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世界気象機関(WMO)。世界の気温上昇は今後5年間で過去最高レベルとなり、産業革命前以来の「1.5℃」の突破の可能性66%と推計。エルニーニョの影響が気温上昇に拍車(RIEF)

2023-05-20 22:44:24

WMO001キャプチャ

 

  世界気象機関(WMO)は17日、世界の気温は2027年までの今後5年間で、過去最高レベルになる可能性が高いとする予測を発表した。温室効果ガスによる熱上昇で加速されることと、今年後半からのエルニーニョ現象が拍車をかけるとみている。推計では2023年~27年までの間にグローバルな気温の年間平均が1.5℃以上になる可能性は66%とした。同可能性が50%を上回ったのは史上初という。

 

 今回の予測は、英気象庁など11の研究機関から145人の科学者が分析に加わった。それによると、今後5年間のうち、少なくともどれか1年間あるいは、5年間すべてで1.5℃を上回る過去最高の気温になる可能性が98%ある。

 

「1.5℃」上昇の確率が高まった理由には、GHG排出量の増大とともに、エルニーニョ現象の影響が挙げられている。同現象は東太平洋の赤道付近での海洋の温度が平年よりも上昇することで、地球全体の気温を引き上げる効果が高まることをいう。今後、数カ月以内に影響の高まりが予想されている。

 

今後5年間の地球の表面気温の予測
今後5年間の地球の表面気温の予測。

 

 WMOの事務局長のPetteri Taalas教授は「今回の報告は、パリ協定の目標である『1.5℃』を永久的に超えてしまうということを意味するものではない。しかし、今後、一時的にしろ『1.5℃』レベルを突破することに対して警告を発する。特にエルニーニョの影響は人の健康、食料安全保障、水資源マネジメント等の分野で広範囲な影響を及ぼす。それへの備えが必要だ」と述べている。

 

 同事務局長は、「1.5℃」突破の可能性が高いことを指摘する一方で、「一時的に1.5℃を超えたとしても、それがすぐにパリ協定の目標が達成できなかったことを意味するわけではない」として、気温上昇の加速と定着を防ぐために、気候変動対策の継続と強化が必要という点を強調している。

 

 5年間の中位値で「1.5℃」の閾値を超える可能性は、32%としている。これは2015年の「ゼロ%」から確実に上昇し、2017~21年は10%となっていた。WMOの予測分野の主任である英気象庁のLeon Hermanson博士は「世界の気温の中位値は、今後さらに上昇を続けると予想される。われわれがこれまで馴染んできた気候から、ますます遠ざけていくようになる」と指摘している。

 

 観測によると、2022年のグローバル平均気温は、1850~1900年平均より1.15%上昇している。これまで過去3年間はエルニーニョ現象とは逆の影響を及ぼすラニーニャ現象が起きていたので太平洋の赤道域の東部・中部地域では海水温の低下がみられた。だが、同現象は今年3月に終わり、エルニーニョ現象が今後数カ月以内に発生するとみられる。今年後半から24年にかけて同現象の影響が続く見通しだ。

 

 こうした影響によって、グローバルな海洋の表面近辺の温度は今後の5年間で、人類の産業・経済活動の影響が反映していなかった1850~1900年平均よりも1.1℃~1.8℃の上昇になる見通し。「1.5℃」上昇の範囲に入ることになる。

 

 地域的には北極圏の気温上昇がグローバル平均よりもさらに大きくなる。同地域の今後5年間の気温は1991~2020年平均と比べると、3倍以上の上昇になる見通しだ。また今後5年間の5月から9月までの平均降雨パターンは91~20年平均に比べて、アフリカのサヘル地方や北欧、アラスカ、北シベリアで降雨が増加し、アマゾンやオーストラリアの一部で少雨が予想されている。

https://public.wmo.int/en/media/press-release/global-temperatures-set-reach-new-records-next-five-years

https://hadleyserver.metoffice.gov.uk/wmolc/WMO_GADCU_2023-2027.pdf