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欧州で開いた「第2回アフリカ適応策サミット」、先進国側の首脳の出席は一人だけ。アフリカからは3カ国の大統領が訪欧。アフリカ側は不快感示す(RIEF)

2022-09-07 15:40:34

Africa001キャプチャ

 

 今月5日にオランダ・ロッテルダムで開いた「アフリカ・アダプテーション・サミット」で、EUら先進国の首脳がほとんど参加せず、アフリカ諸国の不興を買う事態となった。アフリカからは、セネガル、ガーナ、コンゴ民主共和国(DRC)3か国の大統領が直接参加した。先進国からは開催国オランダの首相一人。EUはロシアによるウクライナ侵攻、エネルギー不足、インフレの高進等、課題山積なためとみられるが、EUをはじめとした先進国がアフリカの気候適応問題を「二の次」と見なしている形となり、今後のCOP交渉等にも影響を与えかねない。

 

 (写真は、㊧がセネガル大統領のMacky Sall氏、㊥はDRC大統領のFelix Tshisekedi氏)

 

 英Climate Home Newsによると、「アフリカ・アダプテーション・サミット」は、オランダが主導して2018年に設立した「Global Center on Adaptation(GCA)」が昨年初めて実施、今回が2回目だった。GCAによると、招待したEU等の先進国首脳としては、オランダ以外に、GCA設立に同意したフランス、ノルウェー、デンマーク、カナダ、フィンランド等をあげている。

 

 アフリカからは、セネガル等の3カ国の大統領が、ロッテルダム入りしたほか、エチオピアの大統領らはオンラインで参加した。しかし、参加したアフリカ諸国の首脳たちは、EUを中心にした先進国首脳の「不在」にあきれ返った様子となった。先進国の首脳は唯一、開催国のオランダのルッタ首相だけだった。

 

 これに対して、セネガル大統領のMacky Sall氏は「 幾分の苦々しさとともに、先進国の首脳のサミットでの不在を指摘しないわけにはいかない。われわれがアフリカからロッテルダムに来るまでの苦労を考えれば、EUの人や他の先進国の人が、ここに来る方が容易なのではないか」と指摘。

 

 ガーナ大統領のNana Akufo-Addo氏とDRC大統領の Felix Tshisekedi氏も、異口同音に、「先進国リーダーたちの不在」に不満を表明した。オンラインで会合に参加したエチオピア大統領のSahle-Work Zewde氏は各大統領の不満に同調したうえで、「本来、出席すべき人たちがいない場で、お互い見知ったわれわれ(アフリカ勢)が話し合ってもあまり意味がない」と付け加えた。

 

 国連の事務次長のAmina Mohammed氏は「今回のサミット会合はいびつな会合になってしまった。『鳥は翼が二つあって初めて飛べる』と言われる(これでは気候対策は十分に進められない)」と指摘した。

 先進国は、産業革命以来、温室効果ガスを大量に排出し続けてきた。これに対して途上国は、温暖化への寄与度は先進国ほどではないのに、気候変動が原因となる自然災害の増大や食糧不足等の影響を被ってきた。アフリカの気候変動への歴史的な関与は、地球全体の3%に過ぎない。97%は先進国による影響とされる。

 

 このため、2009年のCOPで、先進国は2020年までに毎年1000億㌦の気候ファイナンスを途上国に供給すると約束した。しかし、実際には最大の拠出国の米国が、トランプ前政権時代に、気候変動枠組み条約から離脱するなどの行動をとって、拠出金も凍結したことから、約束通りの資金供給はできなかった。目標年の2020年では1000億㌦に対して、170億㌦不足している。

 

 昨年のCOP26で米国を除く先進国グループは、途上国の適応事業へのファイナンス供与を、2019年の水準から、2025年までに倍増することを公約している。年間200億㌦から400億㌦に引き上げることを意味する。ただ、途上国側はこれで十分だとはしていない。

 

 ロッテルダムでのサミットで、セネガルのMacky Sall氏は、先進国が約束したファイナンスを十分に供給しない問題が、アフリカ諸国の排出削減の公平さ、生存可能性と関連付けて、同国は海上での石油・ガス掘削事業を促進し、DRCは熱帯雨林や泥炭地での石油事業の鉱区入札を進めるとした。

 

 Sall氏は「これらの事業を進めることでアフリカ諸国が、地球が緊急事態に陥っている中で、汚染を進める事業に取り組むことを非難されたとしても、 そうした非難は、適応の費用を衡平にシェアし、さらに先進国が公約した年1000億㌦の金融支援を守ってこそ、言える言葉だ」と、先進国に対して、やや挑発的な物言いをした。

 

 国連環境計画(UNEP)の推計では、途上国全体で、2030年までに毎年、3000億㌦の適応事業への拠出が必要とされる。また主要なアフリカ諸国がすでに実施している適応のための投資額はGDPの2.8%に達しているとの分析もある。

 

 Climate Home Newsによると、 先進国の唯一の首脳として参加したオランダのルッタ首相はサミット会合の場で、「もっと多くの欧州の僚友たちがこの場にいてくれればよかったが」と漏らした。

 

 同メディアは、サミットに招待されていた先進国側の首脳たちがサミットの日にどうしていたかの動静も調べた。たとえば、フランスのマクロン大統領は、同国内の地方代表者たちとの面談に時間を割き、カナダのトリュドー首相は、サスカチュワン州で起きた殺人事件のため国内にとどまったとしている。

 

 フィンランドとノルウェーの両国は、首脳が当日、どういう公務に従事していたかという問い合わせには答えなかったとしている。デンマークのメッテ・フレデリクセン首相は当日、国内で戦没将兵追悼記念日の式典に出席した後、ビデオで、サミットにメッセージを送った。

 

https://www.climatechangenews.com/2022/09/06/african-leaders-blast-european-no-shows-at-climate-adaptation-summit/