2月の北極と南極の海氷面積は同月として過去最小。北極では「極度の熱異常」で気温が20℃以上上昇。冬の北極で氷点を上回る例も。「海氷不足で温暖化加速の懸念」EUのC3Sの観測(RIEF)
2025-03-10 00:40:37

(上図は、北極圏の海氷の毎年の推移の年度比較=C3Sより)
2月の世界の平均気温は13.36℃で、1月が月別気温で過去最高になったことに比べ、過去3番目だった。一方、目を引くのが、同月の北極と南極の両極地の海氷面積がともに過去最低記録を更新した点だ。2月初旬には北極で極度の熱異常が観測されており、気温は平均より20℃以上も上昇、一部では氷が溶ける氷点を超えた。科学者は「海氷が不足すると、地球が太陽光を吸収する能力が高まり、温暖化が加速する」と警告している。
EUの気候監視ネットワーク「コペルニクス気候変動サービス(C3S)」が公表した。2月で特筆されるのが海氷の減少だ。北極と南極周辺の氷の面積は同月初旬に1日としての最低記録を更新した。同月初旬の北極で観測された極度の熱異常により、北極一帯の気温は平均より20℃以上も上昇し、氷点下が常態の北極圏の一部では、氷点を上回る気温の上昇が起きたという。
ノルウェーのスヴァールバル諸島北部では、2月1日の時点で、すでに1991年から2020年の平均気温を18℃も上回る気温を記録した。実際の気温は氷の融点である0℃に迫る勢いだった。さらに2日には気温の異常値は20℃以上に上昇。C3Sのデータでは、2月2日の北極圏の北緯87°付近では絶対気温がマイナス1℃を超えた。また北極の観測装置の雪上ブイでの絶対気温は氷点を上回る0.5℃を記録したとしている。
フィンランド気象研究所の科学者ミカ・ランタネン(Mika Rantanen)氏は「これは極めて異常な『冬の温暖化現象』だ。観測史上最も異常とは言い切れないものの、それでも北極圏で起こりうる現象の上限値に達している」とメディアに指摘している。氷点下何十度というのが常識の冬の北極圏で、氷点と同レベル、ところによっては氷点を上回る気温が観測されたためだ。

C3S副所長のサマンサ・バージェス(Samantha Burgess)氏も「温暖化が進む世界がもたらす結果のひとつが海氷の融解。両極における海氷面積の記録的、あるいはそれに近い低さは、世界の海氷面積を過去最低の水準にまで押し下げた」「海氷が不足すると、海面が暗くなり、地球が太陽光を吸収する能力が高まるため、温暖化が加速する」と指摘している。
北極海の海氷面積は、平均値の8%減で2月としては過去最低、南極海の海氷面積が平均値の26%減で2月としては過去4番目の低さだった。北極海の海氷面積は、2月としては過去最低の8%の平均値を下回り、3か月連続で同月の記録を更新したことになる。
2月初旬に観測史上最小を記録した世界の海氷面積は、2023年2月に記録したこれまでの最小記録を下回ったまま、月末まで推移した。世界の海氷面積は両極地域の海氷面積の合計。ただ、例年、世界の海氷面積は2月末から3月初旬にかけて最大を記録することから、2月の海氷面積は過去最低だったが、2月の記録がそのままこの冬のシーズンの記録になるかは現時点では言えないとしている。
しかし、これまでのところ、北極海の海氷面積は1月末に急激に減少した後、1週間足らずで約30万km²(イタリアの面積に相当)減少。C3Sは、海氷が例年最大となる傾向にあるこの時期に、これほど急速に減少することは異例、と指摘している。この減少は、グリーンランド海とスヴァールバル諸島地域で顕著な温暖現象が始まった時期と一致しているとしている。
反射性の海氷が溶けることで、極地の温暖化はより急速に進んでいる。平均気温の上昇により、猛烈な暑さの夏と不安定なほど穏やかな冬が増加している。
北極域では、北極海中央部を除くすべての海域で海氷の密集度が平均値を下回った。一方、南極の海氷は、2月の月間面積が平均を26%下回り、過去4番目に少ない面積だった。 日々の面積は月末近くに年間最小値に達した可能性もあると指摘している。 この点を正確に確認されると、過去2番目に少ない最小値となる。

南極地域では、ウェッデル海東部を除き、ほとんどの海域で海氷の密集度が平均を下回った。両極域の海氷面積を合わせた世界の海氷面積は、2月初旬に過去最小を更新し、その後も2023年2月の記録を下回ったまま推移している。
一方、2月の世界の平均気温は、1991年から2020年の2月の平均気温を0.63℃上回った。世界で3番目に暖かい2月だった。産業革命前からの気温の上昇は1.59℃と、パリ協定が目指す「1.5℃」を、過去20か月間で19回目の突破月となった。
特に北半球の冬(2024年12月~2025年2月)の平均気温は、この3か月間の1991~2020年の平均気温を0.71℃上回り、観測史上2番目に高かった。2024年の北半球冬の記録よりは0.05℃低かった。
同月の平均海面水温(南緯60度~北緯60度)は20.88℃で、2月としては2番目に高く、過去最高の2024年2月の記録よりは0.18℃下回った。特に南氷洋と南大西洋では、多くの海洋盆地と海域で海面水温が異常に高い状態が続き、メキシコ湾や地中海など、一部の海域では1月よりも記録破りの高温域が拡大した。
(藤井良広)
https://climate.copernicus.eu/february-2025-record-low-global-sea-ice-cover