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国連の気候サミット特別大使に、マイケル・ブルームバーグ氏。グテレス国連事務総長が指名。トランプ氏と「対決(?)」(RIEF)

2018-03-22 07:18:59

bloombergキャプチャ

 

  国連の気候変動特別大使に、情報会社ブルームバーグの創設者でCEOの マイケル・ブルームバーグ氏が選出された。アントニオ・グテレス事務総長が指名したもので、ブルームバーグ氏は、2019年に国連本部で開く予定の気候サミットに向けて、事務総長をサポートする。パリ協定からの離脱を宣言したトランプ米大統領に代わって、ブルームバーグ氏が米国の温暖化対策の「顔」になりそうだ。

 

 (写真は、特別大使拝命に際して、グテレス氏と談笑するブルームバーグ氏(左))

 

ブルームバーグ氏は、情報会社Bloombergの創設者として知られる。2002年から13年にかけては、第108代ニューヨーク市長を務めた。同市長時代から環境、気候変動問題を重視、2010~13年には、気候変動を重視する世界の都市で構成する「C40 Climate Leadership Group」の議長を務めている。

 

 その手腕を買われ、2014年に当時の潘基文国連事務総長から「都市と気候変動(Cities and Climate Change)」の特別大使に任命されている。したがって、気候変動関連の国連特別大使になるのは今回が2度目。ただ、前回は気候変動対策を重視するオバマ前大統領と歩調を合わせた役割だったが、今回はパリ協定からの離脱を宣言したトランプ大統領の下であるだけに、内外の関心がブルームバーグ氏に集中する形でもある。

 

 ブルームバーグ氏は、カリフォルニア州のジェリー・ブラウン知事とともに、「トランプ政権下でも米国はパリ協定に沿った温暖化対策に貢献する」ことを市場・ビジネス・都市・市民レベルで宣言する「 America’s Pledge initiative」も立ち上げている。

 

 ブルームバーグ氏は、トランプ大統領が勝利した2016年の大統領選挙に、一時、民主党候補で出馬する観測も流れた。民主党がヒラリー・クリントン氏に候補者を一本化したため、出馬を断念したと伝えられている。今回、国連気候サミットの推進役を担うことで、トランプ氏がサミットに出席すると、二人の対決がみられそうだし、仮にトランプ氏がサミットをボイコットすると、ブルームバーグ氏が「米国の顔」として脚光を浴びることになる。

 

 環境関係者、特に環境金融関係者が同氏に抱く期待の一つは、同氏が、2015年に英イングランド銀行総裁で金融安定理事会(FSB)議長のマーク・カーニー氏の依頼を受けてFSBの下で気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の座長だった点だ。TCFDは、気候関連のリスク・オポチュニティを企業の財務報告書に開示することを求める勧告を世に問うた。

 

 目下、世界の主要企業や主要金融機関等は、TCFD勧告に沿った情報開示への取り組みへの対応を求められている。一方、国連気候サミットは、2020年の気候変動対策目標に向けて、より強力で野心的な活動を打ち出すことを期待されており、ブルームバーグ氏主導のTCFD勧告に沿った企業、金融機関が名乗りを上げる格好の場でもある。

 

 グテレス事務総長は、国連本部での気候サミットに、世界の政府、ビジネス、金融、市民団体等のリーダーを招集する。トランプ大統領がそっぽを向く米国ニューヨークの地で、2020年までの温暖化目標の促進と、その次の30年を展望するパリ協定の国際合意の実現に向けた国際的結束の堅さをアピールすることを目指す。「トランプ抜き」でも、世界の温暖化対策は進む、ことを確認するサミットになることが期待される。

https://www.mikebloomberg.com/news/mike-bloomberg-un/