グテーレス氏は、同メッセージの中で、2024年は「希望を見いだすのは困難な年だった」と振り返った。その要因として、ウクライナ、ガザでの戦争の継続や、米国での政治的対立の増大、欧州での右派の台頭などの社会の分断による影響等が各国の気候対応での協力の進展を阻んだ点をあげた。
温暖化の加速による2024年の地球全体での気温の上昇は、観測史上過去最高を記録した点を踏まえ、「われわれは、今年(2024年)を頂点とするこの10年間、致命的な暑さに耐えてきたということが出来る。記録上最も暑い年のトップ10は、24年を含め、この10年間に起こっている。これはリアルタイムで進行している『気候の崩壊』だ。もう時間を無駄にしている余裕はない」と強調した。

国連の気象機関の世界気象機関(WMO)は、年明けの1月に、24年全体の公式気温を発表する予定だ。だが、同氏は24年だけでなく、過去10年単位で、人類の経済活動によって未曾有の熱波が引き起こされているとして、「24年の史上最高気温の更新は一年だけの問題ではない」とした。実際にも、熱波を含めた異常気象が増える中で、GHG濃度は過去最高値を更新し続け、来年以降の将来に向けてさらに多くの熱が地球に蓄積されるとし、来るべき1年も記録上最も気温の高い年になるだろう、と述べた。
その上で同氏は、「2025年には、各国は排出量を大幅に削減し、再生可能な未来への移行を支援することで、世界をより安全な道へと導かなければならない」と指摘、「それは不可欠であり、また可能だ」とした。
同氏は「希望」について、「私は、進歩のために声を上げる若者や高齢者を含む活動家たちに希望を見出している。 最も弱い立場の人々を支援するために、大きな障害を乗り越える人道主義の英雄たちにも希望を見出している。 そして、金融と気候の正義のために戦う発展途上国にも希望を見出している。 人類のために新たな境地を開拓する科学者や革新者にも希望を見出している」と述べた。
それらに加えて、9月に世界のリーダーたちが一堂に会し、『未来のための協定』を採択したことにも希望を見出せるとした。「われわれが力を合わせれば、2025年を新たな始まりにすることができる。世界が分裂したままではなく、各国が団結した形で」と付け加えた。
同氏が言及した「未来のための協定」は、気候問題や新型コロナウイルス感染等の人類全体に影響を及ぼす世界的な脅威に対して、現状は、各国や人々が協力して立ち向かうのでなく、むしろバラバラになっているという現状認識を踏まえ、グローバル協力の将来像を提示するために、9月に2日間のサミットを開き、合意した文書を指す。
同サミットでは、5つの主要議題(持続可能な開発と資金調達、平和と安全、すべての人々のためのデジタルの未来、若者と将来世代、グローバル・ガバナンス)と、人権やジェンダー平等、気候危機など、国連のあらゆる活動にまたがる分野でのグローバル協力の強化を改めて問いかけている。
グテーレス氏の指摘を受ける形で、WMO事務局長のセレスト・サウロ(Celeste Saulo)氏も発言。24年に地球全体で顕著にみられた気温上昇は「(気候崩壊の)全体像の一部に過ぎない」と指摘し、「気温上昇はすべて気候の極端化につながる」と述べた。「24年は記録的な降雨と洪水、そして多くの国々で多くの人命が失われ、各大陸の地域社会に大きな悲しみをもたらした」と振り返った。
24年は年間を通じて、強力なハリケーンや熱帯低気圧の襲来で各地で甚大な被害が生じたことに言及。最近でもインド洋に浮かぶフランス海外県マヨット島(Mayotte)で、前例のない人的・経済的被害をもたらした点をあげた。 猛烈な暑さは数十カ国を襲い、気温が50℃を超える日々が連続した。 各地で頻発した山火事も壊滅的な被害を周辺地域の住民と生態系にもたらした。
こうした気候被害により、世界中の気候研究者で組織する「世界気象帰属(WWA)」の調査では、2024年に調査対象となった29の異常気象のうち、大半の26の気象現象が、気候変動によって激化し、少なくとも3700人が死亡、数百万人が避難を余儀なくされたとしている。24年には、危険な暑さが41日間も増えた点も指摘している。
こうした「気候崩壊」のリスクが高まる一方で、米国では気候変動に懐疑的なトランプ政権が年明けに発足し、パリ協定からの再離脱を実施するのが確実な情勢となっている。これまで気候対策で世界をリードしてきたEUでも、各国での右派の政治的台頭で、「気候対応より競争力強化」への政策シフトの可能性が指摘されている。破滅への道から脱出できるのか、破滅への道を早めるのか。2025年は、人類に将来を見据える英知があるかどうかが問われる1年になりそうだ。
(藤井良広)

































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