HOME |JERA。インテリジェンス機能強化で、独自のシンクタンク設立。モデルは長期エネルギー予測で有名なシェルの「シナリオチーム」。気候科学を否定したエクソンの悪例に陥らないで(RIEF) |

JERA。インテリジェンス機能強化で、独自のシンクタンク設立。モデルは長期エネルギー予測で有名なシェルの「シナリオチーム」。気候科学を否定したエクソンの悪例に陥らないで(RIEF)

2025-01-06 14:38:16

スクリーンショット 2025-01-06 134959

 

  日本最大の火力発電設備を抱えるJERAは6日、国内外のエネルギー動向にかかわるインテリジェンス機能の強化のために、シンクタンク「JERA Global Institute」を1月1日付で設立した、と発表した。同組織は、長期のエネルギー予測で有名なシェルの「シナリオチーム」がモデルとしている。新シンクタンクは、抱える火力発電設備を、2050年に向けてもアンモニア燃焼やCCSの併用等で維持することを前提とする現在のJERAの経営戦略に対して、最適解のシナリオを示せるかが課題だ。

 

 JERAは独自のシンクタンクの役割について、「グローバルおよび日米欧アジアの主要地域で、エネルギー・環境分野を中心に、マクロ経済、政治・政策、主要産業、マーケット、技術の進展、社会動向、地政学リスクを幅広く網羅することで、最適なクリーンエネルギー供給基盤の構築に向けた羅針盤となり、公共インフラを支えるエネルギー企業のシンクタンクとして、JERA事業を通じた社会貢献を果たしていく」としている。

 

 シンクタンクのトップには、みずほフィナンシャルグループのみずほリサーチ&テクノロジーズで技術・事業開発本部長などを歴任した宗國修治氏が就任した。内外で30人前後のアナリスト等を抱える。各アナリストはエネルギー、産業分野の専門家だけでなく、国際政治・政策制度の専門家、米欧アジアの各国分析担当者などを配置する。

 

 宗國氏は「調査・分析にあたっては、外部の方々とのコミュニケーションを図りつつ、既成概念にとらわれない柔軟な発想で、中立的かつ客観的な視点から世界のエネルギー展望を描く。エネルギー事業者としてのJERAの実務と、シンクタンクの調査分析機能を生かしながら、他にはないインテリジェンスを提供していく」と述べている。

 

 同組織がモデルにするというシェルの「シナリオチーム」は、超長期予測の提供で知られる。かつては1970年代の第一次石油危機を予見したことで名をはせた。現在は、国際エネルギー機関(IEA)でチーフエコノミストを務めたラズロ・バロー(Laszlo Varro)氏が率いている。

 

 エネルギー企業が科学的な知見等に基づく将来展望を踏まえて経営に生かせるかどうかの見極めには、シェルの長期シナリオの事例のほか、米エクソン・モービルのケースも知られる。同社は1970年代に社内の研究者が化石燃料による地球の温暖化について早い段階から正確に予測していた。だが、同社の経営陣は長年気候科学に疑義を呈し、科学者たちの報告書を無視し、逆に気候問題に関する活動に反対するロビー活動を長年展開してきたことが、明らかになっている。

 

 JERAは現在、火力発電へのアンモニア混焼の実証事業を展開し、将来はアンモニア混焼等で火力発電を継続する経営方針をとっている。だが、現状の同混焼火力でのCO2削減は20%分でしかないにもかかわらず、「ゼロエミッション火力」等として広告宣伝活動を随所で展開しており、環境NGOから「グリーンウォッシュ広告」だとして批判を受けている。https://rief-jp.org/ct4/147925?ctid=

 

 新たに設立されたシンクタンクが市場の評価を得るには、気候科学に基づいた将来のエネルギーシナリオを設定し、現状のJERAの経営戦略の妥当性についても、中立的、合理的な視点で評価できるかどうかにかかっている。

 

 JERAのCEO兼COOの奥田久栄氏は「気候変動、資源制約、エネルギー安全保障等のグローバルな問題を乗り越えて、クリーンで安価なエネルギーを供給し続けることは、エネルギー事業者としての重要課題。JERA Global Instituteの戦略的インテリジェンス機能の活用により、世界のエネルギー問題に最先端のソリューションを提供していく」としている。

https://www.jera.co.jp/corporate/business/global_institute

https://www.jera.co.jp/news/information/20250106_2102

https://www.cnn.co.jp/business/35198564-2.html