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デンマーク議会、2030年の温室効果ガス排出量削減目標を70%減(90年比)、50年にゼロとする新気候法可決。国際的なサステナブルファイナンスへの貢献も盛り込む(RIEF)

2019-12-08 20:10:02

Denmark1キャプチャ

 

 デンマーク議会は6日、国全体のCO2排出量を2030年に70%削減(90年比)、2050年はゼロ(カーボンニュートラル)を目標とする新たな気候法を可決した。同法は国際的な「気候エンゲージメント条項」を盛り込み、国際協定(パリ協定など)に基づき、途上国の温暖化対策促進の気候ファイナンス等の実施をうたっている。

 

 (写真は、デンマーク議会の内部)

 

 新気候法は、6月に政権を掌握した 社会民主党のメッテ・フレデリクセン(Mette Frederiksen)首相が率いる連立内閣が、最優先課題として打ち出していた。議会では179議員中、圧倒的多数の167が賛成して可決した。

 

 新法は、5年ごとに義務的な10年計画の削減目標を設定する。毎年の削減実績を踏まえて、最終的にネットゼロ(カーボン・ニュートラル)の実現を目指す。最初の10年計画は2020年に設定される。

 

フレデリクセン首相
フレデリクセン首相

 

 加えて、政府は毎年、同国の気候行動の国際的な影響に関するレポートを公表する。これは同国の輸入、消費を通じた国際的貢献を含む。また、国内の排出削減対策だけでなく、国際的な削減に貢献するため、外交、開発、貿易政策等にも気候行動を促すための戦略を盛り込む。

 

 気候・エネルギー相のダン・ヨルゲンソン(Dan Jørgensen)氏は、「法案成立への多数決を得るのは容易ではなかった。重要なことは、同法は将来、温暖化対策を重視しない内閣が出現しても、簡単には修正できない点だ」と指摘している。5年ごとに10年計画で削減目標を実現していく手法を指している。

 

 温室効果ガスの2030年目標は、EUが40%削減(90年比)を設定、現在、同目標を50~55%に引き上げる方針だ。デンマークの70%削減は、EUが目指す改定目標をも大きく上回る。

 

 日本は26%削減(13年比)で、デンマークと同様の90年比では18%削減(KIKOネット調べ)でしかない。欧州各国が30年目標を相次いで引き上げる中、日本の「低水準」ぶりは国際的にも改めて、浮き彫りになっている。

 

 新気候法成立を支援してきたNGOのDanChurchAidの マティアス・ソーダベルグ(Mattias Söderberg)氏は、「新法は、デンマークが将来にわたって『グリーン・トランジション』に向かう明確な方向性を示すものだ。さらに、他の国々に対しても、『手遅れになる前』に、気候変動を止める努力を加速することを宣言した」と称賛している。

 

 新法で政府が毎年、温暖化対策の進捗状況をまとめて開示する気候プログラムの内容については、独立機関の「気候評議会(Climate Council)」が客観的に評価し、次なる行動の勧告をする仕組みを導入している。特定の政権に忖度しない仕組みだ。

 

 マドリードで開いている国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)の冒頭、グテレス国連事務総長は各国に向けて「国別削減貢献(NDCs)の実質的な目標引き上げ」を求めた。デンマークの新気候法はこうした国際的な要請に答えるものといえる。

https://ens.dk/en/our-responsibilities/energy-climate-politics/danish-climate-policies