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国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)閉幕。化石燃料段階的廃止の行程表は合意できず。議長国ブラジルが自ら設定へ。途上国への適応事業の資金支援を今後10年で3倍増(RIEF)

2025-11-24 01:09:40

1日延長した閉幕式で「みんな、仲良し」に=COP30のブラジルサイトから引用

 

   ブラジル・ベレンで開いていた国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)は22日、会期を一日延長して終了した。合意文書では、気候変動の激化による気候災害の増大を受けた気候適応対策として、途上国への資金支援を今後10年間で3倍に増やす方針を盛り込んだほか、公正な移行、貿易、ジェンダー、技術などの分野で合わせて29の決定事項を承認した。ただ、最大の焦点だった化石燃料の段階的廃止に向けたロードマップ(行程表)作成では合意できなかった。80カ国以上が賛成したが、日本政府は化石燃料による火力発電を前提に、水素・アンモニア混焼やCCS等の活用でCO2削減を進めると主張して化石燃料廃止を「否定」した。こうした日本を含む先進国や中東産油国等が強硬に反対し、合意文書への盛り込みを阻止した。

 

 議長国ブラジルのアンドレ・コヘア・ド・ラーゴ(André Corrêa do Lago)議長は閉幕の全体会議で、合意文書に盛り込めなかった、化石燃料からの脱却の行程表について、議長国のブラジルが自ら「ベレン・ロードマップ」を策定すると表明した。気候対応に加えて、温室効果ガス(GHG)を吸収する森林の保護・回復に向けた工程表も作成するとしている。

 

 ラーゴ氏は閉幕の辞で「ベレンを後にする今、この瞬間は会議の終わりとしてではなく、ゲームを変える10年の始まりとして記憶されねばならない。ここで築いた精神は、あらゆる政府会議、あらゆる取締役会や労働組合、あらゆる教室、研究所、森林コミュニティ、大都市、沿岸の町で継続する」と述べた。

 

最終日の会合で「閉幕」を告げる木槌を叩く議長のルーラ氏(ブラジルのサイトから)
最終日の会合で「閉幕」を告げる木槌を叩く議長のラーゴ氏(ブラジルのサイトから)

 

 最大の焦点となったGHGの排出削減や化石燃料からの移行に関する行程表の作成に対しては、英独仏の欧州各国のほか、南米各国などが賛同を示した。これに対して、化石燃料開発・商品化を展開する中東産油国が強硬に反対したほか、米欧のエネルギー大手企業等が強力なロビー活動を展開する「対立事項」となった。コロンビアの交渉担当者は、化石燃料がGHG排出の最大の要因だと指摘、「科学を無視した合意には同意できない」「気候変動否定論のもとで押し付けられた合意は、失敗した合意だ」と非難した。

 

 同国のほか、南米のパナマ、ウルグアイなどはEUとともに、最後の段階まで、化石燃料からの移行に関する文言を協定に盛り込むよう求めた。これに対し、サウジアラビアなどの中東産油国を含む国々は、化石燃料へのいかなる言及も見送るべきだと主張した。パリ協定からの脱退を申請中の米国は代表団ゼロだったが、行程表反対派の背後で、「無言の圧力」をかけ続ける形となった。反対派には、姿の見えない米国とともに、ウクライナ問題で「孤立」するロシアも加わっていた。

 

 化石燃料の使用からの脱却目標(脱化石燃料)に向けた行程表の作成については、2023年のアラブ首長国連合(UAE)・ドバイでのCOP28の開催で、すでに承認されている。しかし、昨年のアゼルバイジャンでのCOP29では具体化の進展が見られず、今回のCOP30で議論の深化が期待されていた。

 

 議長国のブラジルも、何とか行程表の盛り込みを実現しようと、調整を進めた。今週初めに公表された合意案の最初のバージョンでは、行程表の扱いに関して複数の文言の選択肢が示されていた。「合意できる行程表」を参加国が選べるように、との配慮だった。だが、同問題をめぐるEUと産油国等との交渉が当初の最終日だった21日を過ぎても合意につながらず、打開の糸口を見いだせなかった。

 

 会期を一日延長して、さらなる調整を続けたが、延長最終日に入ってもメドがつかないことから、ブラジルは「対立」を解消できないと選択肢を絞り込めないとして、それ以上の調整を断念した。ブラジルは、化石燃料問題と森林保護に関する合意形成が出来なかったとして、両課題を主要合意から除外する判断を示し、先述のように、議長国自らの提案による行程表を示す考えに切り替えた。

 

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 日本からは唯一の閣僚として石原宏高環境相が出席した。同氏は化石燃料からの脱却の行程表策定を支持しなかった。現在の日本政府のGX政策では、石炭や天然ガス火力発電について、水素・アンモニアの混焼・専焼を目指すとともに、化石燃料開発等から出るCO2等については、CCSで回収・貯留するという「技術主導」の政策を展開しているため等と、日本の記者たちに説明したとしている。

 

