、廃棄物の埋め立てや投棄で発生しているという。廃棄物量は年々増えており、2020年は前年比10%増だった。廃棄物処理からのCO2排出量は1970年以来、急増を続けている。だが排出量全体に占める割合は4%に過ぎない。

 

 土地用途変更によるCO2排出力の喪失は、アマゾン川流域部と、ブラジル中部のカンポ・セハード地域で合計9億800万㌧に達した。このうちアマゾン流域で7億8200万㌧、セハード地域で1億300万㌧となっている。これらを国別の排出量に置き換えると、用途変更で失われた吸収力(排出量増加)はドイツの排出量よりも多いことになる。

 

 今回の報告書作成に関わったアマゾンの環境研究機関のIpam(Institute for Environmental Research of the Amazon)の科学担当者、 Ane Alencar氏は「土地用途の変更が、再びブラジルでの最大の排出源のとなった。2020年は過去11年間で最大の排出量となり、森林開発優先の環境政策の結果を明瞭に反映している」と指摘。ボルソナロ政権の開発政策によって排出増(吸収力減)が起きたと指摘している。

https://www.oc.eco.br/en/na-contramao-do-mundo-brasil-aumentou-emissoes-em-plena-pandemia/