「顕在化」する気候災害。6月末~7月初めの欧州での熱波死者は、気候変動の影響で3倍増。英インペリアルカレッジ推計。仏CNRSは米テキサス州の洪水も気候変動で増幅と分析(RIEF)
2025-07-11 00:29:47
(上図は、 熱波にされされた6月末から7月初めの欧州=インペリアルカレッジの研究論文から)
6月23日から7月初めにかけて、欧州を襲った熱波の影響を分析したところ、気候変動の影響が熱波関連の死者数をほぼ3倍に増大させているとの研究論文が発表された。また化石燃料の使用が都市部の熱波気温を最大で4℃上昇させたとも指摘している。欧州での熱波被害の一方で、米国では今月4日に起きたテキサス州での集中豪雨と河川水による洪水の影響で死者・行方不明者合わせると300人を超す事態となっており、フランスの研究機関が気候変動による自然災害の増幅を指摘した。だが、トランプ政権による科学的な分析はまだ出ていない。
欧州の熱波の影響を分析したのは、英インぺリアカレッジ・グランサムインスティテュート。「Climate change tripled heat-related deaths in early summer European heatwave」と題する研究論文を公表した。分析の対象は、12の欧州の都市で、6月23日から7月2日までの10日間の熱波の影響で死亡した人を査読済みの手法で死亡者数を推計した。その結果、気候変動が熱波関連死亡者数をほぼ3倍に増加させたことが分かったとしている。
推定された熱波による死亡者数2,300人のうち約1,500人(65%)は、気候変動による気温上昇(1~4°C)が原因での死亡と推計され、化石燃料の燃焼により死亡者数が3倍に増加したことになる。調査対象とした都市は、ロンドン、パリ、フランクフルト、ザグレブ、ブダペスト、アテネ、ローマ、ミラノ、サッサーリ、バルセロナ、マドリード、リスボンの各主要都市。
このうち、ミラノでは推定過剰熱死者は、対象都市中で最も多い317人、次いでバルセロナの286人、パリ235人、ロンドン171人等と推計された。21都市の過剰熱死者数を合計した1504人が、気候変動が原因による熱波の増大によって死亡したとの推計結果となった。
欧州の多くの地域では、通常、夏本番の7月下旬から8月に見られる高温が、今年は1カ月前後も前倒しの形の異例な早さで、各都市に到来した。こうした季節の早い段階での極端な熱波は、人々がまだ夏の気温に順応していないため、より致命的な影響を及ぼす傾向がある。
調査結果では、6月の熱波の強度が7月よりも急激に増加しており、極端な熱波が早期発生した可能性が示された。12都市のうち、アテネとブダペストでは6月末、他の欧州都市では7月初旬に熱波がピークを迎えた。こうした欧州の熱波は、もはや稀な現象ではなく、今後も2~5年に1度の頻度で発生すると予想されている。
これまでも欧州の主要都市では、気候変動が原因で豪雨が増幅されたり、洪水が増大したことによる推定死亡者数が相当数示されてきた。たとえば、2024年のバレンシア洪水(224人)や2021年の北西欧洪水(243人)などの推計だ。しかし、これらに比べても、今回の熱波による死亡者の増加は、大きく上回る気候災害になったことになる。
死亡者のうち、88%は65歳以上の高齢者で、基礎疾患を有する人が熱波の影響を受けて、早期死亡する最も高いリスクが発現する格好となった。 また人為的な気候変動がなければ、観測された温度の早期熱波は、はるかに稀だったとみられ、ポルトガルのリスボンを除くすべての都市で、観測された頻度の熱波は2~4°C低かったとみられる。
対象となった12の都市の合計人口は3000万人超。熱波で受ける影響は今年に限ったことではない。各都市の2022年から2025年までの期間に、気候変動による高温で過剰死亡は2305件(95%経験的信頼区間: 2022~2576)が発生したと推定され、そのうち65%(同:61%~68%)は人間による気候変動に起因すると推定された。報告書はこの推計から、人間による気候変動により、予想される過剰死亡数が約3倍に増えていると判断している。

一方の米国テキサス州で発生した豪雨と洪水災害では、死者数と行方不明者数が300人を超えている。米国の研究機関等による気候変動との関連についての明確な分析はまだ出ていないが、フランス国立科学研究センター(CNRS) などのグループは、人為的な気候変動が降雨量に影響して被害を広げた要因になったとする分析結果を公表した。
同センターなどが参加する国際的な研究プロジェクト「クリマメーター(ClimaMeter)」の分析によると、人為的に排出された温室効果ガス(GHG)の増大による影響を調べるために、テキサス州で気候変動の影響が比較的少ない1950〜86年と、その後から直近までの87〜2023年テキサス州の気象条件を分析した。その結果、温暖化の進行によって1日で最大2mm(7%)の降水量が増えていたことがわかった。気温も1.5℃上昇していた。
気温の上昇は大気が保持できる水蒸気量を増やすことから、その分、降水量も増やす要因の一つになる。同グループは、こうした観測データを踏まえて、「今回の大雨は気候の自然的な現象だけでは説明できない」と指摘し、「人為的な気候変動が集中豪雨につながり、洪水を引き起こした主な要因のひとつだった」とする暫定的な分析結果を公表している。さらに、「今後も、気候変動の影響で豪雨による自然災害が起きる可能性がある」と警告している。
トランプ政権は、今回の洪水の犠牲になった米国民のためにも、原因究明と気候対策の早期実施に正面から向き合うべきだろう。
(藤井良広)

































Research Institute for Environmental Finance