 水素・アンモニア混焼や、CCSについては、確かに技術的な可能性は示されてはいる。しかし、例えば、CCSは同設備の建設適地が国内では極めて限られているほか、日本で回収したCO2をアジアの貯留適地に輸送して処分する日本政府の計画に対しては、コスト面の課題に加え、「汚染物質(CO2)の輸出」に対する候補国での反発の声も出ており、実現可能性は定かではない。

 

 水素・アンモニア混焼も同様に、コスト面の課題が大きい。特に日本政府が推進する天然ガスから水素を製造する「ブルー水素」活用の水素・アンモニア製造は、CO2排出量を軽減できるものの、製造プロセスの追加により、コスト高がさらに高まる見通しだ。製造行程上、コスト高の構造は避けられず、通常の経営判断では国の補助金が永遠に続かない限り、民間の事業としては対応できないとされる。

 

 そうした課題解決ができていないアンモニア・CCS活用について、ベレンの現地から日本のメディアによって伝えられた石原環境相の発言は、経産相の発言と聞き間違うような内容ばかりで、地球が直面している環境問題を所管する大臣としての理解と言及が、皆無だったように見受けられた。

 

 合意文書では、「適応資金」を2035年までに少なくとも現状より3倍に増やすことを盛り込むことには成功した。気候災害の累積的な増大という眼前の事実に対しては、目を背けることはできないとの認識では共通したといえる。ただ、その資金をどの国がどう分担していくかについての合意にまでは至らなかった。パリ協定から脱退を決めている米国を除いて、EU各国と日本、中国、産油国等が資金の拠出側になるとみられ、次回のトルコでのCOP31においては、その分担額の配分が焦点になる。

 

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 会議ではさらに、適応に関するグローバル目標の下での進捗状況を追跡するための包括的な59の自主的・非強制的指標の最終調整が行われた。これらの指標は水、食料、健康、生態系、インフラ、生計など全セクターを網羅し、資金、技術、能力構築といった横断的課題を統合している。

 

 これらに加えて、COPの締約各国は、気候変動対策において人と公平性を中核に据える「公正な移行メカニズム」を承認した。このイニシアチブは、国際協力、技術支援、能力構築、知識共有を強化し、公平で包摂的な公正な移行を実現することを目的としている。また各国は国家ジェンダー・気候変動連絡窓口への支援を強化する「ジェンダー行動計画」も採択した。同イニシアチブはジェンダーに配慮した予算編成・資金調達を推進し、先住民族・アフリカ系・農村部の女性リーダーシップの促進などを含んでいる。

 

 採択文書の一つである「ムティラン決定(Mutirão Decision)」は、パリ協定とそのサイクルが完全に稼働した今、交渉から「実施」へ移行するため、時間の経過とともに集団的野心を高める決意を再確認する、と宣言。「COPをこれまでの交渉の場」としてだけでなく、「実施のCOP」とするために、次のような実施計画を示した。

 

 例えば、「COP30行動アジェンダ」を通じ、グローバル・ストックテイクを多分野にわたる気候行動の羅針盤と位置付け、都市・地域・企業・投資家・市民社会・国家を結集させるとした。これらの行動アジェンダでは、エネルギーシステム・森林・海洋・人々の日常生活に焦点を当てたイニシアティブを含む、実質的な変化を促進する約120の「解決策加速計画」が発表された。

 

 その一つとしては、国家適応計画(NAP)への投資を可能にする「投資可能な国家実施促進(FINI)」イニシアティブの発足がある。同イニシアティブは、各国・開発銀行・保険会社・民間投資家を連携させ、3年以内に適応プロジェクトパイプライン1兆㌦を創出(うち20%を民間部門から調達)することを目指す。さらに、これまでのような計画の策定にとどまらず、迅速かつ大規模なレジリエンスの実現を実施する構造的な転換を示すとしている。

 

 そうした「実施」取り組みの事例としては、米州開発銀行(IDB)と国連グリーン気候基金(GCF)が、それぞれ適応推進のための既存メカニズムを複数展開しているほか、民間のゲイツ財団は小規模農家支援に14億㌦を拠出することを約束した。

 

 また30カ国以上と50団体が支持した「ベレン保健行動計画」では、気候変動に強い保健システムの構築を気候対策の最優先課題として位置付けた。気候・保健資金提供者連合(Climate and Health Funders Coalition)による3億㌦の支援を受け、特にグローバル・サウスにおいて、気候変動に強い保健システム、病院、監視体制、疾病予防を強化する。

 

 劣化した農地を回復し、食糧生産と農地によるCO2吸収等を進めるために民間資本を動員する新たな取り組み「RAIZアクセラレーター」には10カ国が支援を発表した。同取組は、ブラジルが推進する「グリーンウェイ」及び「エコインベスト」プログラム(約60億㌦を動員し最大300万ヘクタールの森林再生の実現を目指す)を基盤として、各国が優先景観をマッピングし、再生規模拡大と森林保護のための複合金融ソリューションを設計する支援を行うとしている。日本でも耕作放棄地の拡大や、クマ問題で問われる里山の開発・劣化問題がこうしたイニシアティブに適合しそうだ。

                           (藤井良広)

 

https://cop30.br/en/news-about-cop30/cop30-approves-belem-package1