HOME |3月の世界の平均気温は14.06℃。過去2番目に気温の高い3月。産業革命前からの上昇は「1.60℃」で「1.5℃超」の連続月記録を更新。EUのコペルニクス気候変動サービスが公表(RIEF) |

3月の世界の平均気温は14.06℃。過去2番目に気温の高い3月。産業革命前からの上昇は「1.60℃」で「1.5℃超」の連続月記録を更新。EUのコペルニクス気候変動サービスが公表(RIEF)

2025-04-12 00:09:40

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上図は、3月の月間平均気温(陸上)の各年の推移データ:C3Sから引用)

 

  3月の世界全体での平均気温は14.06℃となり、観測史上では最高気温だった昨年3月に次ぐ2番目に高い気温だった。EUのコペルニクス気候変動サービス(C3S)が発表した。産業革命前(1850年から1900年)の平均推定値を1.60℃上回った。パリ協定の抑制目標の「1.5℃」を上回ったのは、過去21カ月間で20カ月目となった。また同月を含む過去1年間の平均気温も1.5℃を上回る1.59℃だった。「1.5℃超」が通常化している。

 

 3月の平均気温(地表部分)の14.06℃は1991年から2020年の間の3月の平均値よりも0.65℃上回った。3月としては過去最高気温だった昨年3月の記録には及ばなかったが、その差はわずか0.08℃低いだけだった。昨年(2024年)は年間でも過去最高の気温だったが、25年に入っても、1月が月としては過去最高気温を更新、2月は過去3番目と少し低くなったが、3月は過去2番目に戻しており、「暑い地球」の勢いは引き続いているといえる。

 

 地域別にみると、北極の一部地域では、平均気温が過去最高を記録した。また欧州も3月が過去最高の平均気温となった。欧州の陸地の平均気温は6.03℃で、1991年から2020年の同月の平均気温を2.41℃上回った。欧州のほとんどの地域で気温が平均を上回り、最も気温が高かったのは東欧と南西ロシア地域。英国でも1910年以来最も日照に恵まれた3月だった。一方で、こうした広範囲にわたる高温傾向の顕著な例外となったのは、イベリア半島地域とモロッコ北部で、いずれも平均気温を下回った。

 

 欧州以外では、カナダ諸島とバフィン湾を含む北極圏の一部で平均気温を大幅に上回った。米国とメキシコでも、平均気温を上回る気温がほとんどだった。北アフリカの広範囲でも平均気温を上回る水準となり、アジアの一部でも記録的な暑さだった。その中には、1959年以来最も早い30℃を記録した北京や、東京も記録上最も暖かい3月だった。オーストラリアも、1910年以来最も暖かい3月となり、ニューサウスウェールズ州と西オーストラリア州では、3月に熱波が観測された。

 

3月の世界各地での異常な気温上昇の状況=C3S
3月の世界各地での異常な気温上昇の状況=C3S

 

 反対に、気温が最も平均を下回ったのは、カナダ北部、ハドソン湾、およびカムチャッカ半島を含むロシア東部。また、アジア中央部、アフリカ北西部、モロッコなどアフリカ南部の一部、およびその他の孤立した地域でも平均を下回った。南極大陸では、平均気温を上回る地域と下回る地域が混在した。

 

 冬の嵐が起きたのは、スペイン、ポルトガルのイベリア半島。同地域では平均を大幅に上回る降雨に見舞われた。同地域一帯は4つの嵐が次々と通過。それに伴う豪雨の影響で、1979年から始まった観測記録の中で最も雨量の多い降雨帯が、スペインとポルトガルを横断する広大な南西から北東にかけての地域に頻繁に発生した。その結果、カナリア諸島やアゾレス諸島を含むスペインとポルトガルで洪水を引き起こし、甚大な被害と死傷者を出した。

 

 スペイン全土の降水量は149mmに達し、平年の250%だった。一部の地域では、平年の300%を超える降水量を記録。全体として、2013年(160mm)と2018年(164mm)に次いで過去3番目に雨の多い3月だった。マドリード以外の他の地域でも過去最高の月間降水量が記録された。ポルトガルの3月の降水量は177.5mmで、2000年以降で5番目に降水量の多い3月だった。

 

 欧州以外では、カナダ東部、米国西部、中東の一部(イラクでは豪雨により主要都市で洪水が発生)、ロシア全域、および中央アジアの一部で、降水量が多かった。南半球の温帯地域では、「サイクロン・ジュード」がアフリカ南東部を通過し、マラウイ、モザンビーク、マダガスカルで洪水が発生、人的被害が出た。オーストラリア北東部も平均より雨が多く、月末には「サイクロン・ダイアン」によって深刻な洪水被害が発生した。

 

 一方で、降水量が少なく、乾燥状態が続いた地域も多かった。北米の大半、南西部、中央部、最東部のアジア、南西部オーストラリア、アフリカ南部の一部、南米南東部で平均よりも乾燥した状態となった。日本や韓国では、これらの状況によって深刻な山火事を招く結果となった。

 

 世界平均の相対湿度は過去40年間で低下し、2000年代初頭以降は低いままとなっている。今年3月には、世界の相対湿度は1991年から2020年の平均値を大幅に下回り、観測史上4番目に低い3月だった。欧州大陸の平均相対湿度は、より大きな変動を示しているが、全体的には長期的な低下傾向となっている。

 

 陸上部分の平均気温の上昇や異常乾燥の継続により、北極海の海氷域面積は、4カ月連続で観測史上最低を更新し、平均値を6%下回った。すでに本サイトで報じているように、3月は通常、北極海の海氷が年間で最大となる時期だが、1979年からの観測データによると、今年の3月は年間最大面積が最も少なかった月となった。南極の海氷面積は、3月としては4番目に少ない面積を記録し、平均値を24%下回った。https://rief-jp.org/ct8/155493?ctid=70

 

 海洋の水温も北極圏外の海域で観測された南緯60度~北緯60度における平均海面水温(SST)は20.96ºCで、過去最高だった2024年3月を0.12ºC下回ったものの、過去2番目に高い値だった。海面水温は多くの海洋盆地や海域で異常に高い状態が続いた。地中海や北大西洋北東部など、一部の海域では、先月よりも記録破りの高温域が拡大した。

                         (藤井良広)

https://climate.copernicus.eu/second-warmest-march-globally-large-wet-and-dry-anomalies-europe

https://climate.copernicus.eu/precipitation-relative-humidity-and-soil-moisture-march-2025