環境省。2023年度の温室効果ガス(GHG)排出・吸収量公表。前年度比4.2%減。2年連続で減少。家庭での削減比率が最も高く、発電部門の削減率を上回る(RIEF)
2025-04-25 21:24:17

環境省は25日、2023年度の温室効果ガス(GHG)の排出・吸収量(CO2換算)が、前年度比4.2%減の10億1700万㌧で、基準年の2013年度比では27.1%(約3億7810万㌧)減だったと発表した。2021年度にコロナ感染症後の回復でいったん上昇した後、2年度連続で減少したことになる。23年度の排出量は過去最低値を記録した。政府は2030年度の排出削減目標を46%減(基準年比)としており、残り7年で約20%㌽の削減が必要になる。23年度の削減に最も貢献したのが、家庭部門で同6.8%減、最大の排出源であるエネルギー転換部門(発電所等)は5.4%減にとどまった。
排出源別の8部門すべてで前年度比で減少したが、自動車等の運輸部門の排出量が1億8300万㌧で前年度比0.6%の削減でしかなく、他の部門に比べて減少幅が小さかった。トラックや船舶などの運送業はCO2の削減に取り組んでいるが、中小企業も多く、運輸部門の削減促進は依然、大きな課題といえそうだ。
23年度の排出量を、京都議定書の基準値である1990年の排出量に比べると、15.8%の減少にとどまる。排出源別でみると、発電所や製油所などのエネルギー転換部門の排出量が3億9700万㌧で前年度比5.4%減、40.1%のシェアだった。同部門の排出減少は、石炭製品製造における排出量が減少したこと等が主な要因。
産業部門(工場)の排出量は2億4500万㌧、排出量シェアは24.7%で、削減率は3.5%減。電力のCO2排出原単位(電力消費量当たりのCO2排出量)が改善したことと、製造業の国内生産活動が減少したこと等が削減に貢献したとしている。

これに対して、家庭部門での排出量は4.7%のシェアだが、23年度の削減率は6.6%減と、部門別では最も高かった。同部門は冬季が22年度かより暖かかったこと等から、家庭でのエネルギー消費量が減少したことと、電力のCO2排出原単位が改善したこと等が削減率向上に貢献したとしている。実際には国民一人一人の削減・節約努力が実ったものと考えられるが、環境省はそうした国民活動による削減評価をしないようだ。
次いで、業務その他部門(商業・サービス・事業所等)が排出量5030万㌧(シェア5.1%)、削減率6.3%減となった。同部門も、エネルギー消費原単位が改善してエネルギー消費量が減少し、電力のCO2排出原単位が改善したこと等が貢献したとしている。
CO2よりも温暖化係数の高いメタン(CH4)の2023年度の排出量は2940万㌧(CO2換算)で前年度比1.3%減、2013年度比320万㌧(9.9%)減だった。減少要因は排出量の8割を占める農業分野(家畜等)での排出量削減が中心となった。
排出源別の排出量(生産ベース)を見ると、再エネと原子力発電の割合(いわゆるクリーンエネルギー)が合計で3割を超え、電源の脱炭素化が進んだ。電源構成に占める再エネの割合は前年度比1.0㌽増の22.9%。原発は同2.9㌽増の8.5%だった。CO2排出量の多い火力発電の割合は同4.0%減と縮小したが、同構成全体の過半以上の68.6%を占めるなど依然、排出量の中心となっている。
森林等の吸収源対策による吸収量は全体が5370万㌧(CO2換算)。吸収源の8割は森林吸収源対策から生じている。新規植林・再植林活動、森林減少活動、森林経営活動等で、合わせて4520万㌧を吸収したことになる。このほか農地土壌度吸収源対策や都市の緑化、ブルーカーボン等も吸収源となる。環境省は今後、ブルーカーボンの活用に力を入れる方針としているが、欧州などが力を入れる都市の緑化による23年度の吸収量は103万㌧で、毎年ジリ貧状態にある。
(加藤裕則)
https://www.env.go.jp/press/press_04797.html