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異常渇水が長期化するスペイン。果樹農家らが水確保のために違法に掘った井戸の摘発で26人逮捕。違法井戸は「250本」。温暖化加速の影響で「水泥棒」騒ぎに(RIEF)

2023-05-12 21:50:32

Spain006キャプチャ

 

  干害の連続が3年目に入っているスペインで、マンゴーやアボガド等を栽培する地中海に面した地域の農家が、栽培用の水を確保するために、違法に井戸を掘ったとして警察に摘発された。「水泥棒」だ。250本の違法井戸が摘発され、逮捕された農民は26人に上るという。気候変動の影響が広がり、水を多用する果樹栽培を行う農家が、やむにやまれずに違法井戸での水確保に手を出したとされる。気候変動の激化が社会的摩擦を引き起こす「不都合な実例」だ。

 

写真は、違法井戸を摘発するスペインの警官ら=yahoo!Newsより)

 

 各紙の報道によると、スペインのほか、イタリア、ポルトガル等の南欧地域では、昨年に続いて今年も気温が高く、雨の降らない季節が続いている。歴史的な少雨の影響で、スペインの水量は通常の年の半分の状態という。3月以降、ほとんど雨が降らず、加えて4月には熱波が発生し、農業生産者にとって最悪の環境になっている。気温もまだ夏には3カ月も早いのに、40℃に近い日々が続いている。

 

   スペイン国土の60%は干害に襲われており、同様にイタリアやポルトガルでも農家が壊滅的な打撃を受けている。日照りが続くことで、植え付けた穀物はしおれ、各地で植え付けの遅れや、成長不足が広がっているという。このため、食料不足の懸念から、食料品価格の上昇につながるリスクも出ている。

 

違法井戸の捜索の様子
違法井戸の捜索の様子

 

 スペインで摘発された違法井戸は、地中海に面したマラガ地方のAxarquía地域。299本の井戸のうち250本が許可を得ず、違法に掘削されていたという。同国では地下水は国が保有する形のため、井戸を勝手に掘った農民たちは国庫資産をかすめ取った容疑をかけられる。違法に使用された水資源の損害額は、警察は1000万ユーロ(約14億8500万円)に上るとしている。同地での干害は2021年6月以来、異例の状況で続いており、3年目に入っている。

 

 警察の調べによると、同地はマンゴーやアボガド等の果実の栽培で知られる。異常に長引く少雨の影響下で、農民たちが何とか水を確保しようと違法に井戸を掘ったことが見つかった。同地だけでなく、南欧地域全般での農業は果実と野菜が主な生産物で、いずれも水の供給が欠かせない。しかし、長引く干害の影響は果樹の生育を危うくさせているだけでなく、水田を干からびさせ、オリーブの生育もダメージを受けている。

 違法井戸の掘削の摘発では、警察は4年前から調査を進めてきたという。逮捕された26人のほかに、39人が違法井戸の水を使って収益を上げていた疑いで調査を受けているという。農民たちは、干害の長期化で自らの農業継続が危機的状況に陥ったため、死活状態で井戸を掘った形だ。同様の干害が続く同国北西部のカタロニア地方では、農民たちがトラクターを連ねて、政府に緊急の渇水対策を求めるデモ行進を行っている。

農民たちが水確保を求めて政府に抗議する「トラクターデモ」
農民たちが水確保を求めて政府に抗議する「トラクターデモ」

 

 長引く干害の原因としては、気候変動が激化する影響で、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけての海面水温が平年より高くなる「エルニーニョ現象」が、通年よりもさらに長期継続的になっているためとの見方が強まっている。同現象は世界中に異常気象を誘発する要因となっている。

 イタリアでも同様の干害が広がっている。同国で最も長いポー川はアルプスを源流として、同国北部を横断する形で流れ、その沿岸地域は豊かな農村地帯で知られる。ところが通年だと2月末から3月にかけて降る雪が、今年はほとんど降らず、河川沿岸の土壌は乾燥しきっているという。イタリアの農業グループ Confagricolturaの代表のMassimiliano Giansanti氏は「時間が立てばたつほど、穀物の収穫が減ってしまう状況」と嘆いている。

 イタリアの卸売業者Italmercatiの代表、Fabio Massimo Pallottini氏によると、「気温の急激な変化と少雨の影響で、トマトの収量や価格は大きく変動し、同地域の主食の価格は2022年比ですでに30%アップが続いている」という。しかし、イタリアでは今週末に、急に発達した低気圧によって一部地域で一時的な大雨が降るなど、気候の変動が激しくなっている。

 少し緯度が高いフランスの小麦や大麦等の穀物類はシーズンのはじめとしては良い生産状況だという。もっとも、同地でも地下水の水位は低いままになっている。一方で、ドイツやポーランド等の東部地域では、過去30日間での雨量が例年よりも倍増するなど、南欧地域とは逆の気候状況になっている。

すっかり干上がった貯水池
すっかり干上がった貯水池

 

  スペインで干害の影響を受けている地域は、灌漑で栽培する穀物類を含め350万ha以上とみられる。ナッツ果樹園やぶとう畑等は、水不足で植物の発芽に苦労しており、これらの果樹類の発芽が遅れて開花が少ないことで、花から蜜を集めるミツバチ養蜂家も影響を受けるという、悪影響のドミノ現象も起きているという。

 イタリアの首相のGiorgia Meloni氏は、さらなる気温上昇となる夏が始まる前に、渇水対策を強化するため、「水緊急対策ツァ-リ(皇帝:担当大臣の意味)」を任命した。新「ツァーリ」に任命されたNicola Dell’Acqua氏は、同国で過去70年間で最悪の干害対策の司令本部を設置、対策作りに乗り出している。北部地域の河川や湖沼の水位が4分の1に下がっていることから、水配給制度の導入等を検討していると伝えられている。

Spain Arrests 26 People for Digging Illegal Wells – Bloomberg

https://edition.cnn.com/2023/05/02/europe/spain-drought-catalonia-heat-wave-climate-intl/index.html#:~:text=Spain%20has%20been%20in%20a,second%20driest%20March%20this%20century.

https://news.yahoo.com/fruit-growers-arrested-using-illegal-121026346.html